「90年代NBAにすごい刺激を受けていた」18歳の神童・河村勇輝インタビュー(前編)
NBA Rakuten / 2020年3月31日 11時0分
今シーズンの日本バスケットボール界を席巻した河村に、Bリーガーとして過ごした約2か月と「よく観ていた」という90年代のNBAについて聞いた。
「やっぱりガードはジョン・ストックトンか、ジェイソン・キッドですかね」
「NBA最強のベスト5を選んで欲しい」という問いに河村勇輝が選んだ選手は、自身が生まれる2001年よりも前からNBAでプレイしていたレジェンドたち。今春、大学へ進学する18歳とは思えない回答である。河村にとって、90年代のNBAはそれほど特別な存在だったのだ。
福岡第一高校ではインターハイとウインターカップを制覇し、今年1月末からは特別指定選手として三遠ネオフェニックスに入団。史上最年少となる18歳8か月23日でBリーグ(B1)デビューを果たすと、多くのバスケットボールファンを虜にした。4月からは東海大学に戦いの場を移す“神童”が、Bリーガーとして過ごした2か月を振り返るとともに、NBAの魅力を語った。
――三遠に入団してから2か月。実際にプレイしてみて、プロ入り前の印象と違った点などはありましたか?
河村:想像通りだったかなっていうのはありますね。天皇杯でも2年生と3年生の時にプロのチームと対戦していたので、どれくらいの強度なのかとかは想像できていました。練習とかは分かりませんでしたけど、基本は試合なので。そういうこともあって、プロのレベルにギャップは感じなかったですね。
――富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)や田臥勇太選手(宇都宮ブレックス)など、以前から河村選手がすごいと思っていた選手以外に、「ノーマークだったけどこの選手はすごい」と思った選手はいましたか?
河村:富樫さんとかは想像通りすごいなって思ったんですけど、齋藤拓実選手(滋賀レイクスターズ)ですね。どんな選手かあまり知らなかったんですが、実際に試合で戦ってみて素晴らしいポイントガードだって思いましたね。
――具体的にはどういった面がすごいと感じましたか?
河村:タフショットをほとんど打たないところです。効率の良いシュートを選択して、センターが出てきたらそれに上手く対応したりだとか。チームメイトを動かす力、自分で点を取る力、そういったところは対戦してみて素晴らしいなと思いました。
――ここからはNBAについて話を聞かせてください。一番好きな選手はマイケル・ジョーダンと聞いているのですが、リアルタイムで見ていないジョーダンのどういったところが好きなんですか?
河村:マイケル・ジョーダンのヒストリー的なDVDをたくさん観ていたんです。高校や大学の時に「お前はダメだ」って言われていたのに、一生懸命頑張ってあそこまで上り詰めた。ジョーダンだけじゃなく、1990年代のNBAをすごく見ていましたね。1991年から93年、それと96年から98年のブルズの2度のスリーピートは全部観ましたね。
クライド・ドレクスラー(元ポートランド・トレイルブレイザーズ)とか、カール・マローンのユタ・ジャズが2年連続でファイナルで負けたりとか、(1998年の)ジョーダンのラストショットとか、あの年代のバスケットです。あとはペニー・ハーダウェイ(元オーランド・マジックほか)だったり、(トレイシー)マグレディ(元マジックほか)とかも。
――18歳という年齢を考えると意外なセレクトです。90年代のバスケは今と全然違いますよね。
河村:ピック&ロールを一切使わなかったりするのもすごく面白いです。基本、ジョーダンが1対1をやるみたいな。すごい刺激を受けていました。
――小学校の時NBAを毎日見ていたっていうのは本当ですか?
河村:毎日観ていましたね。それこそ擦り切れるほど。田臥選手の能代工業時代のDVDと、NBAのとを交互に観るような感じでした。
――しかしそんなに90年代のNBAを観ていたら、周りの同級生と話が合わなかったんじゃないですか?
河村:合わないです、合わないです。38歳くらいのアシスタントコーチが90年代のNBAを観ていたので、その方と「それあるよなー」とかめちゃくちゃ盛り上がったりしていました。同級生とかは(ステフィン)カリーとかなんですけど、自分はあまりその話についていけなくて。ただ90年代はすごく分かると思います。
河村勇輝:類い稀なスピードと得点力を備えるポイントガード。福岡第一高等学校在籍時にウインターカップで2度、インターハイで1度優勝に導いた。2020年1月20日、特別指定選手としてBリーグ、三遠ネオフェニックスに入団。11試合で平均12.6得点、2.0リバウンド、3.1アシストを記録した。4月から東海大学に進学。山口県出身。2001年5月2日生まれ。172cm・63kg
「自分が高校生じゃなかったら」って考えた時、全然ダメだった
「面白いバスケをしたい」との想いから、J-Willの55番に
――昔のNBAを観る時は、何か自分のプレイの参考にしようとしていたりするんですか?
河村:主にパスですね。マイケル・ジョーダンがビハインドパスとかしているのを見て真似していました。速攻の時に(スコッティ)ピッペンに出すシーンがあったんですけど、あれは鮮明に覚えていますね。自分もやりたいなと思って、実際にやっていました。
――それは何歳ぐらいの頃ですか?
河村:ビハインドパスをちゃんとした強い相手との試合中にやれたのは、小5か小6ぐらいの時。ジョーダンの映像を観たのは小4ぐらいですかね。試合中に完璧にできたのは、小6の夏の県大会です。決勝戦でやったのをはっきりと覚えています。
――それぐらいジョーダンが好きなんですね。
河村:そうですね。とにかくブルズ時代のジョーダンです。あ、そういえばジェイソン・ウィリアムズ(元サクラメント・キングスほか)も観てました。まだ髪がフサフサの頃。中学校の時、背番号で23番を付けるのはさすがに嫌だなと思っていたんですけど、面白いバスケをしたいという想いから、ジェイソン・ウィリアムズの55番にしていました。
(後編に続く)
※写真提供(河村選手):三遠ネオフェニックス
――河村選手がBリーグでの1年目を自己採点するとしたら何点をつけますか?
河村:低すぎるのはおかしいと思うので、2、30点ぐらいじゃないですかね。
――いやいや、低いですよ! 残しているスタッツ(11試合出場で平均12.6点、2.0リバウンド、3.1アシスト)であったり、実際のプレイを見てきた者としては低いなと感じるんですが、どうしてその点数なんですか?
河村:自分が高校生じゃなくて普通の20歳ちょっとのプロ選手だったとして、もし今のプレイをしていたら周りの評価は違っていたと思います。「高校生だから」っていうのが付き物になっているので。高校生だから良いプレイをした時はより評価されるだろうし、悪いプレイをしても「まだ高校生だから(しょうがない)」ってなっていると思うんです。自分的にはそれはちょっと違うかなと。
立場的に高校生なので仕方のないことであると思うんですけど、「もし自分が高校生じゃなかったら」って考えた時、これまでのスタッツであったり、チームを勝たせられなかったことは良い出来だったのかと聞かれると、少し違うかなと思ったので。チームを勝たせられなかったことに関しても、まだまだ全然ダメだったなと。勝ってなんぼの世界なので。
――ポイントガードとしてチームを勝たせなければいけない?
河村:そうですね。
――今回話していてだいぶ大人びているなと感じるんですけど、それはご両親の影響ですか?
河村:親の影響ですね。両親どっちも教員なので、いろいろな子どもを見てきた経験があると思いますし。そんななか、ある意味自分のことも生徒に見立てて上手く育ててきたんじゃないかなと思っています。今自分の根底にあるものは、両親から教わったものがたくさんあります。
――ネオフェニックスの話に戻ります。チームがある豊橋市の印象は?
河村:豊橋の皆さんは温かいなという印象はありますね。ホームであれアウェーであれ、なかなか自分たちが勝てない状況でも多くの方が応援に駆けつけてくださったり、ご飯を食べに行っても「応援してるよ」とか声をかけてくださるので。こういう素晴らしい経験が出来たのも、そういった方々のおかげでもあるので、第三の故郷と言ってもおかしくないんじゃないかなと思います。
三遠ネオフェニックス
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