新たな変異株でWTO閣僚会議が延期 いまこそコロナ知財保護の免除で世界の連帯を
PR TIMES / 2021年11月30日 8時45分
新型コロナウイルスの新しい変異株「オミクロン株」が現れ、入国規制が敷かれたことを受け、世界貿易機関(WTO)はスイス・ジュネーブの本部で今週予定していた閣僚会議の開催を無期限で延期した。一方、WTOのTRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する)理事会は予定通り本日招集され、新型コロナ関連医療ツールの知的財産権保護を免除する、という画期的な提案を再び話し合う。
欧州のように医療のアクセスがありワクチン接種率も高い地域でも、新型コロナの感染拡大が収まる兆しはいまだ見られない。こうした状況では、全世界の全ての人に必要な検査・治療・ワクチンを行き渡らせることが優先されるべきなのは明らかだ。国境なき医師団(MSF)は、欧州連合(EU)、英国、スイスなどの先進国が、このTRIPS免除案に反対姿勢を変えないことを改めて非難し、世界的な連帯を真に実行に移し、いますぐ同免除案を支持することを求める。
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「免除案はこれまで以上に必要」
「感染力が高い恐れのある変異株が出現したことは、適切な新型コロナ医療ツールが平等に普及していない状況では、このウイルスが変異し続けることの現れです。これ以上、時間を無駄にする余裕はありません。TRIPS免除案に反対する国々は、今すぐ引き延ばし戦術をやめ、関連医療ツールの生産供給の多元化と拡大を促すため、免除案を採択することを求めます。免除案はこれまで以上に必要とされているのです」と、MSF南アフリカのアクセス・キャンペーン担当者キャンディス・セホマは訴える。
インドと南アフリカ共和国が、新型コロナ関連医療ツールの普及拡大のために、WTOにこの免除案を提出してから14カ月。この間に新型コロナで亡くなった人の数は400万人以上、パンデミック(世界的大流行)の発生以降では500万人を超える。この免除案への支持は100カ国以上にのぼり、全世界の半数以上の政府が免除案の採択と実施が有効だとみている。しかし一部の富裕国が反対し、交渉は遅々として進んでいない。
MSFスイス会長のレベカ・パパドプルーは、「MSFは活動地で新型コロナ医療ツールが切実に必要とされていることを日々目の当たりにしています。命を救うために不可欠でありながら、普及が非常に限られているのが現状です。低・中所得国の感染対策に大きく貢献しうるこの免除案に反対する政府があるとは、全くやるせない思いです」と嘆く。
少なくとも5年間、すべての医療技術知財権の行使停止を
新型コロナワクチンの配分において各国間に深刻な不平等が続くなか、死亡者を減らすためには新しい治療法や検査も極めて重要だが、それらのアクセスにも困難が続く。製薬会社が低・中所得国には限られた量しか供給せず、また一方で特許などの知的財産権を保持しつづけ、ジェネリック医薬品製造の妨げになっているためだ。
MSFは、WTOでのTRIPS免除案が最大限の効果を発揮するために、最終文書で確保されるべき点として以下を挙げる。ワクチンだけでなく、検査や治療を含め、新型コロナ対応に必要なすべての医療技術を対象とすること、すべての知的財産権とその行使を対象とすること、そして、必要な医療ツールとその材料や成分の製造・供給を、準備し、拡大し、多元化し、持続することを可能にするために、期間を少なくとも5年間継続することである。
MSFはTRIPS免除案を支持することとともに、各国政府に以下の行動を求めている。TRIPS協定が既に定めている公衆衛生保護のための柔軟性を最大限に活用するなど、あらゆる法的・政治的手段を講じ、新型コロナ関連医療ツールの円滑な製造と供給の多元化を促すこと、十分な量のワクチンを確保している全ての国の政府が余剰分をCOVAXファシリティや国際機関に速やかに再分配すること、米国とドイツの両政府はファイザー社、ビオンテック社、モデルナ社に、低・中所得国のメーカーへのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの技術とノウハウの共有を求めること、そして、すべての政府に、世界保健機関(WHO)のmRNAワクチン技術移転ハブを政治・経済的に支えることを求めている。
日本では、このWTO閣僚会合に向け、MSFと他団体で構成する「新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!」連絡会が、11月23日に日本政府に要望書を提出。知的財産権保護についての政策を転換し、新型コロナに関わる知財保護の免除を支持するよう、改めて求めた。要望書はこちらから https://www.msf.or.jp/news/pdf/23nov21_wto23.pdf
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