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スーパーコンピュータ「富岳」で太陽の自転の謎、解ける

PR TIMES / 2021年9月14日 11時45分

世界最高解像度計算で太陽の自転分布を世界で初めて再現

 千葉大学大学院理学研究院の堀田英之准教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所長の草野完也教授は、スーパーコンピュータ「富岳」(注1)による超高解像度計算によって、太陽内部の熱対流・磁場を精密に再現しました。それにより、太陽では赤道が北極・南極(極地方)よりも速く自転するという基本自転構造を、世界で初めて人工的な仮説を用いずに再現することに成功しました。
 本成果では、「富岳」の計算力を用いることで太陽と同じ状況をコンピューター上に再現することが達成できたと考えられます。今後、更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、太陽物理学最大の謎「太陽活動11年周期(注2)」の解明に近づくことが期待できます。
 本研究成果は、英科学誌『Nature Astronomy』(13 September 2021)で発表されました。




研究の背景:熱対流の難問


[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/517/resize/d15177-517-52aa12fbc09a8ec616c4-1.png ]

 地球は、どの緯度でも同じ周期(1日)で自転していますが、太陽は緯度ごとに違う周期で回る差動回転(注3)をしていることが知られています。この事実は1630年ごろから知られており、赤道付近は25日程度、極地方は30日程度で自転、つまり赤道が極地方よりも速く自転していることがわかっています。この差動回転は太陽黒点の形成と周期活動にとって重要な役割を果たしていると考えられています。
 太陽内部は乱流的(注4)な熱対流(注5)で占められており、太陽中心部での核融合反応によって生成されたエネルギーは、太陽半径の70%ほどまでは光によって、太陽内部の外側30%では熱対流によって運ばれます(対流層)。この乱流運動が差動回転を形成・維持していると考えられています。
 しかし、これまでの数値シミュレーション(注6)ではスーパーコンピュータ「京」で計算可能な解像度(約1億点)であっても、太陽とは逆に極地方が速く自転し、⾚道が遅くなる結果になってしまい、実際の差動回転を再現できませんでした。その原因は太陽内部における乱流的な熱対流を正確に計算できないためと考えられており、この問題は「熱対流の難問(convective conundrum)」と呼ばれる太陽物理学の長年の謎でした。


研究の成果

 本研究では、スーパーコンピュータ「富岳」を用いることで初めて可能になった超高解像度計算で、熱対流の難問の解決に迫りました。太陽のように高度に発達した乱流状況を調査するには、非常に多くの計算コストを必要とします。「富岳」を用いて、これまでの世界最高解像度である54億点で太陽対流層全体を解像した計算を行ったところ、太陽と同じく赤道が速く回転する差動回転を再現することができました。
 これまでの計算では、太陽内部の磁場のエネルギーは、乱流のエネルギーに対して小さく、磁場は脇役と考えられてきましたが、今回達成できた計算では磁場のエネルギーは乱流エネルギーの最大2倍以上になっており、これまでの太陽の常識が大きく変わりました。また、本研究により差動回転形成・維持において磁場が大きな役割を持つことを発見しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/517/resize/d15177-517-61c59ad45259215662de-2.png ]




今後の展望

 太陽の差動回転は、太陽の磁場の起源において重要な役割を担っており、差動回転の理解は、太陽物理学最大の謎「太陽活動11年周期」の解明のための重要なステップとなります。
 高解像度計算が太陽の状況をよく再現できることを発見できましたが、まだ「富岳」の全ての力を使ったわけではありません。更なる高解像度計算を引き続き実行していくことで、11年周期の謎解明に挑戦していきたいと考えています。

研究者の想い(堀田英之 准教授)

 この問題の解決は、もう少し時間がかかると予想していたので、「富岳」での初めての計算で再現を達成できたことは、喜ばしいとともに非常に大きな驚きでした。
 太陽の差動回転は、太陽物理学最大の謎「太陽活動11年周期」と密接に関連しています。引き続き研究を進めていきたいと思います。

用語解説

(注1) スーパーコンピュータ「富岳」:スーパーコンピュータ「京」の後継機として理化学研究所に設置された計算機。令和 2 年 6 月から令和 3 年 6 月にかけてスパコンランキング 4 部門で 1 位を 3 期連続で獲得するなど、世界トップの性能を持つ。令和 3 年 3 月 9 日に本格運用開始。
(注2)太陽活動11年周期:太陽黒点数が約11年の周期で変動する現象を指します。現在、その維持機構は明らかになっておらず、太陽物理学最大の謎となっています。
(注3)差動回転:天体が緯度ごとに違う自転速度で回転する様子を表します。地球のように全ての緯度で同じ角速度で自転する場合は剛体回転と呼ばれます。
(注4)乱流:大小様々な大きさの渦を含む乱れた流れのことを表します。整った流れを表す層流の対義語となります。
(注5)熱対流:暖かい場所が上に向かい、冷たい場所が下に向かう物理現象を指します。お風呂を沸かした際に起こる現象です。太陽では、核融合によって生成されたエネルギーにより下から温められるので熱対流が恒常的に発生しています。
(注6)数値シミュレーション:太陽内部をよく表していると考えられている物理学の方程式を数値的に解くことを表します。太陽の状況をよく再現するためには膨大な量の計算が必要となり、高性能なスーパーコンピュータが必要になります。


研究チーム

・千葉大学 大学院理学研究院 堀田英之 准教授
・名古屋大学 宇宙地球環境研究所長 草野完也 教授

研究プロジェクトについて

 本研究は、文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統一的描像の構築(20351188[PI:牧野淳一郎])」および計算基礎科学連携拠点(JICFuS)の一環として実施されたものです。また、本研究は、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」/名古屋大学のスーパーコンピュータ「不老」/国立天文台天文シミュレーションプロジェクトのスーパーコンピュータ「アテルイII」の計算資源の提供を受け、実施しました。加えて、日本学術振興会の科学研究費の支援を受けました(20K14510[PI:堀田英之], 21H04492[PI:草野完也], 21H01124[PI:横山央明], 21H04497[PI:宮原ひろ子])


論文情報

掲載誌:Nature Astronomy
論文タイトル:Solar differential rotation reproduced with high-resolution simulation
著者:H. Hotta, K. Kusano
DOI: https://doi.org/10.1038/s41550-021-01459-0

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