年齢とともに増える症状や合併症に注意! 遺伝性疾患「神経線維腫症1型」との向き合い方を学ぶ
QLife / 2023年10月13日 16時30分
神経線維腫症1型を正しく理解する
日本には約340種の指定難病があります。そのひとつが約3000人に1人の割合で発症するとされる神経線維腫症1型1)です。原因となる遺伝子の名前からNF1、その遺伝子を発見した人物の名前からレックリングハウゼン病とも呼ばれています。
2023年10月1日、製薬会社のアレクシオンファーマは「⼀歩踏み出すための神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)市民公開講座〜変わりつつある神経線維腫症1型を取り巻く環境〜」を開催しました。
前半では、松尾宗明先生(佐賀大学医学部附属病院小児科)が講演を行い、「神経線維腫症1型は皮膚などに多彩な症状が現れる疾患で、カフェ・オ・レ斑と呼ばれるミルクコーヒー色のシミや、神経線維腫というブツブツした病変が特徴です。両親のどちらかのNF1遺伝子に変異があれば、50%の確率で子どもにも起こる遺伝性疾患です。ただし、患者さんの半数以上は両親に遺伝子異常がなく、NF1遺伝子が偶然変化することで発症します」と解説しました。
症状は個人差が大きく、発達障害が起こることもNF1は症状の個人差が大きい疾患です。小児期の症状は斑点やシミ程度という場合もありますが、側弯症などの骨の異常が現れたり、視神経膠腫(目の神経経路にできる腫瘍)ができたりすることも。視神経膠腫は多くの場合無症状ですが、視力低下につながるケースもあります。
また、松尾先生は「NF1によって自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などの発達障害が起こることもある」と指摘します。外見の変化でないため、周囲が気づきにくいこともあり、本人は努力しているんだけれども学校生活がうまくいかず、どうしたらいいんでしょうか、という親御さんからの相談で発覚することもあるそうです。
小児期から成人期に移行していくなかで、皮膚の神経線維腫など腫瘍性の病変が増えていき、乳がんなどの合併症を引き起こすこともあります。
松尾先生は「成長に伴って新たな症状が出てくる可能性があるため、NF1の患者さんは定期的に医療機関を受診してください。小児期は成長・発達、血圧、側弯、眼の検診、その他の合併症のケアを周囲の大人たちが気を配ることが大切です。成人期は自立的な健康チェック、腫瘍性疾患のリスク管理を行いましょう」と長期的な管理の必要性を強調します。
遺伝性疾患と家族の向き合い方後半は「(疾患に対する)家族の向き合い方」をテーマに、患者さん・ご家族も交えたパネルディスカッションが行われました。
子どもに疾患が遺伝したことに対し、親が罪悪感を持つケースがあります。ただ時代とともに、人々の考え方も変化してきています。
その一例として、登壇した患者さんから「私は小さいころ、(患者である)父から疾患について何も説明されず、苦しかった経験がありました。そして、自分が大人になって子どもを授かったとき、父から『ごめんね』と言われました。父には罪悪感があったのかもしれませんが、『おめでとう』と言ってほしかった。遺伝性疾患は父が悪いわけではありません。疾患である事実はしっかりと受け止め、正しい情報を伝えることが大切だと思っています。自分の子どもにもカフェ・オ・レ斑はありますが、今は元気にしています。母親になった現在、私は子どもに病気のことをしっかりと伝えたい」というお話がありました。
また、もう一人の登壇した患者さんの場合、娘さんが成人後、いっしょに医療機関を受診した際に病気の診断が確定しました。娘さんからは「いずれ疾患がわかるなら、大人になって(遅くなって)から知れてよかった」と感謝されたそうです。
神経線維腫症1型は外見に特徴的な症状があり、子どもに遺伝した場合、いつどのように伝えるかは、難しい問題です。正しい情報を誤解のないように伝えることが重要です。もし、病気の伝え方で悩んでいることがあれば、主治医に相談してみるとよいでしょう。(QLife編集部)
1)難病支援センター:神経線維腫症Ⅰ型(指定難病34)[https://www.nanbyou.or.jp/entry/3991] (2023年10月10日閲覧)
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