資生堂、マグネシウムイオンによるヒアルロン酸産生促進効果および細胞保護効果を発見 ~ミネラルに着目した美肌へのアプローチの進化~
PR TIMES / 2022年5月17日 20時45分
資生堂は、岐阜薬科大学 五十里彰教授との共同研究により、マグネシウムイオン(以下、Mgイオン)※1 が表皮細胞に作用することで、細胞のヒアルロン酸(以下、HA)産生を促進することや、スペルミジン※2 産生を促進し、紫外線などの酸化ダメージから細胞を保護する効果があることを発見しました(図1)。当社の先行研究において、Mgイオンに肌のバリア回復効果があることは見出していましたが、今回新たに保湿効果と保護効果についてメカニズムとともに明らかにできたことで、Mgイオンに着目したこれまでにないお手入れの可能性を示すことができました。本研究の成果の一部は「日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会」(2020/11/21)、「日本生化学会中部支部例会」(2021/5/22)にて発表し、「International Journal of Molecular Sciences」の2021年12月号※3 に掲載されました。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで研究を進めています。食品など私たちの生活の中にも豊富に存在するミネラルの一種であるMgイオンがもたらす美肌効果を明らかにすることで、肌の内外からお客さまの美しさを引き出す製品やサービスの提供を目指し研究を進めていきます。
※1 体内や食品に多く含まれる、ヒトの健康維持に欠かせないミネラルの一種。体内におけるさまざまな生化学反応(タンパク質合成、筋肉や神経の機能、血糖コントロールや血圧調整など)を制御する、300種類以上の酵素系の補助因子です。
※2 生体内に必要なポリアミンと呼ばれる化合物の一種。多くの細胞の成長や増殖、機能に関わり、抗酸化作用があることも知られています。
※3 Marunaka K et al. (2021) International Journal of Molecular Sciences 23(1): 71(プレスリリース中のグラフの一部は本文献より引用・改変)
[画像1: https://prtimes.jp/i/5794/2189/resize/d5794-2189-f99e665931731559c13c-0.jpg ]
《研究の背景》
当社は20年以上前からミネラルが肌に与える影響について研究を続け、Mgイオンを肌に塗布することでバリア機能が回復することなどを明らかにしてきました。細胞内に多く存在するMgイオンの新たな効果を探索するため、本研究では、一部の皮膚疾患でマグネシウムトランスポーター※4 の関与が報告されていることに着目し、表皮におけるMgイオン及びトランスポーターを介したMgイオン輸送に着目して研究を進めました。
※4 細胞膜に存在し、細胞外から細胞内へMgイオンの取り込みを担うマグネシウム輸送体。
《Mgイオンによるヒアルロン酸産生促進効果》
塩化マグネシウム(MgCl2)を添加した培地で表皮細胞を培養すると、HA合成酵素の発現が上昇し、実際に細胞からのHA産生が促進されることを見出しました。また、マグネシウムトランスポーターが機能しない表皮細胞にMgCl2を添加すると、HA産生は促進されないことがわかりました(図2)。以上より、表皮細胞がマグネシウムトランスポーターを介してMgイオンを細胞内に取り入れることで、HA産生が促進されることが示されました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/5794/2189/resize/d5794-2189-b4ae5a5906c246aaf22c-1.jpg ]
《Mgイオンによるスペルミジン産生促進と細胞保護効果》
Mgイオンが表皮細胞において影響をもたらす物質について、マイクロアレイ※5 等で網羅的に探索したところ、MgCl2を添加するとスペルミジン合成酵素(SRM)の発現が上昇することを発見しました(図3)。続けて、表皮細胞に紫外線照射による刺激や過酸化水素による酸化ダメージを与える試験を行い、MgCl2を添加して培養した細胞では、無添加のコントロール群と比較して、紫外線や過酸化水素による刺激後の細胞生存率が上昇することを確認しました(図4)。つまり、Mgイオンは細胞保護効果を有することがわかりました。
※5 サンプル中の多種類の遺伝子発現変化を網羅的に解析する手法
[画像3: https://prtimes.jp/i/5794/2189/resize/d5794-2189-04129a7c598a818f28e8-2.jpg ]
《今後の展望》
今回、ミネラルの一種であるMgイオンが表皮細胞へ作用することで、肌の水分保持や柔軟性を保つ機能を有するHAの産生を促進すること、さらに、抗酸化等で注目されるポリアミンの一種であるスペルミジンの合成を促進し、UVや酸化ストレスによるダメージを軽減することを見出しました。本研究の成果は広く当社のスキンケアへ応用していきます。また、自然界に広く存在し健康維持にも重要な役割を果たしているミネラルについて、今後も研究を継続し、お客さまの健やかな肌を実現する美のイノベーションにつなげていきます。
R&D理念「DYNAMIC HARMONY」とは
・資生堂、独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」を制定(2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003252&rt_pr=trl16
・「DYNAMIC HARMONY」特設ページ
https://corp.shiseido.com/jp/rd/dynamicharmony/?rt_pr=trl16
▼ ニュースリリース
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003397&rt_pr=trl16
▼ 資生堂 企業情報
https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trl16
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