1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

日本企業における従業員のライフスタイルとメンタルヘルス関連欠勤率および離職率との関連

PR TIMES / 2024年10月9日 11時0分

順天堂大学医学部総合診療科学講座の矢野裕一朗教授と健康長寿産業連合会(会長:橋本 雅博)、JST共創の場形成支援プログラム「若者の生きづらさを解消し高いウェルビーイングを実現するメタケアシティ共創拠点」(代表:宮崎 智之)が、経済産業省主導の健康経営度調査データを用いた共同研究により、日本企業における従業員のライフスタイル(睡眠状態や運動習慣など)がメンタルヘルス関連の欠勤率および離職率にどのように影響しているかを明らかにしました。この研究成果は、従業員のライフスタイルの改善が欠勤率や離職率を減少させる可能性があることを示唆しています。
この論文は、2024年8月2日にEpidemiology and Health (epiH)誌で公開されました。



■ 本研究成果のポイント
健康経営度調査のデータを活用し、社員のライフスタイルとメンタルヘルス関連の欠勤率や離職率との関連を評価

睡眠、運動、喫煙習慣がメンタルヘルス関連の欠勤率や離職率と関連することを明らかにした

社員のライフスタイルを改善することは、欠勤率や離職率の低下につながるかもしれない



■ 背景
 健康長寿産業連合会 健康経営(*1)の推進ワーキンググループ(WG3)では、健康経営の推進をテーマに『健康経営を通じた生涯現役社会の実現、および健康寿命の延伸』、『個々の企業における従業員等の健康保持・増進、それを通じた人材の定着・確保』、および『それらを推進することで「健康寿命延伸産業」の創出・拡大』の実現を目的とし、活動を推進しています。健康経営の各施策の取り組みが、従業員の健康状態や企業の利益率向上、医療費抑制につながるのかを俯瞰的観点から同定することを目的として、順天堂大学矢野裕一朗教授との共同研究を開始しました。

■ 内容
 経済産業省が毎年実施している「健康経営度調査」のデータを用いてライフスタイル(喫煙、運動、飲酒、睡眠習慣など)とメンタルヘルス関連の欠勤率(*2)や離職率との関連について評価しました。本分析は1,748社(従業員4,199,021人)のデータが含まれ、メンタルヘルス関連の欠勤率の全体の平均は1.1±1.0 %、離職率は5.0±5.0 %でした。すべての生活習慣因子と交絡因子を組み込んだ多変量回帰モデルでは、睡眠により十分な休養が取れている者の割合が1%増加すると、離職率が-0.020% (95%信頼区間 (CI);-0.038, -0.002)、メンタルヘルス関連の欠勤率が-0.005% (95% CI; -0.009, -0.001)減少しました。また運動習慣の割合が1%増加すると、メンタルヘルス関連の欠勤率が-0.005%(95% CI; -0.010, -0.001)減少しました。一方、喫煙割合が1%増加すると、メンタルヘルス関連の欠勤率が-0.013%(95% CI; -0.017, -0.008)減少しました。しかし、喫煙に関しては解釈に注意が必要です。今回のような一時点での横断解析では、先行研究においても、喫煙がストレスを軽減するというデータがあります。しかし、経時的に評価した縦断研究では喫煙がメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことや、禁煙介入によりメンタルヘルスが改善されることがシステマティックレビュー(*3)からも報告されています(Cochrane Database Syst Rev 2021;3:CD013522.)。本研究は観察的および横断的なデザインであり、従業員のライフスタイル要因とメンタルヘルス問題との間の因果関係を立証することはできませんので、この点は研究の限界として認識すべきです。

■ 今週の展開
 本研究では、日本企業における従業員のライフスタイル要因(睡眠、運動、喫煙など)と、メンタルヘルス関連の欠勤率および離職率との関連が示されました。本研究の成果をもとに、企業は従業員の健康的なライフスタイルを支援するプログラム(睡眠改善セミナー、職場での運動促進プログラムなど)を積極的に導入することが期待されます。これにより、従業員の生活習慣が改善されるだけでなく、メンタルヘルス関連の欠勤や離職を減少させる効果が期待できます。また、企業の健康経営の促進や従業員のモチベーションの向上にもつながる可能性があります。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/692/resize/d21495-692-9d82eba5d5856d38f505-0.jpg ]

図:日本企業における従業員のライフスタイルとメンタルヘルス関連欠勤率および離職率との関連
睡眠により十分休養が取れている者の割合が1%増加すると、離職率とメンタルヘルス関連の欠勤率が有意に減少、定期的な運動習慣のある者の割合が1%増加すると、メンタルヘルス関連の欠勤率が有意に減少することが明らかとなった。しかし本研究は観察的および横断的なデザインであるため、従業員のライフスタイル要因とメンタルヘルス問題との因果関係を立証することはできなかった。

■ 用語解説
*1 健康経営:「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても 大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康を経営的視点から考え、戦略的に実践することを意味しています。健康経営を通じて「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与すること」が、これからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられます。健康経営(R)はNPO法人健康経営研究会の登録商標です
*2 メンタルヘルス関連の欠勤率:WHO(世界保健機関)によって提唱された健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標の一つです。アブセンティーズムは健康問題による仕事の欠勤(病欠)を意味しています。病欠・病気休業により、本来出社して提供されるはずであった労働力が提供されなくなった分を「コスト(損失)」として考えます。
*3 システマティックレビュー:特定の研究問題に関連する全ての利用可能なエビデンスを、体系的かつ包括的に評価し分析する研究手法。この方法は、研究の質を評価し、結果のバイアスを最小限に抑えることを目的に使用される。

■ 研究者のコメント
本研究を通じて、企業が従業員の健康的なライフスタイルを支援することは、職場のメンタルヘルス改善と離職率の低下に重要な役割を果たす可能性があることを示しました。特に、睡眠の質や運動習慣がメンタルヘルスに与えるポジティブな影響は、企業の成長にも貢献できる可能性があります。私たちは、この知見をもとに、企業と従業員が共に健康で持続可能な働き方を築き、企業の利益や社会貢献に貢献できるよう、さらなる研究を進めていきたいと考えています。

■ 原著論文
本研究はEpidemiology and Health誌のオンライン版に2024年8月2日付で公開されました。
タイトル: The association between employee lifestyles and the rates of mental health-related absenteeism and turnover in Japanese companies
タイトル(日本語訳):日本企業における従業員のライフスタイルとメンタルヘルス関連欠勤率および離職率との関連
著者:Atsuya Fujimoto, Hiroshi Kanegae, Kaori Kitaoka, Mizuki Ohashi, Kunio Okada, Koichi Node, Kenkichi Takase, Hiroshi Fukuda, Tomoyuki Miyazaki, Yuichiro Yano.
著者(日本語表記):藤本敦也1)、鐘江宏2)、北岡かおり3)、大橋瑞紀3)、岡田邦夫4)、野出孝一5)、高瀬堅吉6)、福田洋7,8)、宮崎智之1)、矢野裕一朗3,7,9)
著者所属:1)横浜市立大学研究・産学連携推進センター拠点事業推進部、2) 医療法人社団こころとからだの元氣プラザ調査事業分析室、3) 滋賀医科大学NCD疫学研究センター、4) 特定非営利活動法人健康経営研究所、5) 佐賀大学医学部循環器内科、6) 中央大学文学部人分社会学科心理学専攻、7) 順天堂大学医学部総合診療科学講座、8) 順天堂大学健康安全推進センター、9) Department of Family Medicine and Community Health, Duke University
DOI: 10.4178/epih.e2024068

本研究は日本健康産業団体連合会の研究助成金(https://www.well-being100.jp/)、JST 共創の場形成支援プログラム JPMJPF2203、および日本医療研究開発機構(AMED)23rea522009h0001の助成を基に実施されました。本研究にご協力いただいた皆様には深謝いたします。

企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください