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原発性副腎不全をきたしたリンパ腫様肉芽腫症を報告~日本で初めて、世界でも数件しか報告されていない希少な病態~

PR TIMES / 2024年6月21日 16時15分



 千葉大学大学院医学研究院の佐久間一基特任准教授、大学院医学研究院/災害治療学研究所の田中知明教授、東北医科薬科大学の中村保宏教授らは、原発性副腎不全をきたしたリンパ腫様肉芽腫症を報告しました。原発性副腎不全はアジソン病とも呼ばれる疾患です。病因は、感染症(結核、真菌性、後天性免疫不全症候群)、自己免疫性、癌の副腎転移などがありますが、今回、原発性副腎不全をきたす珍しい病態として、リンパ腫様肉芽腫症があることを明らかにしました。本知見は、今後、原発性副腎不全の原因疾患の適切な診断に寄与することが期待されます。本報告は、世界で評価の高い医学雑誌の一つである英国科学誌 The Lancet に、2024年6月1日に掲載されました。

■報告の背景と経緯
 原発性副腎不全は、副腎からのステロイドホルモン分泌が生体の必要量以下に低下した状態に陥り、易疲労感、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、体重減少、低血圧などが生じる疾患です。加えて、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状、精神症状(無気力、不安、うつ)など様々な症状を引き起こすことがあります。厚生労働省特定疾患内分泌系疾患調査研究班「副腎ホルモン産生異常症」調査分科会が実施した全国疫学調査の報告によると、患者数は約1,000人と推定されており、難病指定されています。治療には、グルココルチコイドという副腎皮質から分泌されるホルモンの一種の速やかな補充に加え、原発性副腎不全を起こした原因の診断も重要です。副腎不全の病因としては、感染症(結核、真菌性、後天性免疫不全症候群)、自己免疫性、癌の副腎転移などがありますが、特発性(注1)のケースも42.2%と報告されるなど、原因が明らかでない原発性副腎不全が存在します。

■報告の内容
 本報告では、多発性の肺病変、両側の副腎腫大を呈した原発性副腎不全患者の原因疾患として、リンパ腫様肉芽腫症を同定しました。リンパ腫様肉芽腫症は、Bリンパ球と呼ばれる白血球が過剰に産生される病気です。リンパ腫様肉芽腫症の患者は通常、肺、中枢神経系、皮膚、腎臓に病変が認められることが多く、副腎病変は比較的稀で、これまで副腎機能への影響は十分に検討されていませんでした。本報告では、画像所見で多発肺病変、両側副腎腫大を認め、FDG-PET注2)で強い取り込みがあり、副腎の病理所見から、リンパ腫様肉芽腫症と診断しました。内分泌機能検査で、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが極めて低い値に対して、代償的に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が極めて高い値を示し、ACTHを負荷しても、コルチゾールが上昇しないことから原発性副腎不全をきたしたことを同定しました(図1)。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/860/15177-860-05aee6fdd7898d52fc6f27e66b0886df-814x660.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:多発肺病変、両側副腎腫大をきたしたリンパ腫様肉芽

■今後の展開
 一般に肺病変や両側の副腎腫大が認められる場合に、可能性のある疾患として肺がんの副腎転移、結核が挙げられており、リンパ腫様肉芽腫症はこれまであまり着目されていませんでした。本報告の知見は、肺病変と両側副腎の腫大、副腎不全を呈する原因疾患としてリンパ腫様肉芽腫症も考慮すべきであることを示しています。私達が検索した限りでは、リンパ腫様肉芽腫症による原発性副腎不全の報告は過去に1例のみであり(Aust N Z J Med 1989 Vol. 19 Issue 2 Pages 97-102)、私達の報告が、今後の原発性副腎不全の診療において有用な知見となることが期待されます。

■用語解説
注1)特発性:特発性とは原因不明という意味で、原因が特定できない原発性副腎不全は特発性原発性副腎不全と分類されます。

注2)FDG-PET:ブドウ糖の類似物質であるフルオロデオキシグルコース(FDG)に放射性同位元素(F-18)をラベルした薬剤(18F-FDG)を体内に投与し、陽電子放出断層撮影(PET)により、18F-FDGの体内での分布を画像化します。がんや炎症の場所の特定に利用されます。

■論文情報
タイトル:Primary adrenal insufficiency due to lymphomatoid granulomatosis in a 32-year-old man
著者:Ikki Sakuma, Ryoichi Ishibashi, Kosei Matsue, Daniel F Vatner, Yasuhiro Nakamura, Koutaro Yokote, & Tomoaki Tanaka
雑誌名:The Lancet
DOI:10.1016/S0140-6736(24)00974-7

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