2021年の夏休み(7月20日~8月31日)の旅行動向
PR TIMES / 2021年7月19日 17時15分
・国内旅行人数は4,000万人、対前々年比▲44.8%(対前年+5.3%)
・8月22日まで東京都・沖縄県に緊急事態宣言発出、旅行者数は前年から増加するも、大きな回復には至らない見込み
・引き続き域内、感染防止で安心安全を意識する“新常態の安近短”旅行
JTBは「夏休み(7月20日~8月31日)に、1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめました。なお、今夏の旅行動向見通しについては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下新型コロナ)の感染拡大に対する国の方針および東京2020オリンピック競技大会の観客受け入れ方針の発表を待ち、対象期間を7月20日~8月31日(例年は7月15日~8月31日)に変更し、国内旅行のみを対象としました。当社は本レポートを1969年から発表し、旅行動向アンケート、経済指標、業界動向や予約状況などから推計しています。
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【旅行動向アンケート 調査方法】
調査実施期間: 2021年7月5日~7日9日
調査対象: 全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数: 事前調査10,000名 本調査1,030名
(事前調査で「夏休みに旅行に行く/たぶん行く」と回答した人を抽出し本調査を実施)
調査内容: 2021年7月20日~8月31日に実施する1泊以上の旅行(商用、業務等の出張旅行は除く)
調査方法: インターネットアンケート調査
※本調査は、2021年7月12日に東京都の緊急事態宣言、4府3県のまん延防止等重点措置が発出される前に実施されたアンケートをもとに分析されています。
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<社会経済環境と生活者の動き>
1.新型コロナと旅行・観光の動き
新型コロナが世界的流行になってから2度目の夏を迎えました。変異種を中心とした感染拡大は現在もなお世界中で続いており、累積感染者数は1億8,000万人以上になりました(2021年6月末時点)。
一方でワクチン接種も広がっています。先行している一部の国では「トラベルバブル」(隔離なしでの往来)やワクチンパスポートの整備など、渡航規制緩和に向けた具体的な施策が進んでいます。EUでは2021年7月1日よりワクチンパスポートの発行を開始し、またタイ・プーケット島では同日よりワクチン接種済みの観光客受け入れを再開するなど、海外観光旅行の再開に向けた動きがみられます。イギリスは7月19日に新型コロナによる規制のほとんどを解除し、ウイルスと共存していく措置がとられる予定です。感染拡大の懸念は依然拭えませんが、世界各地で徐々に正常な活動が戻り、旅行についても国や地域間の移動が再開される準備が進んでいます。
国内の新型コロナの状況に関しては、4月以降変異種の拡大に伴い、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が一部の都道府県に対して発出されました。一時感染者数が減少したことから、6月20日に緊急事態宣言が沖縄県以外の地域に対しては解除されたものの、再び感染者数が増加したことから、7月12日から8月22日までの間、東京都と沖縄県には緊急事態宣言が、大阪府・神奈川県・千葉県・埼玉県に対しては、まん延防止等重点措置が適用となっています。
2.夏休みの旅行・観光の動きと東京2020オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会
今年の夏休み期間は、ゴールデンウィーク(GW)に引き続き、最大の旅行市場である東京都に緊急事態宣言が発出、首都圏3県にもまん延防止等重点措置が適用され、感染拡大の影響を大きく受けることが予想されます。GWに緊急事態宣言が発出されていた大阪府、京都府、兵庫県は大阪府だけがまん延防止等重点措置の適用となり他は解除となったため、関西地区の人々の旅行は回復が期待されます。
航空会社やJR各社においても、7月後半からの持ち直しが期待されています。ANAは7月22日~25日の利用者が前年の2倍、お盆休みは同2~3倍の見通しを示しており、JR東日本では管内エリア各地で臨時列車が運行される予定です。
昨年の夏休み期間は東京都以外でGoToトラベルキャンペーンが展開されていましたが、国は現在、都道府県が行う県内旅行の割引事業への財政的支援策「地域観光事業支援」を実施しています。支援の対象となるのは感染状況がステージ2以下の地域であるため、一都三県は対象外となりますが、現在35県(7月17日時点)で実施されており、多くの自治体で域内の支援策が行われています。人の動きは地域内旅行や近距離旅行が中心となり、感染防止の安心安全に配慮した「新常態の安近短」は今年も継続しています。
そのようななか、東京2020オリンピック競技大会が2021年7月23日~8月8日、東京2020パラリンピック競技大会が8月24日~9月5日にそれぞれ開催されます。ただし東京2020オリンピック競技大会は、会場となる地域のうち6都道県では無観客での開催が決定されたため、関連する旅行の影響はごく小さい見込みです。
3.旅行やレジャー消費をとりまく経済環境と生活者意識
日本社会は、これまで4回の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置による影響を受けています。2021年6月の政府の月例経済報告によると、全体としては持ち直しの動きが続いているものの、個人消費はサービス業を中心に弱さが増しているとされています。しかしながら2020年度は景気回復が進む海外の需要を取り込んだ製造業の業績が好調だったこと、「巣ごもり消費」も活発だったため、税収総額は60兆8,216億円と過去最高を記録しています。外出や移動を伴う消費に関わる業種は依然大きく落ち込んだままで、業種により明暗が分かれているのがリーマンショック時との違いです。
一方、消費者心理としては当初の先行き不透明感もあり、総務省の「家計調査」では消費の抑制および可処分所得の増加傾向がみられ(図表2)、その結果、日本銀行の「貸出・預金動向」における家計金融資産は21年1~3月期で、比較可能な2005年以降で過去最高となっています(図表3)。生活意識に関しては、日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」から、「暮らし向き(ゆとり)状況」を時系列に推移をみてみました(図表4)。新型コロナの感染が拡大した2020年は、「ゆとりがなくなってきた」は減少傾向にあり、生活のゆとり意識は緩やかながら改善傾向と言えます。2021年の夏のボーナスも全体では減少しましたが、減少幅は半減し、増額となった業種は前年より増加しています。外食や観光などサービス業に多い非正規雇用者の雇用環境は悪化していますが、正規雇用は手堅く、若者の旅行に影響を受けやすい新卒学生の内定率もコロナ禍前と同水準まで戻っています。
JTBが実施したアンケートで、生活と夏休みの旅行について当てはまる状況を聞いたところ、「先行きがわからないので大きな支出は控えておきたい(19.4%)」や「株や資産運用について考えるようになった(10.1%)」など不透明感の漂う将来を見据え、堅実な消費や資産構築を検討する意向がみられます(図表5)。その一方で、「新型コロナの影響で我慢を強いられてきたので、買い物や外食、趣味や娯楽などを行って発散したい(11.1%)」など1年以上に渡る自粛生活疲れから、消費意欲が溜まっている様子がうかがえます。
「今後1年間の旅行支出に対する意向」については、「コロナ前(2019年以前)」と「コロナ禍(2020年以降)」とそれぞれ比較して聞いてみました。「コロナ前(2019年以前)より旅行支出を増やしたい」と回答した人は9.4%、「コロナ禍(2020年以降)より旅行支出を増やしたい」は15.3%と、感染拡大が始まった昨年よりは旅行支出を増やしたいと考える人の割合が高い結果となりましたが、コロナ前ほどは旅行支出に対して前向きではないことが分かります。なお、「支出を減らしたい」と考えている人はほぼ同程度でした(図表6)。
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<夏休みの国内旅行動向予測>
4.夏休みの旅行を取り巻く環境と生活者の旅行意向
※本動向調査は冒頭記載の通り、7月5日~9日実施のアンケート結果に基づいています。
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今年の夏休み期間中(2021年7月20日~8月31日)の帰省を含めた旅行意向の詳細を前述のアンケートで聞きました。今年は、7月22日~7月25日が4連休、8月7日~8月9日が3連休となります。なお、新型コロナの影響により、8月22日まで2都県が緊急事態宣言、4府県がまん延防止等重点措置の適用対象となっています(7月19日現在)。
期間中に旅行に行くかどうかについては、「行く(”行く”と”たぶん行く”の合計)」と回答した人は調査時点で19.8%となりました(図表7)。コロナ禍前の夏休みの旅行意向は概ね40%前後で推移していましたが、今年は例年の半分程度になっています。性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高くなる傾向がみられます。「行く(”行く”と”たぶん行く”の合計)」が男性29歳以下は31.6%、女性29歳以下は33.2%であるのに対し、男性60歳以上は14.2%、女性60歳以上は10.8%でした(図表8)。
旅行に行かない理由としては、「まだコロナの影響で、旅行することに不安があるから(45.1%)」が最も多く、次いで「コロナウイルス新規感染者数が減っているとは言えない状況だから(37.1%)」「コロナ第5波が心配だから(31.1%)」となっており、新型コロナが大きく影響しています(図表9)。一方で「治療薬やワクチンの接種が遅れているから」が17.1%となっており、ワクチン接種が進むことで旅行意向が高まることが考えられます。
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5.国内旅行人数は 4,000万人(19年比▲44.8%、20年比+5.3%)
国内旅行平均費用は 33,000円(19年比▲9.6%、20年比+3.1%)
夏休み期間(7月20日~8月31日)の旅行に関しては、各種経済指標、コロナ禍における交通機関各社の輸送人員実績推移、移動データ、定点意識調査なども参考にし、国内旅行人数は4,000万人(19年比▲44.8%、20年比+5.3%)、国内旅行平均費用は33,000円(19年比▲9.6%、20年比+3.1%)、総額1兆3,200億円と推計します。
今年と昨年との旅行を取り巻く環境の違いは以下のとおりです。
昨年は最初の緊急事態宣言が明け、6月末から県をまたぐ移動も再開されたものの、新型コロナへの警戒感が強く、初の感染再拡大への不安も重なり行動を自粛する様子がしばらくの間みられました。また、学校が休校となった影響で夏休み期間中に補講を実施した学校も多く、旅行の計画をたてにくい状況でした。一方で、7月22日から実施された観光支援策「GoToトラベルキャンペーン」の影響は大きかったものの、9月末まで東京都内の発着は対象外となり、夏休み期間の当キャンペーン利用人泊数は東京が加わった10月以降に比べると限定的と考えられています(観光庁データによる)。
今年は、東京都と沖縄県に緊急事態宣言が発出されていますが、JR各社や航空会社の利用実績から大幅な減少は足元では生じていないようです。
また、今年はGoToトラベルキャンペーンに代わる県民割などの「地域観光事業支援」を35県(7月17日時点)にて実施しています。感染拡大が抑えられている地域を中心に、地域内旅行が活性化していると考えられます。
意識調査では、旅行者の意識は、当初は「新型コロナが終息したら旅行を再開したい」と考える割合が高く、過去のパンデミックのように短期終息への期待があったものの、コロナ禍が長引くにつれて、安心安全に配慮しながら旅行を再開したいという傾向に移りました。
以上を勘案すると、今夏の国内旅行者数は、一部地域においては抑制がかかるものの、昨夏を上回ることが予測されますが、大きく回復に転じているわけではないということがいえるでしょう。
旅行費用については、域内旅行志向による平均泊数の低下、および将来不安による旅行費用の抑制傾向が見られる一方で、多少割高でも新型コロナの感染防止を優先する傾向と、観光・地域応援と連動した旅行先での食事やお土産の購入等から、一人当たりの平均費用(単価)は前年を上回ることが予測されます。JTBの予約状況による旅行のピークは、7月の4連休開始日となる7月22日で、次いで7月23日となっており、今夏の傾向については次章以降で述べる通りです。
6.夏休みの旅行はこれまでと同様に、感染予防を意識した「新常態の安近短」傾向
アンケートの事前調査で「今年の夏休みに旅行に行く/たぶん行く」と回答した1,030名を抽出し、旅行の内容について詳細を聞きました。
旅行日数:「1泊」が41.9%と最も多く、次いで「2泊(29.66%)」「3泊(15.3%)」となっています。3泊までの旅行が全体の86.8%を占めており、コロナ禍前の2019年(84.3%)より2.5ポイント上昇し、短期傾向は強まっています。(図表10)。
同行者:「夫婦のみ(25.6%)」で最も多く、次いで「子供づれ(中学生までの子供がいる)の家族旅行(22.4%)」となっています。また、「ひとり(20.3%)」はコロナ禍前の2019年(13.4%)より6.9ポイント増加しており、感染防止や周囲への配慮などもあってか、ひとりで旅行に行く人は増えています(図表11)。
旅行目的や動機:「帰省、離れて住む家族と過ごす(21.5%)」が最も多く、次いで「温泉でゆっくりする(17.4%)」「自然や風景を楽しむ(10.7%)」となっており、この傾向は2019年と変わりありません。一方で「ハイキング、登山、キャンプ等」は2019年と比較して、2.3%から6.2%と3.9ポイント上昇しています(図表12)。
旅行先:居住地別の旅行先から、マイカー等使って気軽に行ける近場の傾向が見え、引き続き全国的に旅行先と居住地が同じ域内旅行の割合が高いです(図表13)。その地域を選んだ理由としては、「行きたい場所があるので(30.6%)」「帰省先なので(22.6%)」「泊まりたい宿泊施設があるので(15.1%)」が高い結果でした(図表14)。
一人当たりの旅行費用:「1万円~2万円未満」が26.3%で最も多く、次いで「2万円~3万円未満(18.9%)」「1万円未満(15.3%)」となっており、3万円未満が全体の6割を占めています(図表15)。
利用交通機関:「乗用車・レンタカー」が70.0%で最も多く、次いで「JR新幹線(16.33%)」「JR在来線・私鉄(15.2%)」となっています。コロナ禍前の2019年と比較すると、「乗用車・レンタカー」は9.6ポイント増加し、「JR新幹線」「JR在来線私鉄」の合計(31.5%)は7.4ポイント減少しており、公共交通機関より乗用車・レンタカーを利用する傾向がみられます(図表16)。
利用宿泊施設:「ホテル」が43.1%で最も多く、次いで「実家や親族の家(26.1%)」「旅館(25.0%)」となっています。ホテルはコロナ禍前の2019年(48.8%)から減少傾向となりました。一方、「実家や親族の家」と「友人・知人の家」の合計(29.5%)は、2019年(25.9%)から3.6ポイント増えています。また「キャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊など、アウトドアに関する宿泊(7.5%)がGWに引き続き一定のボリュームを有しています(図表17)。
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7.感染症を予防しながら過ごせる、自然を楽しめる場所が高い人気
今年の夏休みに出かける場所として、気になっているところを聞きました。その結果、最も多かった答えは、「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など、景色を楽しむ)(30.1%)」、次いで「自然が楽しめる場所(登山や海水浴など、体験を楽しむ)(28.0%)」と、感染症を予防しながら過ごすことのできる、自然が楽しめる場所が高い人気となりました。次いでコロナ禍前から人気の高い「花火大会(12.8%)」「動物園や水族館(12.8%)」となりました(図表18)。
JTBの宿泊・国内企画商品の予約状況をみると、地域により差があるものの、東京を除いたGoToトラベルキャンペーンが実施されていた2020年より増加しています(+5%)。一方で、2019年比でみると▲65%と低調です。方面別に見ると、比較的感染の落ち着いていて県民割などの「地域観光事業支援」策が後押している九州(+55%)や新潟佐渡(+50%)、伊勢志摩(+35%)、南紀(+30%)が好調に推移しています。引き続き感染拡大に留意した近場の旅行が多数を占めています。
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8.次の旅行の予習として広がるオンラインツアー
新型コロナの感染拡大をきっかけに新たに広がった旅行・観光の動きの1つに「オンラインツアー(ウェブ上で行われる旅行)」があります。当初はバーチャルな旅行体験がリアルな旅行を阻害するのではと考えられていましたが、各種調査から競合するものではなく、むしろ旅行前に現地の人々と交流を持つことでリアルな旅行への関心が高まることが分かっています。
今回、夏休みの旅行予定者にオンラインツアーについて聞きました。これまでに「参加したことがある人」は9.2%、「参加したことはないが、興味があるまたは参加したい人」は22.3%、「参加していないし、興味もない」人は68.5%となりました(図表19)。ウェブ上での観光地の見学に終わらず、地場産品のお土産がついている、一緒に料理体験をするなど体験もできる多彩な内容も増えてきています。今後オンラインツアーに参加する場合の重視する条件について聞いたところ、「参加費(無料または低価格)」が15.2%で最も高く、次いで「映像の美しさ(8.8%)」、「方面や行く場所の珍しさ・トレンド感があるかどうか(4.5%)」となりました(図表20)。
現状では割合が小さいものの、「参加していないが、リアルな旅行は体力的に難しく、オンラインだと遠い場所に行けるので参加したい」や「参加していないが、予習旅として旅行に行けるようになったら参加したい」と考える声もあり、実際に行く旅行とは異なる役割がオンラインツアーに期待されていることが分かります。オンラインツアーは新型コロナ収束後も、旅行先に関する情報収集等の「予習旅」として、また地域が旅行者とつながり続けるための接点づくりとして新たな地位を築き始めています。
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※JTBホームページのニュースリリース:
https://press.jtbcorp.jp/jp/2021/07/2021720831.html
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