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大阪大学大学院工学研究科とTOPPANホールディングス、新たな3D細胞培養技術により悪性度の高いがんを体外で忠実に再現

PR TIMES / 2024年8月26日 17時45分

コラーゲンマイクロファイバーによりがん細胞の防御システムを強化し平面培養に戻しても、その効果が持続することを発見

 TOPPANホールディングス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長CEO:麿 秀晴、以下、TOPPANホールディングス)と大阪大学大学院工学研究科(以下、大阪大学)は、2017年より「先端細胞制御化学(TOPPAN)共同研究講座」を設置し、松崎典弥教授と共同研究の下、独自のバイオマテリアルを活用した3D細胞培養技術「invivoid(R)」を2017年に共同で開発。社会実装に向けた研究開発を進めています。
 今回、3D細胞培養技術「invivoid(R)」を応用して、細胞との親和性が高い材料であるコラーゲンを細断した繊維(コラーゲンマイクロファイバー、以下 CMF)を使った新しい3D細胞培養技術を開発しました。この方法で培養したがんの組織は、従来の一般的な方法で培養したものよりも活性酸素(以下 ROS)に対する抵抗力が高いことを確認しました。本成果により「invivoid(R)」はより正確に生体のがんを再現できることが新たに分かりました。



 さらに、「invivoid(R)」ではない一般的な方法で培養したがんの組織は、3Dから2Dに再培養することで、このROSに対する抵抗力を失いますが、今回の新しい「invivoid(R)」で作製した3D組織は、2Dに再培養後も、それぞれのがん細胞でROSに対する抵抗力が高い性能で維持されることを確認しました。
 新薬開発において正しい評価結果を得る為に、がん細胞の特性を正確に再現するツールが近年求められています。今回「invivoid(R)」により、3D培養の高度な機能、品質を維持しつつ、従来の2D培養の簡便さで新薬候補を正確に探索することが可能になります。
 なお、本研究は材料科学コミュニティで影響力のある論文を掲載する国際科学雑誌「Materials Today Bio」に掲載されました。
[画像1: https://prtimes.jp/i/33034/1467/resize/d33034-1467-df80bc335d657bd7f757-0.jpg ]

■ 開発の背景
 がん細胞は、体内でコラーゲンなどの細胞外マトリクスや他の細胞と相互作用しながら活動していますが、従来の平面的な細胞培養方法や一部の三次元培養技術では、これを再現するのが困難でした。このような中で、TOPPANホールディングスと大阪大学の松崎典弥教授は、細胞の特性をより正確に再現する新しい3D細胞培養技術である「invivoid(R)」を2017年に共同で開発しました。これにより、がん細胞の実際の環境をよりリアルに再現できるようになりました。
 一方、悪性度の高いがん細胞は、体内で発生するROSに対する抵抗力があります。ROSは細胞内に蓄積すると、細胞にダメージを与え細胞死につながりますが、悪性度の高いがん細胞にはROSを取り除いて生き延びることができます。この現象は従来の技術でも一部再現されていましたが、がん細胞の培養環境が変わった後、その特性がどう変化するのかは分かっていませんでした。そこで今回、3D細胞培養技術「invivoid(R)」を応用して、細胞との親和性が高い材料であるCMFを使った新しい3D細胞培養技術を開発しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/33034/1467/resize/d33034-1467-20b3a1eae7defb8a4e7c-0.jpg ]

■ 今回の研究成果の特徴
・新たな「invivoid(R)」で培養したがん細胞は、高いROS抵抗性を確認
 生体内のがんは体外での培養中に悪性度の高い性質を失ってしまうことが知られています。しかし今回の結果から、CMF内で培養したがん細胞はROSを投与してもROSの蓄積が少ない細胞が従来の一般的な培養技術と比較すると約20~40倍多いことが明らかとなりました。この理由として抗酸化物質(以下、グルタチオン)の産生があります。CMF内で培養したがん細胞は、遺伝子解析の結果このグルタチオン産生能力を高めることでROSから自らを防御しており、生体のがんで報告されている現象と類似した性質を示しました。

・CMFから細胞を分離し、再培養してもROS抵抗性を維持
 従来の培養法ではがん細胞のROS抵抗性が再培養後も持続するかは分かっていませんでした。今回の結果から、CMF内で培養したがん細胞は再培養後も、ROS抵抗性が長期間維持されていることが明らかとなり、CMFのバイオマテリアルとしての有用性を確認しました。

■ 2者の役割
・大阪大学大学院工学研究科
研究統括/組織工学的観点からがん患者組織の培養における「invivoid(R)」の改良改善
・TOPPANホールディングス
コラーゲンマイクロファイバーを用いた「invivoid(R)」によるがんモデルの作製/評価

■ 今後の目標
 TOPPANホールディングスと大阪大学は、これまで以上に研究を加速させ、今後もバイオマテリアルによる細胞の機能制御に関する知見を蓄積し、事業に展開していきます。
 またTOPPANホールディングスは、「invivoid(R)」を用いたがん個別化医療について、国内外の大学、医療機関と共同で臨床に向けた事業開発を進めます。

■ 論文掲載について
掲載誌:Materials Today bio 2024,Volume26,101097
掲載日:2024年5月22日
著者:山田 あすか, 北野 史朗*,松崎 典弥*(*責任著者)
論文タイトル:Cellular memory function from 3D to 2D: Three-dimensional high density collagen microfiber cultures induce their resistance to reactive oxygen species
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S259000642400156X?via%3Dihub

■ 「invivoid(R)」について
 大阪大学の松崎 典弥教授とTOPPANホールディングスが共同で開発した独自バイオマテリアルによる3D細胞培養技術です。「invivoid(R)」は生体に近い人工組織を簡便に作製できるため、がん個別化医療、薬効や毒性試験を含む創薬研究、再生医療、培養食料など幅広い用途が期待されています。
紹介サイト: https://www.holdings.toppan.com/ja/invivoid/index.html

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*  本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

以 上

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