PNH成人患者さんに対する初の経口単剤治療としてFDAが「Iptacopan」を承認
QLife / 2024年1月9日 10時40分
既存の抗C5抗体療法を行っても多くの患者さんが輸血に依存
ノバルティスファーマ株式会社は2023年12月25日、米国食品医薬品局(FDA)がIptacopanを、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の成人患者さんに対する初の経口単剤の治療として承認したことを発表しました。
PNHは、希少、慢性かつ重篤な補体介在性血液疾患です。全世界で見るとこの疾患の人は100万人あたり約10~20人と推定されています。どの年齢でも発症する可能性がありますが、多くは30〜40歳で診断されています。造血幹細胞の一部に後天的遺伝子変異があるため、補体系による早期破壊を受けやすい赤血球が産生されます。その結果、血管内溶血や血管外溶血が生じ、貧血、血栓症、その他の消耗性症状が引き起こされます。
また、患者さんの大部分は抗C5抗体(エクリズマブまたはラブリズマブ)による治療にもかかわらず貧血を有しているため輸血に依存しており、抗C5抗体療法では十分に対処できないという重大なアンメットニーズが存在します。
Iptacopanへの切替でヘモグロビン値増加、輸血不要患者は95.2%Iptacopan は、補体第二経路のB因子を標的として阻害する経口薬です。今回の承認は、抗C5抗体療法による前治療にもかかわらず貧血症状(ヘモグロビン値10g/dL未満)が残存し、Iptacopanに切り換えた患者さんを対象とする第3相APPLY-PNH試験に基づいています。同試験では、赤血球輸血なしでのヘモグロビン値の改善と輸血を必要としない患者さんの割合において、抗C5抗体療法を継続した患者さんと比較して優位性を示しました。
具体的には、Iptacopanに切り換えた患者さんは抗C5抗体療法を継続した患者さんと比較して、赤血球輸血を必要とせずに2g/dL以上のヘモグロビン値増加(82.3% vs. 0%)および12g/dL以上のヘモグロビン値(67.7% vs. 0%)を達成しました。また、輸血を必要としない患者さんの割合は、抗C5抗体療法の患者さんで45.7%だったのに対し、抗C5抗体療法からIptacopanに切り換えた患者さんで95.2%だったということです。同承認は、補体阻害薬による治療歴のない患者さんを対象とした第3相APPOINT-PNH試験にも支持されました。
PNHを対象としたIptacopan追加の申請と審査は世界中で進行中APPLY-PNH試験で高頻度(10%以上)に報告された有害反応(AR)は、Iptacopan vs. 抗C5抗体療法の比較で、頭痛(19% vs. 3%)、上咽頭炎(16% vs. 17%)、下痢(15% vs. 6%)、腹痛(15% vs. 3%)、細菌感染(11% vs. 11%)、悪心(10% vs. 3%)、ウイルス感染(10% vs. 31%)でした。APPOINT-PNH試験で最も高頻度に報告されたAR(10%以上)は、頭痛(28%)、ウイルス感染(18%)、上咽頭炎(15%)、皮疹(10%)でした。APPLY-PNH試験では、Iptacopanを投与された2人(3%)で重篤なARが報告されました。内訳は、腎盂腎炎、尿路感染、COVID-19でした。APPOINT-PNH試験では、Iptacopanを投与された2人(5%)で重篤なARが報告されました。内訳は、COVID-19、細菌性肺炎でした。Iptacopanでは、莢膜形成細菌による重篤な感染症に罹患する可能性があり、莢膜形成細菌のワクチン接種を必要とするRisk Evaluation and Mitigation Strategy(REMS)を通じてのみ使用できるということです。
なお、米国ではIptacopanを12月から使用できる予定です。PNHを対象としたIptacopanの追加の当局への申請と審査は、現在も世界中で進行中だとしています。(QLife編集部)
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