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シーズン停止中もNBAを楽しもう。トレーディングカード編その2、カードの価値について【大柴壮平コラム vol.28】

NBA Rakuten / 2020年4月15日 12時0分



シーズン停止中もNBAを楽しもう。トレーディングカード編その2、カードの価値について


先週のコラムではトレーディングカードの楽しみ方について書いた。今週は引き続きにゃお君の協力の下、カードの価値をテーマに書いていこうと思う。


高騰を続けるトレーディングカード


トレーディングカードについて、にゃお君には懸念していることがあると言う。それは、カードの販売価格が上がり続けているということである。にゃお君が中学生の頃、1パックは120円程度で購入することができた。それが今では一番安いブランドのカードでも1パック400円するという。この値上がりには、2つ理由があるとにゃお君は言う。

「元々アメリカではトレーディングカードは趣味であると同時に資産であると考えられていました。子供が生まれたときにその時のスター選手のカードを購入して、子供が大きくなったらプレゼントするという文化があるそうです。例えば20年後に子供に渡すとしたら、選手によってはカードの価値が何十倍、何百倍になっていることもあります」


カードメーカーの歴史


にゃお君がトレーディングカードの収集を始めた23年前、NBAを扱うカードメーカーは3社あった。1つはアッパーデック社。マイケル・ジョーダンと独占契約を結んでいるのが強みで、ジョーダンのオート(サイン入りのカード)やジャージー(ジャージーの切れ端が埋め込まれたカード)を当てるにはアッパーデック社のカードを買うしかない。また、ジャージーカードを発明したのもアッパーデック社である。

オートを始めたのがフレアー社で、先週のコラムで書いたにゃお君が初めて当てたブレント・バリーのオートも、フレアー社の「スカイボックス・オート・グラフィックス」というシリーズだった。このフレアー社のもう1つの発明がカードにシリアルナンバーを入れたことで、これがトレーディングカードの価値を爆発的に高めたという。

そしてもう1社がトップス社。オートやジャージーは滅多に当たらないが、その代わり安く楽しめるカードを出していた。写真に重きをおいたデザインが人気で、カードがキラキラと光って見えるリフラクターという仕様を開発したのもトップス社だった。

「その頃は三社三様でしのぎを削っていて、すごく面白い時代だったんですよね」

ところが、2005年にフレアー社が倒産、アッパーデック社に買収される。その後数年はアッパーデックとトップスの2社がNBAカードの販売を行っていたが、2009-10シーズンに牧歌的だったNBAカード界が一変する。ヨーロッパでサッカー選手のステッカーなどを販売していたパニーニ社がアメリカに進出すると、翌2010-11シーズンよりNBAと独占契約を結んだのだ。

パニーニ社の独占契約になって以降、数年は大きな価格帯の変更もなくNBAカードを楽しむことができたが、近年では高額ブランドばかりが売り出され、その割りには同じ写真の使い回しが多いなど、古くからのコレクターの間には不満が溜まっているという。しかし、そこは独占契約の強みで、パニーニ社は強気な姿勢を崩さない。何せNBAのカードを買おうと思ったらパニーニ社のカードを買うしかないのだ。


跳ね上がる価格を前に、グループブレイクが主流に


カードには、複数枚のカードが入ったパック、1〜複数のパックが入ったボックス、複数のボックスが入ったケースという3つの単位が存在する。ボックスに1枚か2枚当たりのパックが入っているので、ボックスを1つ買えば必ず何かしらの当たりカードを引くことができる。また、各ケースに1つか2つの割合で、ケースヒットと呼ばれる大当たりカードが入ったボックスがある。ケースごと購入すれば、その大当たりを必ず引ける計算になる。

「パック買い」から始めたにゃお君だが、「ボックス買い」をしていた時期もあると言う。ボックスを丸々購入すれば、当たりが確実に手に入るので、パックより効率的だと考えたのだ。しかし、初めてボックス買いをした大学4年生当時ボックスの値段は10,000円程度だったが、現在では5万円を超えるブランドも多い。最も高い「フローレス」というブランドは、2019-20シーズンの価格で20万円という値付けだった。これではとても個人でボックスを買うことはできない。

そこで現在は、グループブレイクなる購入方法が盛んだとにゃお君は言う。例えば、20万円のフローレスを開封するとしよう。フローレスには1ボックスに10枚入りのパックが1つ入っているので、まずはフローレス開封に参加したい人を10人集める。1ボックス20万円なので、参加費は1人2万円だ。フローレスは10枚中1、2枚は当たりが出る。カードの配分方法はいくつかあるそうだが、よく見られるのはランダマイザーと呼ばれるツールでカードを選ぶ順番を決める方法で、ランダマイザーで1位が当たれば天国、2位なら当たりを拾える可能性があるが、他は地獄となる。ちなみに海外ではグループブレイクをオーガナイズしてくれるGB屋と呼ばれる業者があるらしい。日本ではカードショップ主催で行われることが多いそうだ。

ネットが普及する以前は、カードコレクターは『ベケット』という専門誌を購入してカードの相場を調べていたが、現在ではeBayの取引価格が参考にされている。


コレクターは何万円、何十万円とかけて当たりを引こうとするわけだが、eBayでの取引価格を聞けば、その話も納得である。例えば、アッパーデック社と独占契約しているためもう出ることのないマイケル・ジョーダンのオートは、数百万円で取引されることも少なくない。現行で当たる可能性がある選手では、ザイオン・ウィリアムソンのカードには百万円以上の値段がつくことがある。トレーディングカードは資産だと考えるコレクターが多いのも納得できる話だ。


にゃお君は、以前のようには友人にカードを勧めることができなくなってしまったと言う。にゃお君が始めた頃は、ドキドキしながらも気軽にパック買いすることができた。それは1パック120円だったからできたことだ。1パック10,000円のカード収集を始めるのは、多くの人にとってハードルが高いだろう。

「カードの価値が上がることはもちろん楽しい部分もありますし、嬉しいことでもあるとは思います。でも、最初から価値のみでカードを見てほしくないんです。本来は価値がある、ないの二元的じゃない楽しみ方ができるはずなのに、もったいないなと思います」

ちなみに、にゃお君いわく、毎年シーズン序盤に出る「フープス」というブランドは、パック買いも楽しめる価格設定になっているとのこと。冒頭で挙げた1パック400円のブランドがこれである。当コラムを読んでトレーディングカードに興味が出た方は、まずは「フープス」のパック買いから始めてみてはいかがだろうか? ただし、底無しのカード沼にハマっても、当コラムは一切責任を負わないのでその点は十分ご注意願いたい。


大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。




こうした考え方がアメリカ国内のみのうちは良かった。しかし、NBA人気が世界的になるにつれて、海外でも趣味と資産を兼ねて多額の「投資」をするコレクターが増え始めたことで、カードの相場にバブルが発生した。オークションでカードの取引額が上がり続けるのを見て、カードメーカーがカードの販売価格自体を上げていった可能性があるとにゃお君は解説する。カードメーカーにしてみれば、高額なカードが当たる可能性があるのだから、値上げしても十分その価値はあるだろうという理屈である(カードメーカーが裏で取引価格を釣り上げ、カードの相場自体を操作しているのではないかという恐ろしい都市伝説もあるとか)。

ところで、読者諸兄はカードメーカーがいくつあるかご存知だろうか? 実はその答えが価格高騰のもう1つの理由と密接に結びついている。






(C)2020 NBA Entertainment/Getty Images. All Rights Reserved.



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