「エディーさんも変わっている部分はあると思いたい」堀江翔太とリーチ マイケルが語る、新生ラグビー日本代表に抱く期待
REAL SPORTS / 2024年5月15日 2時42分
6月22日、東京・国立競技場でイングランド代表の新体制初戦に挑むラグビー日本代表。エディー・ジョーンズ新ヘッドコーチは「超速ラグビー」というコンセプトを打ち出し、徐々に2月には一部の候補選手だけで合宿を実施。それを前後して各所を視察し、5月下旬にも一部のプレーヤーを集めてキャンプを行う予定だ。昨年、ジェイミー・ジョセフ体制で挑んだラグビーワールドカップ・フランス大会を1次リーグ敗退に終え、結果と若返りの両面が求められている現在の日本代表について、通算4回のワールドカップを経験した堀江翔太とリーチ マイケルはどのように見据えているのだろう。
(文=向風見也、写真=ロイター/アフロ)
「僕は、蚊帳の外ですよ」と笑う経験豊富な38歳
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが約9年ぶりに再登板したラグビー日本代表は、6月22日にイングランド代表と現体制下初の実戦をおこなう。
それに先立ち2月には、福岡で「トレーニングスコッド福岡合宿」がおこなわれた。ちょうど国際試合が予定されていた国内リーグワンの前年度4強勢を除くチームから人員が集まり、ジョーンズの「超速ラグビー」というコンセプトをミーティングと実戦練習で把握した。
5月20日からおこなうのは「15 人制男子トレーニングスコッド菅平合宿」。18日以降に開催されるリーグワンのプレーオフ、入替戦に出るチーム以外からメンバーがリストアップされ、長野・菅平で汗を流す。
「もちろん、僕が目をかけている選手は頑張ってほしいですし、外から日本代表は応援しますよ」
こうエールを送るのは堀江翔太。日本代表として2011年のニュージーランド大会から通算4回のワールドカップに出場した38歳。2012年からの4年間は、第一次ジョーンズ政権を経験している。
スクラム最前列中央のフッカーという位置を担い、ラン、パス、キックを操る万能アスリート。いま実施中の国内リーグワンを最後に引退するとあり、これからの日本代表との関係性については「僕は、蚊帳の外ですよ」と笑う。
「バランスよく人を配置できるようなチームになる」
代表経験者とのミーティングのため、堀江の所属する埼玉パナソニックワイルドナイツの拠点の近くにジョーンズが訪れていたらしいという話を「噂」で聞く程度。そのミーティングもクラブハウスでおこなわれたわけではなく、堀江は対面しなかったという。ファンにお馴染みの大阪弁でこう展望する。
「何やかんや言うて、エディーさんは若手を育てて日本ラグビーの底上げを……と考えている。バランスよく人を配置できるようなチームになるんじゃないですか」
2月の福岡合宿では、参加した34人中9人が大学生。5月の菅平合宿にも学生プレーヤーを含め33人中29人をワールドカップ未経験者とした。
近年、代表常連組が高齢化の向きにあったのを鑑み、ジョーンズが若返りを検討しているのが伺える。
かたや堀江を慕う松田力也は、これまで2度のワールドカップに出てきた正司令塔候補。現在30歳と円熟の域に突入する。昨秋、初めてとなる世界の大舞台で躍動した齋藤直人は、26歳のスクラムハーフだ。つまり先述の「バランス」は、メンバーの年齢構成を指す。
これからの日本代表を引っ張りそうな一人で、堀江が「すごいですよね」と感嘆するのはリーチ マイケルだ。15歳でニュージーランドから来日して現在35歳。堀江と同じく4つのワールドカップに挑んできた。
2015年にジョーンズとともに臨んだイングランド大会では、リーチが主将、堀江が副将として南アフリカ代表などから歴史的3勝。その後は2019年の日本大会での初の8強入り、2023年のフランス大会参戦という道を、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチとともに歩んできた。
堀江がここで国際舞台と距離を置くのに対し、19年も主将を務めたリーチは新たなジャパンでも請われる。2月のキャンプへ参加し、京都産業大学1年の石橋チューカの個人練習にも付き合っていた。堀江はしみじみと言う。
「JK(2011年のニュージーランド大会で指揮を執ったジョン・カーワン)、エディー、ジェイミー、またエディー。いろいろ、大変そうやなぁ……」
「エディーさんも変わっている部分はあると思いたいですけど…」
古今東西、シニア層に求められるのはプレーだけではない。グラウンド内外で首脳陣の意を汲んだ言動を心がけたり、ボスの意向を周りにかみ砕いて伝えたり。これからの日本代表でその役目を引き受けるのは、リーチに他ならないだろう。今後の代表活動では、キャリア組に数名の辞退者が発生する可能性もあるのでなおさらだ。
振り返ればイングランド大会までのジョーンズは、時に強い口調で選手、スタッフを叱咤激励してきた。この人の苛烈なキャラクターは、2016年以降にイングランド代表、オーストラリア代表を率いている間も世界中に伝えられる。
今度の日本代表が本格的に動き出す前の現段階でも、ジョーンズのもとにつくスタッフはキャンプ中のルール作り、視察のサポートなどで早朝から働いている。リーチが「いまのところ、怒りはないです」と明かすプレーヤーとのコミュニケーションについても、堀江は「実際に入ってみたら(動きが本格化したら)、どうなるか……」と見ていた。
「エディーさんも変わっている部分はあると思いたいですけど、これは実際にやってみないとわからないですからね」
もっとも、「エディーさんを知らん奴ら(若者)からしたら、まあ、新鮮な部分もあるんじゃないですか」と堀江。興味深いのは、リーチもまた「新鮮」な気持ちで第2次ジョーンズ政権と向き合いそうなことだ。
目下、各クラブを見回るジョーンズとよく「スターバックスで会ったり、電話したり、メールしたり」して若手の特徴、性格について情報を伝えながらも、最大の関心事はフィールドの中の自分にあると強調する。
これまでフォワード第3列のフランカー、ナンバーエイトを主戦場としてきたなか、これからの代表で2列目のロックを任されそうなのだ。
ベテランの域に入ってからの新ポジション挑戦に「……やるしかないですね」。何よりジョーンズの率いるチームは総じて走り勝とうとするだけに、「とにかく、フィットネスだけは妥協したくない」と息巻く。目下、参戦する国内のリーグワンでは一時負傷離脱するも、バイクトレーニングで心拍数を上げることは欠かさなかった。
「(代表で)練習についていかないと。いや、ついていくだけじゃなくて引っ張っていかないといけないから。フィットネスだけは負けたくない」
リーチが長らく一線級で生き残っているわけの一つは、向上心、負けん気が高次で保たれていることだ。
ちなみに、まもなくスパイクを脱ぐ堀江も、同僚のラクラン・ボーシェーに得意技のジャッカルについて教わりながら「最後でも、成長できたら」と語っていた。2人がにらむのは、5月18日からおこわれるリーグワンのプレーオフだ。
<了>
9年ぶりエディー・ジョーンズ体制のラグビー日本代表。「若い選手達を発掘しないといけない」現状と未来図
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