【NBA Rakuten解説者インタビュー】宮田知己さん 「NBAの“常識を超えた部分”を味わってほしい」
NBA Rakuten / 2024年11月6日 9時0分
河村勇輝や八村塁についてもコメント
2024-25シーズンの開幕を記念して、「NBA Rakuten」の解説でもお馴染みの宮田知己さんにインタビュー。宮田さんが注目するチームや選手、河村勇輝と八村塁について語ってもらった。※インタビューは11月1日の解説後に実施。
河村選手の謙虚な一面からは学ぶことがたくさんある
――メンフィス・グリズリーズでNBAデビューを果たした河村勇輝選手について、現時点での印象を教えてください。
宮田:アシストは間違いなくNBAでも武器になっています。ただプレシーズンではいいパスが通っていたのにレギュラーシーズンでそうしたシーンが減っているのは、まだスコアリング面で相手の脅威になれていないから。「フリーにしてはいけない」と相手からのリスペクトを得ることが大事です。それによってディフェンスを引き寄せ、結果いいパスが出せる。自分のシュート力を見せつけて相手にリスペクトを抱かせるか、ここが今の課題だと思います。
ただ、日本代表やBリーグでプレイしていた時から、河村選手はアシストで注目されると同時に得点も決めていました。プルアップスリーも得意な方です。今は短いプレイタイムで結果を残すという慣れない状況にアジャストしていくことが求められているのでしょうね。
――現役選手では最小の172cm。ディフェンス面は?
宮田:フィジカル面で心配した人もいると思いますが、僕はそんなことはないと考えています。これまでNBAを目指すうえでフィジカルの強化をしてきたでしょうし、今のところ当たり負けしている場面はあまり見受けられないです。もちろんビッグマン相手は別ですが、同じポジション同士で当たり負け、というのは少ないでしょうね。
ただ身長差によるミスマッチを突かれてしまう場面はどうしてもあって。最後シュートチェックに行っても、相手としてはジャンプしてしまえば実質オープンみたいな状況を作れています。なので、オールコートで足を使った守りというのが求められていきそうです。
――代表では河村選手と接する機会もあったと思います。
宮田:代表合宿中、サポートで入っている時も必ず挨拶をしてくれました。彼の方が年下とはいえ代表歴やプロ歴は彼の方が上ですし、とてもリスペクトしています。そんな彼の謙虚な一面からは学ぶことがたくさんあります。
僕が初めてA代表の試合に帯同した時も、試合終了後に僕の所にまで来て挨拶してくれたんです。帯同間もない僕にもわざわざ歩み寄って「ありがとうございました」って。そうした人柄が選手である前に、1人の人間として彼が輝く理由ですよね。
――今はGリーグのキャンプやグリズリーズへの帯同と大変な時期だと思います。
宮田:僕が最近一番好きな言葉である「No Risk, No Story」は、リスクのないものに物語は生まれないというような意味なんですけど、まさに河村選手がそうだなって。Bリーグにいればこの先ずっとプレイタイムが保証されていたと思うんです。それでもリスクを取り、想像できないような世界に飛び込んだ。だからこそ、今こうして新しい方々にNBAやバスケットボールが届いていたり、彼自身の新しい人生の歩みがあったり、そして僕らも彼の挑戦を楽しませてもらっている。これらは彼がリスクを取ったからこそ生まれた物語。想像もできないような困難とか苦しさの中で仕事をするのは本当に大変なことですが、それすら楽しめているんじゃないですかね。
八村選手は昨季からプレイの質が上がっている
――宮田さんも通われたゴンザガ大学出身の八村塁選手(ロサンゼルス・レイカーズ)はいかがでしょうか?
宮田:まだシーズンは始まったばかりですが(注:インタビュー時レイカーズは5試合を消化)、ここまでは文句なしの大活躍ですね。いかにこのシーズンにかけていたのかというのが伝わるようでした。レイカーズはヘッドコーチが変わりましたけど、塁さんのプレイスタイルは大きく変わってないです。ただ、これまで通りペイント内でのフィジカルな攻撃やミッドレンジや3ポイントが見られるなか、その質が1、2段階アップしているなと感じています。コンテストされた状態でのシュートが、昨季は49/115、42.6%だったんですね。それが今日時点では、まだ9本しか打っていないとはいえ6本決めています。もちろんデータとしては少ないですが、開幕からタフな状況でもシュート決めきれているのは進化している証拠と思っています。
それに3ポイントのショットセレクションがいいですよね。昨季は98/232で42.2%でした。そのうちプルアップ(ドリブル)から打ったのはわずか4本。つまり、ほぼすべてリズム良くパスを受けた後のシュートのみ選択しています。一般的にはその方が確率はいいとされています。ただ今はコンテストされても打って決めているし、1対1を仕掛けたりパスを返したりといい判断ができている。そういうクレバーさも、JJ・レディックHC(ヘッドコーチ)にとって重要な戦力になっているんじゃないでしょうか。
――今季注目しているチームは?
宮田:ウェストはマーベリックス、イーストはセルティックスです。マーベリックスは昨季までルカ・ドンチッチがボールを持った時、早めにダブルチームを仕掛けて他のシューターに3ポイントを打たせるという場面が多かったのですが、今季はクレイ・トンプソンが加わりました。歴代屈指のシューターである彼の存在によって、これまでのようにドンチッチへ簡単にダブルチームへ行けなくなってくると思うんです。もちろんトンプソンの調子次第ではありますが、カイリー・アービングを含めたビッグ3は相手にとって脅威となりそうです。
昨季王者セルティックスは、ここからどんな変化をしていくのかが楽しみです。2018年のウォリアーズ以降、NBAで連覇したチームはいません。さながら教科書のようなバスケットボールを展開しているセルティックスが再び頂点に立つためにどうするのか、という点に注目しています。
ジョー・マズーラHCは本当面白いことを仕掛けてきますからね。いい意味でバグっている (笑)。スペーシングの使い方とか、セルティックスから学ぶことは多いです。そうした点を含めて、何か新しいものを見せてくれるんじゃないかっていう期待があります。
NBAにはセオリーを無視したような領域が絶対ある
――今季の注目選手は?
宮田:レイカーズのダルトン・コネクトです。クレバーなシューターというのがレイカーズには必要になってくると思うので、すごく合っているのかなと。必要な時はちゃんとアタックするし、オフボールでのムービングもいい。ちょっとタフな状況でもちゃんとシュートを決めきることができる。シュータープレイをデザインしやすい選手ですね。
あとはフェニックス・サンズのデビン・ブッカー。いろんな話を聞いたりするなかで、彼のパーソナリティーな部分がすごく好きになりました。自分が光を浴びないところでも努力ができて、必要な時は高得点も奪える。チーム作りをする上では、ああいう選手が1人いたら助かるんじゃないかなと。パスも巧みですが、もっと欲を出してプレイしていいのかなとは思います。
――今季はNBAを初めて見る、または見始めたばかりという方も多いです。宮田さんがお勧めする注目ポイントは?
宮田:河村選手がきっかけの方も多いと思いますが、試合を観ていると気になる選手が出てくると思うので、そういう選手が増えてくると楽しめると思います。また、NBAにはある意味セオリーを無視したような領域が絶対あるので。普通だったらこうだろうというところを完全に度外視したプレイとかがあるんです。そういう「常識を超えた部分」の面白さを味わってほしいですね。
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