エチオピア:アファール州で大規模な栄養危機が広がる恐れ
PR TIMES / 2022年6月10日 19時45分
国境なき医師団(MSF)は、エチオピア北部のアファール州で、栄養危機が深刻化する恐れがあると警鐘を鳴らしている。アファールでは地元住民以外にも、最近の紛争から逃れてきた数十万人の人びとが暮らし、干ばつ、飢餓、医療や清潔な水の不足に悩まされている。MSFは人道対応を急速に拡大しなければ、人びとがさらに命の危機に追い込まれることになると指摘。アファール州だけでなく、エチオピアの他の地域で起きている栄養危機が引き起こした高い罹患率や死亡率を引き下げるため、早急な行動が人道援助団体に求められている。
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48時間以内に命を落とす子どもたち
首都アディス・アベバを拠点にするMSFの緊急対応コーディネーター、ラファエル・ファイヒトは、「現時点で最も恐ろしいのは、栄養危機の氷山の一角が見え始めただけにもかかわらず、既に対応が追い付いていないことです」と話す。「唯一機能している拠点病院であるドゥプティ病院では、信じられないほど長くつらい旅を経て到着した子どもたちが、病気や栄養失調で48時間以内に命を落とすことが大幅に増えています。症状が進行しすぎて、戦う力が体に残っていないのです」
MSFは4月以降、数十万人の避難民を含む110万人以上の診療に当たるドゥプティ病院への支援を強化。今年、この病院に入院した重度栄養失調児の数は、既に前年同期比で3倍から4倍となっている。患者の死亡率も驚異的な高さで、20%を超える週もある。過去8週間だけでも35人の子どもが死亡。そのうちの3分の2以上が入院から48時間以内に亡くなっている。
ファイヒトは「アファールにいる人びとの多くは、近年の紛争、避難生活、人道援助の不足により、生きるために最低限必要な医療、食料、水を利用できていません。この事態を改善するために、避難民や危機に瀕している地元住民に対して、食糧安全保障、基本的な医療、栄養、そして水に重きを置いた大規模な人道援助を急がなければなりません」と続ける。
住環境の過酷さが医療のひっ迫を引き起こす
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アファール州の医療機関は、施設の損壊、破壊、放棄、人員・資金・物資不足のため、全体の20%しか機能していないと報じられている。ドゥプティ病院に入院している栄養失調の子どもの80%以上は、この病院に来るまで一度も医療を受けたことがなかった。患者たちは医療、食料、清潔な水など、生きるのに欠かせないものさえ満足に手に入らなかったため、栄養失調や命を脅かす病気が増えたとMSFに訴えた。
患者の1人アシヤ・サリハ・モハメッドさんは、「私たちが避難生活を送っている場所は非常に過酷で、普通なら住むのは不可能です」と話す。アシヤさんの自宅がある地域では多くの人が紛争で亡くなり、安全を求めて1カ月以上徒歩で移動せざるを得なかったという。現在、アシヤさんがいる避難民居住地には、医療機関などの生活基盤さえなく、1歳の娘を連れてドゥプティ病院に来院した。「食べものは足りず、飲み水もありません。泊まっている家には屋根がないので日陰がなく強い日差しにさらされています」
生活の過酷さはドゥプティ病院の患者を見れば明らかだ。入院が必要な栄養失調児の3分の2近くは避難民の家庭の子どもで、入院率を押し上げている。今年4月にMSFがドゥプティ病院の14床の入院栄養治療センターの支援を開始した後、病棟はすぐに1床あたり2人以上の患者を受け入れる事態となった。仮設ベッドを14床追加したが、こちらも満床となった。このため、医療スタッフはこの定員超過状態の病院にいる子どもに必要な水準のケアを維持するのに必死だ。そして最近では、通常の小児病棟さえも、患者数がベッド数の2倍を超える状態に達した。
多くの対策が必要
「水たまりの泥水を飲むしかないため、2日間で41人の子どもが重度の胃腸炎で小児病棟に入院しました」とファイヒトは指摘する。MSFは最近、エチオピア保健省と、新しい建物の迅速な建設や衛生管理や良質な水を安定供給できる水源の確立を支援するなど、同病院の小児科、入院栄養治療、救急部門の能力を向上させることに合意。これと並行して、MSFは最も支援が必要な地域に5つの外来栄養治療センターを開設する予定だが、増大しつつある危機を抑え込むためには、はるかに多くの対策を講じなくてはならない。
アファールだけでなく、エチオピアの他の地域でも、何十万人もの人びとが生きるか死ぬかの状態に立たされ食糧や支援を切実に求めている。ソマリ州ワルデルでは、ようやく雨が降り始めたものの、長期にわたる干ばつに伴う食糧・水不足という複合的な問題の解決には至っていない。MSFは最近、50カ所で7000人以上の子どもたちを対象としたはしかの集団予防接種を完了。また、緊急医療ニーズに迅速に対応できるよう、病気の発生状況について調査・集計・監視を行う体制を敷いた。この地域の人びとは、壊滅的な干ばつによって家畜や生存に不可欠な“命綱”を断たれ、水や食料、医療も遠のくばかりと悲観している。
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