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コロナショックでNBAは財政破綻するの?【家徳悠介コラムvol.4】

NBA Rakuten / 2020年4月4日 11時49分



世界で猛威を振るうコロナウイルス。NBAに与えるビジネスインパクトはどれほどか


世界中で猛威を振うコロナウイルスは、例にもれずNBAにも大きな影響を及ぼしています。ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ)のコロナ感染発覚から間もなく、リーグはシーズンの無期限中断を決定。リーグ全体の21%に当たる259試合を残した状態でという、異例の事態です。現在は公式戦や練習はおろか、選手やリーグ関係者は皆外出を自粛している状況といいます。

今回のコラムでは、一番大事な健康被害については敢えて触れず、リーグとチームに与えるであろう経済的な影響に的を絞って解説していきます。


コロナショックがNBAに与えた大きすぎる経済的ダメージ


NBAの主要収入源は第1回のコラムでお伝えした通り、①放映権、②スポンサー、③チケッティング、④グッズ他となっています。


そのうち、今回のコロナショックで最も分かりやすくダメージを受けるのが③チケッティング収入です。

同収入は経済紙『Forbes』によると、リーグ全体収入(88億米ドル:約1兆円)の20~25%に当たる約20億ドル(約2,200億)と言われおり、残りの259試合が実施されない場合は、単純計算で約4~5億米ドル(約500~600億円)の損失をリーグ全体で被ることとなります。これはシーズンだけの数値ですから、プレイオフを含めると倍の10億ドル(約1,000億円)程度の損失となるのではないでしょうか。

また、④のグッズ、アリーナ内飲食、駐車代等は試合が開催されないと売り上げが立たないため、こちらも大打撃を受けます。それらがチーム収入のうち4~14%前後を占めると言われていることを鑑みると(注:Team Marketing Report参照)、上記チケッティングと同様の計算式で、約1.5~2億米ドル(約170~220億円)の損失が出ることとなります。もしプレイオフを含めたら、その倍となる4億ドル(約440億円)にも上るのではないでしょうか。

一方、NBAの主要収入源であり、年間30億ドル(約3,300億円)以上が動く放映権、並びにアリーナ命名権に代表されるスポンサー収入は原則複数年契約のため、影響は小さいと思われます。


損害額に大きな影響を与えるフォース・マジュール条項


ただし、今回のコロナウイルスはフォース・マジュール条項(不可抗力条項:今回のコロナのように、暴動、天災等といった予測や制御できない外的自由全般が起きた場合、契約を破棄・一部破棄する権利が与えられる条項)に該当する可能性高く、元の契約文言次第では、放映権、スポンサー収入の両方に大きな影響を与える可能性があります。

特に莫大な放映権を支払うメディア各局としては、購入した試合が実施されないのであれば(契約文言次第も)当然ながらフォース・マジュールを訴えるものと思われます。なお、米国では全TV広告費用の内、83%がNBA等のスポーツ中継に充てられていますから、メディア側も必死に放映権費用の一部払い戻しを求めることが容易に想像できます。

仮に残り試合数に応じた均等割でNBAに負担が強いられた場合、プレイオフも含めると10億ドル以上の金額になる可能性があります。これら全ての損失を計算すると、NBAは今回のコロナショックで約25億ドル(約2,900億円)の損害を今季被るかもしれないのです。

NBAはリーグ、チーム共に比較的財務基盤がしっかりしていることから、当面はこの厳しい状況下でも持ちこたえられるかと思います。ただし、上記放映権がフォース・マジュールにより契約無効となったり、コロナの影響が長引き来季も開幕延期となったりした場合は、各オーナー身売りを考えたりと動きが慌ただしくなってくるかと思われます。


<まとめ>


今回のコロナショックによって、NBAがいかに大きな財政的ダメージを受けるかが分かっていただけたかと思います。

そんな中、経済的なダメージは一切後回しにし、選手やリーグ関係者の健康を第一に考えて迅速にシーズン無期限中断を決めたアダム・シルバー・コミッショナーの決断力は、やはり偉大と言えます。そして、自身を含めNBAのエグゼクティブ100名程の給与を20%削減することを決めたことも、シルバー氏がリーグを第一に考えて活動しているからでしょう。

コロナショックによってしばらくはNBAが観られない日々が続きそうですが、シルバー氏の強いリーダーシップによって益々面白くなったNBAが帰ってくる日を、心待ちにしたいと思います。


家徳悠介:「スポーツはヲタクに変えさせろ」をスローガンに、 ニューヨークをベースにスポーツビジネスコンサル、及びスポーツテクノロジー事業を行う「スポヲタ社」を経営。テクノロジーを活用して、よりスポーツを面白くする事を心掛ける。



世界中で猛威を振うコロナウイルスは、例にもれずNBAにも大きな影響を及ぼしています。ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ)のコロナ感染発覚から間もなく、リーグはシーズンの無期限中断を決定。リーグ全体の21%に当たる259試合を残した状態でという、異例の事態です。現在は公式戦や練習はおろか、選手やリーグ関係者は皆外出を自粛している状況といいます。

今回のコラムでは、一番大事な健康被害については敢えて触れず、リーグとチームに与えるであろう経済的な影響に的を絞って解説していきます。


コロナショックがNBAに与えた大きすぎる経済的ダメージ


NBAの主要収入源は第1回のコラムでお伝えした通り、①放映権、②スポンサー、③チケッティング、④グッズ他となっています。


そのうち、今回のコロナショックで最も分かりやすくダメージを受けるのが③チケッティング収入です。

同収入は経済紙『Forbes』によると、リーグ全体収入(88億米ドル:約1兆円)の20~25%に当たる約20億ドル(約2,200億)と言われおり、残りの259試合が実施されない場合は、単純計算で約4~5億米ドル(約500~600億円)の損失をリーグ全体で被ることとなります。これはシーズンだけの数値ですから、プレイオフを含めると倍の10億ドル(約1,000億円)程度の損失となるのではないでしょうか。

また、④のグッズ、アリーナ内飲食、駐車代等は試合が開催されないと売り上げが立たないため、こちらも大打撃を受けます。それらがチーム収入のうち4~14%前後を占めると言われていることを鑑みると(注:Team Marketing Report参照)、上記チケッティングと同様の計算式で、約1.5~2億米ドル(約170~220億円)の損失が出ることとなります。もしプレイオフを含めたら、その倍となる4億ドル(約440億円)にも上るのではないでしょうか。

一方、NBAの主要収入源であり、年間30億ドル(約3,300億円)以上が動く放映権、並びにアリーナ命名権に代表されるスポンサー収入は原則複数年契約のため、影響は小さいと思われます。


損害額に大きな影響を与えるフォース・マジュール条項


ただし、今回のコロナウイルスはフォース・マジュール条項(不可抗力条項:今回のコロナのように、暴動、天災等といった予測や制御できない外的自由全般が起きた場合、契約を破棄・一部破棄する権利が与えられる条項)に該当する可能性高く、元の契約文言次第では、放映権、スポンサー収入の両方に大きな影響を与える可能性があります。

特に莫大な放映権を支払うメディア各局としては、購入した試合が実施されないのであれば(契約文言次第も)当然ながらフォース・マジュールを訴えるものと思われます。なお、米国では全TV広告費用の内、83%がNBA等のスポーツ中継に充てられていますから、メディア側も必死に放映権費用の一部払い戻しを求めることが容易に想像できます。

仮に残り試合数に応じた均等割でNBAに負担が強いられた場合、プレイオフも含めると10億ドル以上の金額になる可能性があります。これら全ての損失を計算すると、NBAは今回のコロナショックで約25億ドル(約2,900億円)の損害を今季被るかもしれないのです。

NBAはリーグ、チーム共に比較的財務基盤がしっかりしていることから、当面はこの厳しい状況下でも持ちこたえられるかと思います。ただし、上記放映権がフォース・マジュールにより契約無効となったり、コロナの影響が長引き来季も開幕延期となったりした場合は、各オーナー身売りを考えたりと動きが慌ただしくなってくるかと思われます。


シルバー・コミッショナーの決断力が光る


今回のコロナショックによって、NBAがいかに大きな財政的ダメージを受けるかが分かっていただけたかと思います。

そんな中、経済的なダメージは一切後回しにし、選手やリーグ関係者の健康を第一に考えて迅速にシーズン無期限中断を決めたアダム・シルバー・コミッショナーの決断力は、やはり偉大と言えます。そして、自身を含めNBAのエグゼクティブ100名程の給与を20%削減することを決めたことも、シルバー氏がリーグを第一に考えて活動しているからでしょう。

コロナショックによってしばらくはNBAが観られない日々が続きそうですが、シルバー氏の強いリーダーシップによって益々面白くなったNBAが帰ってくる日を、心待ちにしたいと思います。


家徳悠介:「スポーツはヲタクに変えさせろ」をスローガンに、 ニューヨークをベースにスポーツビジネスコンサル、及びスポーツテクノロジー事業を行う「スポヲタ社」を経営。テクノロジーを活用して、よりスポーツを面白くする事を心掛ける。







(C)2020 NBA Entertainment/Getty Images. All Rights Reserved.



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