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こころの状態を推定できる非接触型環境センサの実用化に一歩

PR TIMES / 2023年3月28日 19時15分

~ストレスが少なく集中しやすい環境設計システムの発展に期待~

千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程2年の紅林勲氏と統合情報センターの小室信喜准教授、大学院工学研究院の平井経太准教授、関屋大雄教授は、大学院人文科学研究院の一川誠教授(山口大学時間学研究所客員教授)とともに、人間の認知機能に影響を及ぼしうる室内環境データ(温湿度やにおい、照度、音量、CO2濃度、微粒子、気圧など)を取得するセンサネットワークシステムおよびそれらの環境データと時間情報から、その環境内にいる人間のこころの状態(情動状態(注1))を推定するシステムを開発し、環境データのみを用いてその環境にいる人の4種類の情動状態(ストレス度、覚醒度(注2)、疲労度、快適度)の状態を高い精度で推定することに成功しました(図1)。本成果は、ストレスの少ない環境や集中しやすい環境の設計、メンタルヘルスの評価などに幅広く応用できることが期待されます。
本研究成果は、国際科学誌Internet of Thingsで2月25日に公開されました。



[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/700/resize/d15177-700-53b6e758b01ad58e2590-1.png ]



研究の背景:情動状態推定における課題


学習・労働環境が大きく変化しつつある現代社会/社会情勢において、メンタルヘルス対策、学習・労働の作業効率化、人為的作業ミス対策として、ストレスや疲労感、快適感、感情的覚醒度などの人間の情動状態の把握と環境改善が重要です。心理学や認知科学で用いられてきた実験データやアンケート等の手法で得た情動状態の把握は心理特性の主観的な解明には効果的ですが、客観的に解明するには不向きです。他方、体温や心拍数等の生体データ・心理指標と情動状態との対応を解析する研究は、客観的かつ高精度で情動状態を推定できますが、人体に取り付ける接触型センサを用いるため、私たちの生活に浸透させるには大きな障害となります。
これらの経緯から研究グループは、客観的かつ非侵襲的な手法で情動状態を推定するシステムを開発し、80パーセント以上の精度で情動状態を推定することに成功しましたが、実用化に向けてさらなる精度向上が求められていました。


研究成果:非接触型環境センサ(注3)による情動状態推定


本研究では、非接触型環境センサデータのみを用いて人間の情動状態を高精度で推定するシステムを開発しました。まず、人の認知機能に影響を与えうる室内環境データ(温度、湿度、照度、光色、におい、音、CO2濃度、微粒子、気圧など)、生体センサ(注4)から得られる生理的データ(皮膚体温、心拍)に基づく情報状態(覚醒度、感情価(注5))、および時間情報を総合的に収集し、これらを紐づけます。時間情報を加えることによって、生活リズムや室内環境の変化の割合をとらえることができるようになり、これが推定精度の向上につながります。この収集データをもとに、生体センサから得られる生理的データに基づく情動状態を正解ラベルとして与え、教師あり機械学習(注6)によって環境データと時間情報から得られる情動状態の推定精度を上げていきます。これにより、本システムでは接触型である生体センサを使うことなく環境データと時間情報のみを用いて情動状態を高精度で推定できるようになりました。実験では、2LDKの室内で3泊4日生活する6名(男性3名・女性3名)を対象に、本システムを用いて人間の認知機能に影響を与えうる室内環境と時間情報に関するデータのみから個人の情動状態(ストレスや覚醒度、疲労度、快適度の状態)を推定しました。その結果、約90パーセントの精度で情動状態を推定できることに成功しました(図2)。この結果より本システムでは、非接触型センサのみを用いて、従来の生体センサによる手法にも劣らない精度を達成できたと言えます。

[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/700/resize/d15177-700-eda17e9e1effcee90265-0.png ]



今後の展望


本研究成果は、人間の認知機能に影響を及ぼしうる環境データのみを用いて情動状態を推定できることを示唆しています。非接触型環境センシングデータのみ用いて高い精度で客観的に情動状態を推定できることから、客観的視点でメンタルヘルスをモニタリング可能な生活環境を提供できるようになることに加え、ストレスが少なく集中しやすい労働環境、学習環境、運転環境をサポートするシステムの開発が進展し、タイムパフォーマンスを意識した労働など新たな働き方につながると期待できます。


研究プロジェクトについて


本研究は以下の支援を受けて実施されました。
・NEDO 官民による若手研究者発掘支援事業 マッチングサポートフェーズ
「学習・労働支援のための非接触センサビッグデータを用いた心的状態推定システムの開発」


論文情報


タイトル:Mental-state Estimation Model with Time-Series Environmental Data regarding Cognitive Function
著者:Isao Kurebayashi, Koshiro Maeda, Nobuyoshi Komuro, Keita Hirai, Hiroo Sekiya, Makoto Ichikawa
雑誌名:Internet of Things
DOI:https://doi.org/10.1016/j.iot.2023.100730


参考論文情報 (先行研究)


タイトル:Predicting individual emotion from perception-based non-contact sensor big data
著者:Nobuyoshi Komuro, Tomoki Hashiguchi, Keita Hirai, Makoto Ichikawa
雑誌名:Scientific Reports
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-021-81958-2


用語解説


(注1)情動状態:ここでは、ストレス度、覚醒度、疲労度、快適度を総称して情動状態と呼ぶ。従来研究では、生体センサデータ(心拍数や皮膚体温の変化)から、交感神経と副交感神経のバランスを解析することによって、覚醒度、感情価を求めるような研究が行われている。
(注2)覚醒度:興奮状態・集中状態の度合い。
(注3)非接触型環境センサ:温度計や湿度計のように、人の体に身に着けることなく環境データを計測する機器。本研究では、温度、湿度、照度、照明色、におい、音など、人間に知覚に関わる環境データを計測した。
(注4)生体センサ:被験者に装着して体温や心拍数を計測する機器。本研究ではスマートウォッチを使用し、計測した脈拍数と皮膚体温から情動状態が得られた。
(注5)感情価:快、不快状態の度合い。
(注6)教師あり機械学習:既知である入力データと出力データを機械学習アルゴリズムにあらかじめ与えることで、それらを正解データとして用い、データ解析・処理を実現するAI(人工知能)技術。

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