「希少遺伝性疾患」を社会全体で正しく知ろう
QLife / 2024年2月22日 13時0分
切れ目のない医療環境と社会保障、そして社会の理解が不可欠
2月末日はRare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、以下RDD)です。希少・難治性疾患患者さんの生活の質の向上を目指して設定されました。
イベントの様子(武田薬品工業提供)
RDDに合わせてさまざまなイベントが行われており、2024年2月8日には製薬会社の武田薬品工業とRDD Japan事務局が「希少遺伝性疾患の理解促進」をテーマにイベントを開催しました。希少遺伝性疾患の課題解決に向け、医師、認定遺伝カウンセラー®、患者家族会代表がそれぞれの立場から講演しました。
柏木明子さん(有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」 代表)は、「個々の疾患は個人差がとても大きいことを知っていただきたい。現在は多くの情報を得られるようになったが、その情報がすべての患者に当てはまるわけではない。インターネットの情報よりも目の前の子どもに目を向け、耳を傾けていただきたい」と思いを語りました。
柏木さん(武田薬品工業提供)
柏木さんのお子さんは、生後5日目に「先天性代謝異常症」のうち「有機酸代謝異常症」の一種である「メチルマロン酸血症」と診断されました。当時、迅速な処置・診断が受けられるケースは非常に珍しかったそうですが、現在は有機酸・脂肪酸代謝異常症25疾患のうち、およそ12疾患が新生児マススクリーニングの対象となっており、早期の治療開始が可能となりました。その他、医療費助成事業の法制化など希少遺伝性疾患を取り巻く医療環境や制度は改善されつつあります。これを受けて柏木さんは「私の子どもが生まれた二十数年前と比べて多くの子どもたちの命が助かり、大人になれる時代になった」と話しました。
しかし、まだ課題が残っています。柏木さんは「社会生活を送るうえで理不尽や無理解に悩むこともある。発症を予防しながら社会生活を送るには、切れ目のない医療環境と社会保障に加え、社会の理解が不可欠」と、社会全体で希少遺伝性疾患についての理解を促進していくことの重要性を訴えました。
診断・治療や支援、疾患啓発を通じて子どもたちを見守り、成長させていくイベントでは、村山圭先生(順天堂大学大学院医学研究科難治性疾患診断・治療学講座教授)も登壇しました。
村山先生(武田薬品工業提供)
順天堂大学では、遺伝学的検査の保険収載を受けて2023年11月から遺伝学的検査を開始しています。村山先生は「検査の迅速性が大幅に増し、早期の治療介入が可能になるなど、早期診断・早期治療が行える環境になってきている」と変化を明らかにしました。
拡大新生児スクリーニングにも触れ、「対象は20疾患と定められているものの、治療法が発展すれば対象疾患は拡大する」と述べました。一方で、拡大新生児スクリーニングには、すべての地域でできるわけではない、有効な治療法のない病型もあるといった課題もあります。村山先生は「課題は多いものの、やってみないことには何も見えてこない。子どもたちを見守って成長させていくためにも、遺伝性疾患の診断・治療や支援、疾患啓発に取り組み、未来に光を当て続けたい」と思いを語りました。
遺伝カウンセリングを通じ、希少遺伝性疾患を持つ方の人生を一緒に考える皆さんは「遺伝カウンセリング」を知っていますか? 遺伝に関する悩みや不安を持つ方々が気軽に相談できる医療サービスのことです。イベントでは、認定遺伝カウンセラー®の武田恵利さん(名古屋市立大学大学院医学研究科特任助教)が遺伝カウンセリングの様子や課題について講演しました。
武田さん(武田薬品工業提供)
遺伝カウンセリングでは、正確な医学的情報をわかりやすく教えてもらえるだけでなく、相談者は心理面や社会面を含め継続的にサポートを受けることができます。しかし、その認知度は高くないのが現状です。「希少遺伝性疾患の方には気軽に話ができる場所だと知っていただきたい。医療従事者に対しても、院内勉強会などの場を利用して認知向上に努めたい」と武田さんは述べました。
また、オンライン遺伝カウンセリングの普及などアクセス向上に努めること、専門とする人材の確保と質の担保を図ることの重要性を強調し、「当事者のこれからの人生を一緒に考えていくお手伝いをさせていただければ」と呼びかけました。
医療環境や制度の変化により、希少遺伝性疾患を持つ多くの子どもたちの命が救える時代になりました。疾患を持つ子どもたちが社会生活を送っていくためにも、次は社会が疾患について正しく理解することが求められています。QLifeでは「遺伝性疾患プラス」で専門医インタビューや生活のヒントなどの情報を掲載しています。遺伝性疾患への正しい理解のため、ぜひアクセスしてみてください。(QLife編集部)関連リンク
Rare Disease Day in Japan 2024 有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」 株式会社QLife 遺伝性疾患プラス外部リンク
この記事に関連するニュース
-
医師も早合点「認知症は悪化していく」は間違い 治せる認知症だってあることを知っておこう
東洋経済オンライン / 2025年1月21日 7時0分
-
【AMR臨床リファレンスセンター】薬剤耐性と急性中耳炎医師と患者のコミュニケーションが重要
PR TIMES / 2025年1月17日 16時45分
-
株式会社ジェクスヴァルとの資本業務提携について
PR TIMES / 2025年1月16日 17時45分
-
人間が「工夫すればするほど増える」アレルギー 残念ながら現代社会では避けられない疾患
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 8時1分
-
エクスメディオ、最高医療責任者(CMO)に飯塚聡介医師・医学博士が就任
PR TIMES / 2025年1月6日 16時45分
ランキング
-
1「カキ」にあたる人・あたらない人、何がどう違う?→実は「あたりやすい人」には特徴があった【医師解説】
オトナンサー / 2025年1月27日 7時10分
-
256歳・年収600万円男性「月30GBもスマホのデータ通信が使えてかなりお得感がある」買ってよかった株主優待銘柄とは?
オールアバウト / 2025年1月26日 12時20分
-
3【話題】新品で買った服、着る前に「洗濯」する? SNS「汚い気がする」相次ぐも「なんで洗うの?」「潔癖すぎ」の声も
オトナンサー / 2025年1月26日 22時10分
-
4お金でも名声でもない…ハーバード大教授の75年間の追跡調査で分かった「幸せな人生」に欠かせない重要要素
プレジデントオンライン / 2025年1月27日 8時15分
-
5「無印で買ってよかったアイテム」3選 こたつは今冬シーズンで最もいい買い物でした
Fav-Log by ITmedia / 2025年1月26日 18時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください