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抗体検査で小中学生の新型コロナウイルス感染状況を明らかに 2022年度に感染者が急増したが、感染に気づいていないことが多い

PR TIMES / 2025年2月6日 17時15分



 千葉大学予防医学センターの山本緑講師、櫻井健一教授らの研究チームは、千葉大学教育学部附属小学校の子どもたちとその卒業生から提供された血液を用いて、2020年度から2022年度の3回にわたり、新型コロナウイルスの感染状況を調べました。その結果、オミクロン株が主流となった2022年度に感染者が急増したものの、感染に気づいていないケースが多いことがわかりました。また、学年が低いことや他の子と遊ぶことが、感染が多くなる要因となる傾向がありました。
 小学校およびその子どもと保護者の3年間にわたる協力により、子どもたちの新型コロナウイルスの感染状況や要因を明らかにすることができました。この成果は今後の感染対策にもつながることが期待されます。
 本研究成果は、2024年12月21日に、学術誌Journal of Epidemiologyの電子版で公開されました。

■研究の背景:
 2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、世界中で拡大し、2024年2月に世界保健機関が発表した感染者数は累計約7億7千人を超えました。当初、子どもは新型コロナウイルスに感染しにくいと考えられていましたが、その後の調査により、子どももウイルスに感染はするが、無症状や軽症で済む場合が多いことがわかってきました。国や県では、検査を行った医療機関の報告に基づいて感染者数を把握していますが、症状があまり見られないなど、検査を受けていない感染者を把握することはできません。そのため、実際にどれくらいの子どもが新型コロナウイルスに感染しているのか、どんな子どもが感染しやすいのかについての十分なデータがありませんでした。

■研究の成果:
 本研究は、2020年12月の調査に参加した千葉大学教育学部附属小学校の子ども355名を対象に実施しました(1年目調査:1年生51名、2年生64名、3年生69名、4年生68名、5年生49名、6年生54名)。2020年度、2021年度、2022年度の冬に抗体検査注1を行い、新型コロナウイルスに感染したことがある子どもの数を調べました。また、それぞれの子どもについて身長体重などの身体測定に加え、新型コロナウイルス感染症にかかったかどうか、他の子どもと遊ぶ傾向が強いか、兄弟の有無などについての質問票調査を行いました。その結果、以下のことが明らかになりました。

1)3年間の新型コロナウイルス感染状況
 調査に参加した子どもの保護者の報告によると、2022年1月から新型コロナウイルスに感染した子どもが急激に増え、その動向は日本全国や千葉県での報告数の動向とほぼ一致していました。
 抗体検査で陽性の(一定量以上の抗体を持っている)子どもの割合は、1年目0.6%、2年目2.2%でしたが、3年目は60.9%で、半数以上の子どもたちが2022年に感染していたことがわかりました(図1)。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/946/15177-946-7031b93dfb3f4aa4b484cb2ce20edc52-1107x771.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 日本全国、千葉県、研究参加者の感染者の推移(報告数)

2)抗体陽性率と感染の認識との比較
 子どもが新型コロナウイルスにかかったかどうかを保護者に尋ね、抗体検査の結果と比較しました。2022年の質問票調査において、「かかっていないと思う」という子どものうち36%が抗体検査陽性でした。また、「調べていないが、かかったかもしれないと思う症状があった」という子どもは83%が陽性でした。この結果から、新型コロナウイルスに感染しても、症状がないか、検査を受けていないために感染に気づかなかった子どもが多くいたことがわかりました(図2)。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/946/15177-946-b43ca04b6e03335bd2535658edde69cb-806x507.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 感染の認識と抗体陽性率

3)感染と関係する要因
 3年目の抗体検査で陽性となった子どもの中で、2年目の抗体検査が陰性だった者を対象として、3年目に陽性となったこと(2022年に感染したこと)にどのような要因が関連しているのかを調べました。いくつかの考えられる要因について調べた結果、感染した子どもたちには次の2つの傾向が高いことがわかりました。
1. 一人でいるよりも他の子どもと遊ぶことを好む:他の子どもたちとの接触を通して感染した場合が多いと考えられます。
2. 学年が低い:この時期までにワクチンを接種した子どもが少ないことや他者との距離が近くなりやすいことが関係していると考えられます。


 2022年は、感染力が高いオミクロン株が流行したことに加え、熱中症予防のためのマスク着用の緩和、学校内外での活動が再開されるようになりました。これらの状況と、無症状や軽症で感染に気づかない子どもたちが多いことから、急速に感染が広まったと考えられます。
今後も新型コロナウイルス感染症だけでなくさまざまな感染症が流行し、基本的な感染対策が重要であることは言うまでもありません。一方、子どもたちは、他の人達との交流を通して成長していくため、感染しやすいからといって、遊びや交流の機会を妨げることは望ましくありません。ウイルス感染が起こりにくい屋外での遊びを推奨するなどの取り組みによる感染対策が望まれます。

■今後の展望
 本研究により、2022年に子どもたちの中で新型コロナウイルス感染症が急速に広がったこと、感染に気づいていない場合が多かったこと、他の子どもたちとの遊びなどを通して感染が広がっている可能性があることがわかりました。これらは、子どもたちの中での感染の実態を示す重要な成果です。
 本研究では、子どもたちの生活のようすを詳しく調査していないため、具体的にどのような生活が感染対策に結びつくかを明らかにすることはできていません。今後は、ワクチン接種および子どもの生活習慣を含めた感染症対策について、さらなる研究が求められます。

■用語解説
注1)抗体検査:血液の中に新型コロナウイルスを除去するための抗体を持っているかを調べる検査。本研究では、新型コロナウイルスの中にある「ヌクレオカプシド」というたんぱく質に対する抗体を調べた。「過去に新型コロナウイルスに感染した」場合に陽性となるが、新型コロナウイルスワクチンを接種しても陽性とはならない。

■研究プロジェクトについて
本研究は、科学研究費助成事業 「新型コロナウイルス感染症拡大前後の子どもの生活習慣と健康に関する調査」(課題番号21K10441) の助成を受けています。

■論文情報
タイトル:Three-year seroprevalence of SARS-CoV-2 nucleocapsid protein antibody among children, parental awareness, and contributors of infection: a single-school cohort study in Chiba, Japan
著者:Midori Yamamoto, Kenichi Sakurai, Rieko Takatani, Aya Hisada, Chisato Mori
雑誌名:Journal of Epidemiology
DOI:10.2188/jea.JE20240284

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