第6回WOWOWシナリオ大賞 受賞作決定!
PR TIMES / 2013年3月19日 14時52分
第6回WOWOWシナリオ大賞の受賞作が決定いたしました。応募総数492編の中から、大賞1編、優秀賞2編が選出されました。結果は以下の通りです。
<第6回WOWOWシナリオ大賞 受賞作一覧>
大 賞 : 「愛の告発」 香坂 隆史(こうさか たかふみ)氏
優秀賞:「帰郷」 井上 志津(いのうえ しづ)氏
「未亡人の背中」 水野 知佐子(みずの ちさこ)氏
大賞の香坂隆史氏には賞金500万円、優秀賞の井上志津氏、水野知佐子氏には、それぞれ賞金100万円を贈呈いたします。
また、今回の大賞受賞作「愛の告発」については、2013年度内のドラマ化に向けて制作に入る予定です。
【お問い合わせ先】
(マスコミ関係)広報部 TEL03(4330)8080
(IR関係)IR経理部 TEL03(4330)8089
<第6回WOWOWシナリオ大賞 選評>
選考委員長 崔洋一氏(映画監督)
昨年は残念ながら大賞を出すことができず、今期は選考委員全員が覚悟を持って選考に臨んだ。上質のエンターテインメントとは、世相の移ろいをきちんと見定め、なおかつ、それにおもねること無く独自の世界性=物語を観客、視聴者に放ち、提供することだ。シナリオ大賞は名実共にプロアマを問わず、新しい書き手、力ある新人作家のための登竜門であることを再認識していただきたい。
大賞「愛の告発」は“普通”に生きることを喜びとする市井の主人公が内部告発をきっかけに人生設計を狂わし、家庭を壊し、それでも正直に生きることが思わぬ大人の恋をうみ、その恋があらたなサスペンスをあぶり出す上質な大人のドラマと全員一致で評価した。
優秀賞「未亡人の背中」もまた現代を生き抜くシニアの感情の移ろい、愛憎の葛藤を主人公の世間離れした滑稽さも含め、品のある筆致で描き、味わい深いペーソスと笑いで大いに読ませる作品である。
同優秀賞「帰郷」の時代に置き去りにされてしまった老婦人の存在は哀しい。現代史の狭間に埋もれたファンタジーとでも呼べば良いのか。老女と少女の“幸せに生きる”ための瑞々しい対話は寓話的世界の重みを描く好編である。
結果的には“分別盛り”の作品が大賞、優秀賞として評価されたのだが、やや厳しい視点で振り返れば“新しい世代”の登場が薄かったともいえる。若齢だからこそ領域を超えた無尽のエネルギーを放つ特権を持つ若人が“世界”を変えないで誰が変えるのだ、と申し上げたい。
来期、シナリオ大賞への大いなる挑戦と挑発を期待し総評とします。
選考委員 奥寺 佐渡子氏(脚本家)
どの作品もうまい。技術も高くテーマも明確だ。だが人の心を掴んで振り回すような、読み手の胸がヒリヒリ焼けつくような乱暴な作品が一本もない。自己肯定の小さな嘘は退屈だ。同じ嘘なら破綻していたっていい、でっかくて、聞いたことのない嘘を堂々とついて欲しい。「愛の告発」は、やがて儚い結末を迎える元同級生同士のやり取りを、プロの俳優二人が演じるのを見たいと思った。丹念に詰み上げたエピソードが、後半じわじわ効いてくる。「未亡人の背中」は、平凡な登場人物たちの会話が、生々しいリアリティをもって立体的に迫ってくる。「帰郷」は、親とうまくいかない娘と主人公の関係がよく、淡々とした現在軸と鮮烈な過去軸との対比も美しい。選外となったが、がむしゃらにエンターテインメントを追求する筆致の「ホームランアーティスト」や、映像でどう人を惹きつけるかを考慮した「もうひとつの人生」も興味深かった。
選考委員 椋樹 弘尚氏(プロデューサー)
大賞「愛の告発」は身近に起こっている事件を題材に、正義感に翻弄される主人公を確かな構成で描き、高い力量を感じた。テーマに向き合う作家としての姿勢も脚本から感じられた。優秀賞「未亡人の背中」は実直な故人の秘密、とよくある設定のようだが、人物配置が素晴らしく、一人ひとりのキャラクターの丁寧な積上げは熟練作家のよう。テンションの違うシーンの最後に使う遺影が印象的。同・「帰郷」は過去と現在、帰国者と日本人、大人と子供など構成や人間関係が的確。キャラクター造型が脚本の厚みを支えている。
今回の印象としてはどれも映像化可能なくらいの脚本なのだが、等身大で行儀が良すぎたり、ライトノベルのようなゲーム的世界観でヒトとしての軌跡が希薄な印象のものが多かった。個人的には、構成要素を絞った緊密な物語やテクニック以上に作家の個性を感じられるような、ある意味独りよがりな作家の出現を期待している。
選考委員 野村 正昭氏(映画評論家)
大賞受賞作「愛の告発」は途中まで、ゴミ屋敷をめぐるトラブルの話として進行し、それはそれで現代的だなあと思わせておいて、後半は主人公の内面に深く関わりつつ、意外な結末になだれ込む。うまい構成だなあと感心しつつ、その最終的決断はミもフタもないもので、一篇のドラマとしては疑問が残る。倫理を強調するために主人公の性格を頑なにしたのだろうか。常識的な倫理など蹴散らす物語をこそ僕は見たいし、人間の業を描きたいのなら、同じ結論にせよ、含みを持たせた方が、より効果的だったのではないか。とはいえ、その力量には敬服せざるをえない。
優秀賞受賞作「帰郷」「未亡人の背中」の、あえて困難な主題に挑む姿勢も好ましかったが、候補作の中では「セレーネ」「ホームランアーティスト」「夢・RYU-GU-」のエンターテインメントへの拘りも高く評価したい。こうした脚本賞の選考にはウェルメイドな作風は不利に作用しがちだが、捲土重来を待ってます。
以 上
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