【岡山大学】新炭素材料Qカーボンでエネルギー・環境問題に挑戦
PR TIMES / 2022年6月7日 9時15分
岡山大学は10学部・1プログラム、8研究科、4研究所、附属病院、附属学校を有する総合大学型の国立大学法人です。
今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を2022年5月27日に発行しました。ぜびご覧ください!
2022(令和4)年 6月 6日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
[画像1: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-61101af2b61aa9ab2324-0.jpg ]
<発表のポイント>
身近にある炭素元素でエネルギーや環境問題を解決する材料を開発する研究を行っています。
世界に先駆けて新材料Qカーボンの再現に成功し、作製には原料炭素の熱的性質と照射レーザーの強さを適切に調整することが重要であることを示しました。
Qカーボンの作製方法を確立する研究やQカーボンを用いた省エネやエネルギーに関する研究に取り組んでいきます。
◆発表者
岡山大学異分野基礎科学研究所 准教授 村岡祐治
◆導 入
省資源、省エネ、環境保全などの課題を解決する材料が求められています。そのような材料をありふれた元素で実現することは物質科学の重要な課題です。
Qカーボンは2015年に発見された非晶質の炭素同素体です。室温での強磁性的振舞い、わずかなエネルギーでの発光、ダイヤモンドを凌ぐ硬度、優れた耐摩耗性、レーザー照射による常温常圧でのダイヤモンド変換、ホウ素添加による超伝導などの特性を示すため、Qカーボンは省エネやエネルギー問題を解決するための有力材料になると期待されています。
身近な先端材料になりうるQカーボンですが、まだ使用例はありません。現在は新材料としての可能性の高さから、Qカーボンの作製を再現するための研究が世界的に繰り広げられています。
村岡准教授らのグループはこれまでダイヤモンド超伝導膜の作製に関する研究を行ってきました。同じ炭素系でありダイヤモンドを凌ぐ特性を示すQカーボンの出現に衝撃を受け、この物質の特性をもっと知りたいと思いQカーボンの研究を始めました。
◆背 景
Qカーボンの研究を行うために、この物質の作製を再現する必要があります。しかし、その作製は容易ではなく、これまでにQカーボンの研究は発見者グループに限られていました。Qカーボンの研究推進のためには、Qカーボン作製の再現はもちろん、作製方法を明らかにすることが望まれていました。
Qカーボンはレーザーを使った極短時間のプロセスにより生成されます。原料にダイヤモンドライクカーボン(DLC)*2と呼ばれる炭素膜を用い、この原料膜にナノ秒レーザーを照射します。レーザー照射によって溶けた炭素膜が超過冷却*3状態となり、その後超高速急冷されるとQカーボンが得られます。レーザー照射によってDLCからQカーボンができるまでの時間は数百ナノ秒といわれています。Qカーボンが再現できないのは極短時間の中で熱制御を行うことが難しいからです。Qカーボンの作製を再現するには、溶けた炭素膜の過冷却度と急冷度を実験パラメータによって適切に調節することが重要となります。
◆研究内容、業績
村岡准教授らの研究グループは、溶けた炭素膜の過冷却度と急冷度が照射するレーザーの強さ(レーザー密度)とDLC膜の熱的特性に強く依存することに着目し、これらを調整することでQカーボンを作製できると考えました。
実験を行った結果、作製した試料においてQカーボンの特徴であるフィラメント形状(図1)、および、室温で強磁性的振る舞いを観測し(図2)、Qカーボンの再現に成功したことが分かりました。また、Qカーボンができる組み合わせは複数あり、Qカーボンの作製にはレーザーのエネルギー密度とDLCの熱的性質を適切に調節することが重要であることを明らかにしました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-c64c26ad9895e23a685d-1.jpg ]
現在進めている研究は、ホウ素添加Qカーボン高温超伝導体の開発です。ホウ素添加Qカーボン超伝導体の超伝導転移温度はこれまでの炭素系や非結晶物質よりもはるかに高く、ホウ素添加量を適切に調整できれば、転移温度は高温銅酸化物超伝導体と同じくらい高くなる可能性を秘めています。
村岡准教授らの研究グループでは開発した作製法を使用してホウ素添加Qカーボンを作製し、超伝導の兆候を観測しています。ホウ素添加量を調整することで、ホウ素添加Qカーボン高温超伝導の実現に向けた研究を加速できる状況にあります。
[画像3: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-4d8ba4f183f1a7410181-2.jpg ]
◆展 望
軽くてありふれた炭素からなり、短時間に作れるQカーボンは、エネルギー・省エネや環境問題を解決するための有力な先端材料になると見込まれます。これまでの研究によりQカーボンを作製するための指針を得ることができました。
今後は作製方法を確立するための研究やQカーボン高温超伝導体の実現に向けた研究を行っていきます。
また、Qカーボンの示す強磁性、わずかなエネルギーでの発光、超伝導などの特性に関する研究や、それらの特性をエネルギーや環境分野に応用するための研究を進めていきます。
・補足・用語説明
1)ナノ秒:単位の名称に着ける接頭語のひとつで、10-9倍(十億分の一)を意味します。1ナノ秒は十億分の一秒になります。
2)ダイヤモンドライクカーボン(DLC):主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体からなる非晶質の硬質膜。本研究では水素を含まないDLCを用いています。
3)過冷却:液体が凝固しないで、凝固点よりも低い温度まで冷却された状態のことです。水であれば、0°C以下でも凍結しない状態を指します。Qカーボンを作製するためには、1000Kの過冷却温度が必要といわれています。
FOCUS ON:新炭素材料Qカーボンでエネルギー・環境問題に挑戦
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220527-2.pdf
◆参考情報
・岡山大学異分野基礎科学研究所(RIIS)
http://www.riis.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学異分野基礎科学研究所 超伝導・機能材料研究コア
https://film.rlss.okayama-u.ac.jp/index.html
・【岡山大学】岡山大学異分野基礎科学研究所竣工式を挙行しました
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000089.000072793.html
◆参考情報:FOCUS ON
・【岡山大学】全身性エリテマトーデスで免疫力が低下する原因分子を同定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000072793.html
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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000072793.html
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[画像4: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-1c86c519f90e220189cb-6.jpg ]
[画像5: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-f2ff6cb0d00429272a12-3.jpg ]
◆本件お問い合わせ先
岡山大学異分野基礎科学研究所 准教授 村岡祐治
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:086-251-7898
FAX:086-251-7903
https://film.rlss.okayama-u.ac.jp/index.html
<岡山大学の産学連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年6月期共創活動パートナー募集中:
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[画像6: https://prtimes.jp/i/72793/708/resize/d72793-708-79b75423b49bd1747f8f-5.jpg ]
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