ヒト型セラミドを組み込んだ保湿持続性ナノカプセル(1)「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)を開発
PR TIMES / 2024年1月19日 13時40分
株式会社ファンケルは、スキンケア製品の保湿効果実感を高めることを目的に、ナノカプセルの研究を行ってきました。その中で、特定の成分で作製したナノカプセルであるニオソーム(2)と、難溶性のヒト型セラミド(3)を組み合わせることで、通常は高配合できないセラミドを安定して配合できることを発見し、保湿持続性の独自ナノカプセル「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)を開発したことをお知らせします。
なお、本研究は、「コロイド&界面科学研究センター 第7回研究討論会」(於:長野)にて特別講演として発表しました。
<研究背景・目的>
これまで当社ではさまざまな成分を用いたナノカプセルを作製し、それらの特性を評価してきました。ナノカプセルの中には、それ単体で特定の機能性を有しているものもありますが、多くは機能性成分をナノカプセルの内側や、膜中に組み込むことにより機能を付与しています。
ヒト型セラミドはその構造により、角層の水分保持に対する高い機能性を保有していますが、結晶性が高く難溶性であることから、安定的にスキンケア製品に高配合することが難しい成分でした。そのため、これまではナノカプセル技術を用いた場合であっても、製品開発におけるヒト型セラミドの安定配合や配合可能な量に課題がありました。そこで、今回ナノカプセルの構成成分を検討し、安定して高配合できる技術の開発を進めました。
<研究方法・結果>
【ナノカプセルの膜構造にヒト型セラミドを組み込む】
一般的にスキンケア製品に配合するナノカプセルは、その構成成分である非イオン界面活性剤を保湿剤に溶解させた後、水に加えて作製します。ナノカプセルの膜は、構成成分が向かい合った二重膜構造になっており、ヒト型セラミドも角層中ではセラミド同士が向かい合った二重膜構造をとることが知られています(図1)。これらの類似する構造から、ヒト型セラミドをナノカプセルの膜構造に効率良く組み込めるのではないかと考えました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/17666/1143/resize/d17666-1143-463962fd6a13141a3e86-0.jpg ]
そこで、特定なナノカプセルの成分(4)と、ヒト型セラミドを適切に組み合わせることで、ナノカプセルの膜中にヒト型セラミドを組み込んだナノカプセルを作製し、その形状を電子顕微鏡により観察しました(図2)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/17666/1143/resize/d17666-1143-ba567020ae0acc46366d-1.jpg ]
右の顕微鏡画像から確認できるように、ヒト型セラミドを組み込んだナノカプセルは180nm程度で球状の形態を有していました。また、画像の中にはナノカプセル以外にセラミドの像が観察されていないことから、図2のイメージ図に示したように、ヒト型セラミドがナノカプセルの膜構造の一部として組み込まれていることが示唆され、ヒト型セラミドを組み込んだナノカプセル「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)の開発に成功しました。
【ヒト型セラミドを組み込んだナノカプセル「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)の保湿性評価】
ヒト型セラミドは角層中において二重膜構造を形成し、その層間に水分を抱え込むことで角層の水分を維持する役割を果たしています。そのことから、化粧品にセラミドを配合した場合においても、高い保湿持続性を示すことが期待できます。そこで、ヒト型セラミドを組み込んだ「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)と、セラミドを組み込まないナノカプセルを用いて、保湿性の比較試験を行いました(図3)。
[画像3: https://prtimes.jp/i/17666/1143/resize/d17666-1143-673b677581dec573bceb-2.jpg ]
左のグラフはヒト前腕内側部に塗布した後4時間の角層水分量変化を示しています。ヒト型セラミドを組み込んだ「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子/赤色グラフ)は、ヒト型セラミドを含まないナノカプセル(青色グラフ)と比較して、塗布直後から2時間経過までは同じ動きで角層水分量の変化を示しましたが、その後角層水分量の変化は横ばいとなり、有意に乾燥を抑制することが示されました。
さらに右のグラフは、ヒト前腕内側部に朝晩各1回7日間連続して使用した際の角層水分量変化を示しています。「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)を塗布した場合、3日目で角層水分量が使用前の約1.5倍、7日目では約1.7倍に上昇することが分かりました。一方、ヒト型セラミドを含まないナノカプセルでは角層水分量に大きな変化は見られませんでした。
これらの結果から、単にヒト型セラミドを安定に高配合できただけではなく、それが膜構造に組み込まれたナノカプセルを肌に塗布することにより、ヒト型セラミドに由来する保湿機能が発揮されることが確認されました。
<今後の展開>
今回、ヒト型セラミドを安定に高配合できるナノカプセル技術を確立しました。さらにヒト型セラミドを組み込んだナノカプセルが肌の水分量の維持や向上において有効であることが示されました。今後、この独自の「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)をスキンケア製品に応用することで、高い保湿機能を持つ製品開発につなげていきたいと考えています。また、並行してこの「セラミドニオソーム」(セラミド微粒子)が肌上でどのように作用しているかについてより詳細に検討することで、ヒト型セラミドをさらに効果的に働かせるナノカプセルの開発につなげていきたいと考えています。
【用語説明】
(1)ナノカプセル
粒子径がナノサイズ(1nm:10億分の1m)の球状の製剤。機能性成分を膜の内部や膜中に組み込むことで持続的な放出や標的部位まで届けるDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術に応用される。
(2)ニオソーム
膜の構成成分が非イオン界面活性剤からなる二分子膜の閉鎖小胞体。リン脂質からなるリポソームと同様、DDS技術に応用される。
(3)ヒト型セラミド
ヒトのセラミドとほぼ同じ構造を有しているセラミド。結晶性が高いため、水にも油にも溶けにくく、化粧品への高配合が難しい。
(4)ナノカプセルの成分
適切に組み合わせた保湿剤と非イオン系界面活性剤。溶解して水に滴下することで、自発的にナノカプセルを形成する。
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