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スター選手を支えるロールプレイヤーに注目。NBAファイナル第5戦、ステップアップするのは誰だ?【大柴壮平コラム vol.54】

NBA Rakuten / 2020年10月9日 16時0分

スター選手の活躍が目立つNBAファイナルだが、ロールプレイヤーの貢献も見逃せない。両チームの”名脇役たち”に迫る


日本時間10月7日に行われたNBAファイナル第4戦は、激戦の末にロサンゼルス・レイカーズが勝利。3勝1敗で優勝に王手をかけた。ファイナルに限らずプレイオフに入ると、話題はどうしてもスーパースターの出来、そしてヘッドコーチによるアジャストメントに集中しがちだ。第4戦では、前の試合で大活躍したジミー・バトラーのマークにアンソニー・デイビスをつけた フランク・ボーゲルHCの采配 (試合後のインタビューによれば、実際にはデイビスが自らバトラーのディフェンスを志願したそう)と、マイアミ・ヒートのスター選手バム・アデバヨの復帰がニュースを賑わせた。しかし、その陰で頑張るロールプレイヤーの健闘が勝敗を左右する重要な要素となっているのも見逃せない。今週は、そんな彼らのここまでの戦いぶりに注目した。


レブロンとADを支えるレイカーズのロールプレイヤーたち


レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの2大エースが牽引するレイカーズだが、大事な試合では必ずロールプレイヤーの誰かがステップアップしている。先日の第4戦ではケンテイビアス・コルドウェル・ポープが15点、5アシストと躍動した。それまでの3試合は得意なはずの3ポイントが25%、フィールドゴール全体でも28%と苦戦していたが、この一戦では3ポイント3本を含むフィールドゴール6本を成功、全体で50%という高確率を記録。しかも試合残り3分でリードを2ポゼッションに広げる3ポイントを、そして残り2分でさらに3ポゼッションに広げるレイアップを決めるなど勝利に大きく貢献した。

過去3戦の不調から脱し、第4戦でキャリア最高のハイライトを作ったKCPとは対照的に、毎試合地味ながらチームに欠かせない活躍をしているのがアレックス・カルーソだ。プレイオフが始まる前は、プレイメーカー不足のレイカーズで控えのガードがカルーソというのは心細いと私は思っていた。懸念通りオフェンスでの仕事は限定的だが、その分カルーソはディフェンスで素晴らしい仕事をしている。ガベージタイムの数字を除いたスタッツを提供するサイト『Cleaning The Glass』によれば、プレイオフ期間中カルーソが出ている時間帯はレイカーズのディフェンシブ・レーティングが4.0点下がるという。ディフェンス重視の現在のレイカーズにとって、カルーソは今や外すことのできない歯車になったと言えるだろう。



カルーソと同じく、ベンチからの出場ながら欠かせない戦力となっているのがマーキーフ・モリスだ。ヒューストン・ロケッツとのカンファレンス準決勝、ロケッツのスモールラインナップに対抗するため試合の大半でデイビスをセンターに置くことになったレイカーズは、パワーフォワードのポジションにモリスを指名した。デイビス獲得時、大量の指名権に加えブランドン・イングラムやロンゾ・ボールといった有望な若手を放出したレイカーズだったが、カイル・クーズマだけは手放さなかった。そんな球団期待のクーズマをさしおいての起用に応えたモリスは、同シリーズで18本中9本の3ポイントを沈めて見せた。その後はスモールラインナップの4番として定位置を確保し、ファイナル4試合ですでに11本の3ポイントを沈めている。これは両チームを合わせても最多である。


「プレイオフ・ロンド」はレブロンにも忌憚なく直言


上に挙げた3選手の他にも、エゴを捨ててチームのために体を張るドワイト・ハワードや股関節の怪我を押して出場を続けているダニー・グリーンなど、ベンチ層の薄さを不安視されていたことを見返すようにレイカーズのロールプレイヤーは奮闘している。その中にあっても、一際目立つのがラジョン・ロンドの存在感だ。2年前、ロンドはインタビューで「プレイオフ・ロンド」というニックネームが嫌いだと語った。決してプレイオフだから数字が残るのではなく、コーチが信頼して出番を与えてくれればいつでも結果は出せるというのが彼の主張だ。しかし、34歳になるかつてのオールスターは、今シーズン平均7.1点、5.0アシスト、3.0リバウンドだった主要スタッツを、プレイオフで平均8.6点、6.9アシスト、4.3リバウンドに上げ、苦手とされる3ポイントも39.5%という高確率で決めている。本人が好むと好まざるとにかかわらず、ファンはこれからも敬意をもって彼を「プレイオフ・ロンド」と呼ぶだろう。

ロンドがレイカーズにもたらしているポジティブな影響は、プレイ面にとどまらない。ロンドはおそらくロスター内で唯一レブロンとデイビスという2大エースに物を申すことができる選手だ。そもそも2018-19シーズンにレイカーズと1年契約を終えたロンドに、再びチームに戻ってくるよう説得したのはデイビスだったという。その理由について、ロンドと自身のコートでの相性がいいことに加え、ロンドはデイビスが最高の選手になれると常にプレッシャーをかけ続けてくれる存在だからだと彼は語っている。デンバー・ナゲッツとのカンファレンス決勝第2戦でデイビスがブザービーターを決めたことは記憶に新しいが、あの直前ロンドはデイビスに「(一つ前のポゼッションでニコラ・ヨキッチに)やられたのは仕方ない。今度はお前がやり返す番だ」と発破をかけたそう。ロンドの鼓舞が、あの奇跡のような逆転シュートにつながったのだ。



そして、ロンドはもう1人のエース、レブロンにも忌憚なく自分の意見をぶつけている。特に昨シーズンは今シーズンよりロスターが若かったこともあり、ロンドはレブロンが他の選手に与える影響が大きいことを強く感じていたという。仮に若い選手が連続でミスを犯したときに、レブロンがしかめっ面をしていたら彼らは萎縮してしまう。しかし、レブロンが一言ポジティブなことを言えば若い選手はすぐに立ち直ることができる。そこで今シーズンの初めにロンドはレブロンに向かって、表情や身振りに注意するよう呼びかけたそうだ。かつて4度オールスターに輝き、ボストン・セルティックス時代はレブロンの前に幾度となく立ちはだかったことのあるロンドでなければ、キングに直言することはできなかっただろう。昨シーズンの崩壊を思えば、ロンドの言葉がレイカーズの結束を固めるのに役立ったことは想像に難くない。オフコートでの隠れたファインプレイである。


ヒート勝利にはオリニクの活躍が不可欠


一方のマイアミ・ヒートはチーム・バスケットボールが売りで、レイカーズよりスター選手とロールプレイヤーの境界線が曖昧だ。ゴラン・ドラギッチ、バム・アデバヨ、ジミー・バトラーが主軸なのは言うまでもないが、タイラー・ヒーロー、ダンカン・ロビンソン、ジェイ・クラウダーといった選手がその3人より活躍する日も少なくない。ただ1人異色なのは、バブル入り後にチャンスを掴み、ファイナルで輝いているケリー・オリニクだ。

オリニクは7フッターながら3ポイントが得意で、ドライブからキックアウトまでこなせるオフェンスだけならリーグ屈指の技術を持つビッグマンだ。ディフェンスが不得手とされているが、レーティング上はそこまで悪くない。ただし、アデバヨと比べるとスクリーンやリバウンド、ブロックといった基本的なビッグマンとしての仕事の質が格段に低いので使い方が難しい。そんなオリニクの出番が第2、3戦で訪れた。アデバヨの負傷によるスクランブル発進だったが、第2戦では24点、第3戦では17点と結果を残した。特に第3戦でバトラーが記録した40点、13アシスト、11リバウンドのトリプルダブルは、オリニクの活躍無しにはありえなかった。オリニクが広げたスペースを前にバトラーが思う存分暴れたのだ。その証拠にバトラーは40点取っているが、3ポイントのアテンプトは0本。3ポイントなしの40得点超えは、2002年にシャキール・オニールが記録して以来だそうだ。



残念ながらアデバヨの復帰戦となった第4戦のオリニクは、12分の出場で4点、2リバウンド、3ファウルと冴えないスタッツに終わっている。アデバヨの調子が良さそうなのはヒートにとっては好材料だが、勝利を掴むためにはアデバヨがベンチにいる時間帯の質を高める必要がある。オリニクは出場時間の多寡に関係なく自分らしいプレイを披露できるだろうか。短時間で結果を出すのはどの競技でも難しいが、オリニクがその任務を全うできれば劣勢のヒートにも勝機が出てくるだろう。

ここまでの4試合、両チームの主役は十分な活躍を見せている。そして両ヘッドコーチの采配も素晴らしい。次の試合も接戦になるようなら、ロールプレイヤーが勝負を決める重要な役割を演じる可能性は十分にある。第3戦のオリニクにしても、第4戦のKCPにしてもそうだが、普段はチームを脇から支える選手がスポットライトを奪う瞬間を目撃するのは痛快だ。明日の第5戦も思わぬ伏兵の活躍を期待したい。


大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。




(C)2020 NBA Entertainment/Getty Images. All Rights Reserved.

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