2024年、市場から消えた医療機関は過去最多の786件 医療機関の「倒産」「休廃業・解散」が過去最多に経営者の高齢化、後継者不在が拍車
PR TIMES / 2025年1月22日 15時15分
医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)
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株式会社帝国データバンクは、「医療機関」における倒産・休廃業解散の発生状況について調査・分析を行った。
<調査結果(要旨)>
- 医療機関の倒産は64件、過去最多を更新
- 負債額最大は「アリシアクリニック」を展開していた美実会
- 休廃業・解散は722件で過去最多を更新、倒産の11.3倍に
集計期間:2024年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
医療機関の倒産は64件、過去最多を更新
2024年の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1000万円以上)は64件となり、2009年(52件)を大きく上回って過去最多を更新した。
業態別では「病院」が6件、「診療所」が31件、「歯科医院」が27件となり、「診療所」「歯科医院」が過去最多を更新して全体を押し上げた。近年の動向は、コロナ禍前の2019年には過去3番目となる45件の倒産が発生したが、翌2000年にはコロナ禍での事業者支援などを背景に27件に減少。しかし、翌2021年から増加に転じ、2022年、23年と2年連続で40件を超えた。
負債総額は282億4200万円で前年(253億7200万円)から11.3%増加し、2000年以降の25年間で5番目に多い水準となった。
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64件の倒産主因を分析すると、「収入の減少(販売不振)」が41件と全体の64.1%を占めた。コロナ禍では、感染回避のため通院を控える(コロナ以外の)受診者やワクチン接種を機に施設・設備機器やサービス面を考慮して、かかりつけ医を見直す受診者が増えたことで、収入が減少したり受診者が戻らない施設が増加したとみられる。また、コロナ関連補助金の削減、資材価格高騰に伴う材料費(医薬品や検査キットなど)や設備機器費の増大、人材確保・維持のための賃上げや、コロナ関連融資の返済開始などの負担も増し、収入減少と支出増加が同時に進行したことで、資金繰りに窮し事業継続を断念する事業者が増加した。
負債額最大は「アリシアクリニック」を展開していた美実会
2024年に発生した64件を分析すると、態様別では「破産」が62件、「民事再生法」が2件となり、破産が全体の96.9%を占めた。民事再生法の2件はともに病院による申請となっている。
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都道府県別では、東京(14件)、福岡(8件)、大阪・神奈川(各5件)、埼玉・千葉・滋賀・兵庫(各3件)と続き、25都道府県で発生した。業態別では「診療所」が東京(8件)、神奈川(4件)、福岡(3件)、「歯科医院」が東京(6件)、福岡(5件)、大阪(3件)の順となった。
負債額別では、「1億円未満」が29件(構成比45.3%)で最も多く、その他は「1億円~5億円未満」(24件、同37.5%)、「5億円~10億円未満」(3件、同4.7%)、「10億円~30億円未満」(6件、同9.4%)、「30億円以上」(2件、同3.1%)となった。業態別では「病院」が52億3000万円(平均負債額8億7100万円)、「診療所」が166億9400万円(同5億3800万円)、「歯科医院」が63億1800万円(同2億3400万円)となり、3業態の平均(医療機関の平均)は4億4100万円となった。
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負債額最大となったのは、医療脱毛クリニックの「アリシアクリニック」を全国に展開していた医療法人美実会(負債72億9500万円)で、美実会の関係法人で同じく「アリシアクリニック」を展開していた一般社団法人八桜会(同51億7500万円)が続いた。債権者数は両法人合わせて約9万1800名にのぼり大きな話題となった。また、高橋デンタルオフィス(同19億円)は、インプラント治療と矯正を専門に手がけていたが、治療が進まないとして患者が前払い治療費の返還を求める訴訟に発展していたほか、治療費とは別に患者に投資や融資話を持ちかけ、この返還を求める訴訟も起こされていた。
休廃業・解散は722件で過去最多を更新、倒産の11.3倍に
2024年に休業・廃業・解散が判明した医療機関は722件となり、2023年(620件)を上回って過去最多を更新した。10年前(2014年)と比べて2.1倍、20年前(2004年)と比べて5.6倍に増えている。業態別では「病院」が17件、「診療所」が587件、「歯科医院」が118件となり、「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新した。
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2024年の件数は同年の倒産件数(64件)の11.3倍となり、業態別にみると「病院」が2.8倍、「診療所」が18.9倍、「歯科医院」が4.4倍となり、診療所の数値が突出している。
休業・廃業・解散が増加し続けている最大の要因は、全体の81.3%(587件)を占める「診療所」における経営者の深刻な高齢化にある。帝国データバンクが全国の診療所の経営者(年齢の判明している1万836人)の年齢分布を調べたところ、70歳以上の経営者が全体の54.6%と過半数を占めた。歯科医院(70歳以上の経営者は25.6%)と比べてもいかに深刻であるかが分かる。さらに日本医師会が全国の病院・診療所に行った「医業承継実態調査」(2020年)によると、診療所の50.8%が「現段階で後継者候補はいない」と回答するなど、今後、高齢化がさらに進むことで、経営者の健康上の問題や死去によって廃業となる「診療所」は、年々増え続けることが予想される。
また、施設数に目を向けると、「病院」が8068施設、「診療所」が10万5346施設、「歯科医院」が6万6689施設 (2024年6月時点、厚生労働省データ)となり、診療所の数が圧倒的に多い。さらに2014年以降の10年間で「病院」が438施設減少、「歯科医院」が2116施設減少しているのに対し、「診療所」は4594施設増加しており、競争も熾烈だ。
今後の見通し
2024年の医療機関の倒産件数(64件)、休廃業・解散件数(722件)はともに過去最多を更新した。2023年度の医療費は約47兆3000億円となり、高齢化や医療の高度化を背景に3年連続で過去最高を更新したものの、倒産した医療機関の6割以上が収入減少を主因とする倒産となっており、事業環境が悪化する施設が増えている。背景には施設・サービス面を考慮した受診者の選別意識の高まりやコロナ関連補助金の削減、材料費・人件費の増大、コロナ関連融資の返済開始などがある。
受診者が減り、資金余力が無くなった施設は、設備の更新ができず、給与・労働条件が悪くなり、スタッフも定着せず、サービス品質が低下。結果として、更なる受診者の減少を招くという負のスパイラルに陥る。こうした小規模事業者が増えていくことで、2025年も倒産件数は高水準で推移することが予想される。
また、休廃業・解散についても、診療所の経営者の高齢化や後継者不在の現状を踏まえると、減少する要因は見当たらず、時間の経過とともに増え続けるとみられる。
2024年は倒産件数、休廃業・解散件数合わせて786件となったが、2026年には同件数は1000件に達する可能性が高まっている。
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