アフガニスタン:襲撃を受けたダシュ・バルチ産科病棟での活動を終了
PR TIMES / 2020年6月17日 13時40分
国境なき医師団(MSF)は、アフガニスタンの首都カブールで5月12日に何者かによって襲撃され、助産師1人と16人の母親が殺害されたダシュ・バルチ産科病棟での活動を終了し退去すると発表した。襲撃では7歳と8歳の子ども、そして現場に居合わせた6人も命を奪われた。犯人や襲撃の動機は現在も不明だが、母親や新生児、医療スタッフが意図して狙われ、同様の攻撃が今後も起きる可能性があるため、今回の決定に至った。
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奪われる医療アクセス 100万人に影響
ダシュ・バルチ産科病棟でのMSFの活動終了は、この地域で暮らす100万人余りに影響を及ぼす。そのほとんどは、歴史的に社会から取り残された貧困層であるハザラ人で、数十年にも及ぶ紛争で避難してきた人も多い。ダシュ・バルチ産科病棟は2019年には約1万6000件の分娩を介助。MSFにとって世界最大級の産科プロジェクトであり、活動中止は苦渋の決断だった。妊産婦と新生児死亡率の高いアフガニスタンで、武力によってMSFを活動中止に追い込んだ襲撃者は、地域の女性と新生児から必要な医療を奪ったに等しい。
産婦と子どもへの非道な攻撃
「ダシュ・バルチでの活動は危険を伴うことは分かっていましたが、弱い立場である出産間近の女性や赤ちゃんを攻撃する人がいるとは信じられません」とMSFのティエリ・アラフォール・ドゥヴェルジェ事務局長は話す。「しかし実際に事件は起き、私たちは現実を受け入れなければなりません。いくら病院の壁を高く、警備の扉を厚くしようとも、襲撃が繰り返されれば防ぐことはできず、またもや命が犠牲となるでしょう。再考の余地はありません」
この恐るべき事件から1カ月後の現在も、首謀者について分かっていることは少ない。アフガニスタン当局は、「アフガニスタン・イスラム首長国」と自らを称するタリバンを告発したが、タリバンは反論し、告発そのものを非難した。一方、複数の外国政府代表が、「イスラム国」の過激派グループ、ホラサン派の可能性を指摘している。事件の首謀者は不明だが、産科施設が非道な暴力の的にされ、患者、医療従事者、人道的活動が犠牲になったことは明らかだ。この地域に住むハザラ人と援助団体はこれまでにも一連の攻撃を受けており、この攻撃を独立した事件として放置することはできない。
今後も現地への支援方法を模索
MSFは6月15日、現地で働くスタッフ、アフガニスタンの国家保健・医療当局や協力関係にあるパートナーに活動終了の決定を通告した。安全を担保するためダシュ・バルチから退去するが、MSFは今後も継続して現地スタッフに、心のケアなど必要な支援を提供する。また亡くなった患者の家族への支援、地域の医療アクセス向上に向けた地元の取り組みをサポートする方法を模索している。
過去16年間にアフガニスタンでは、MSFスタッフやMSFの医療活動で治療していた患者など、合計70人余りが殺害されている。特に悲劇的な例としては、2004年にバドギース州で5人のスタッフが殺害された事件や、2015年10月に米空軍がクンドゥーズ州にあるMSFの病院を空爆し、42人の患者やスタッフが死亡した事件などがある。
MSFは2014年より現地保健当局の協力の元、カブールでも特に人口の多いダシュ・バルチで無償の産科・新生児ケアを提供していた。病院は24時間無休で稼働しており、地域の医療ネットワークと連携してハイリスク出産に対応していた。MSFは1980年よりアフガニスタンで活動しており、今後もカブールやホースト州などで多岐に渡る援助活動を続けていく。
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