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イングランド5連覇女王・チェルシーで浜野まいかが描く成長曲線「無意識のゾーンからプレーが出てくるように」

REAL SPORTS / 2024年5月31日 2時30分

チェルシーFCウィメンでプレーするなでしこジャパンの浜野まいかは、今季、イングランド・女子スーパーリーグ(WSL)で5連覇に貢献。3大陸で得点王になったサム・カーとの2ショット動画や、オフの素顔がクラブの公式アカウントにアップされるなど、すっかりクラブに溶け込んで愛されている様子が伝わってくる。「日本をサッカー大国にしたい」と語る20歳は、サッカーの本場イングランドの女子サッカー熱をどのように受け止めたのか。常勝軍団での刺激とともに、なでしこジャパンでメンバー入りを目指す今夏のパリ五輪に向けた豊富を語ってもらった。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=ロイター/アフロ)

世界トップクラスから受ける刺激「毎回の練習で違う選手から学べる」

――チェルシーは14カ国から代表選手が集まる多国籍のチームですが、練習から独特の緊張感みたいなものはありましたか?

浜野:最初にチームに加わった時に、もう誰が誰か分からなくて、オーストラリア代表のサム・カーとか、キャプテンのミリー・ブライト(イングランド代表)も、代表選手ということだけで、名前もわからなかったんです。今思うと本当に失礼なんですけど(笑)、だからこそ、そこまで緊張せずに入っていけたのはあると思います(苦笑)。みんな、練習から勝負にこだわりますし、人が変わったみたいになります。ミニゲームとかだったら盛り上がって笑顔も出るけど、最初のパスアンドコントロールの練習とか、ポジションに立って流れを作る練習でも、タッチの長さについて細かく言われたりもします。

――オンとオフがはっきりしているんですね。最終ラインはミリー・ブライト選手を筆頭に、フィジカルやスピードのある選手も多いですが、どんなことが刺激になっていますか?

浜野:全員から学ばせてもらっています。練習ではフォワードや10番のポジションをやらせてもらったことがほとんどなくて、ほとんど左右のサイドハーフかサイドバックでした。監督のエマ(・ヘイズ)からは「マイカは中央で頭を使うプレーはうまいけど、若いうちに自分で仕掛けるプレーを学んだ方がいいから、いろんなポジションでプレーして、いろんな選手から学んだ方がいい」と言われて。練習はポジションごとに個別で分かれるので、毎回の練習で違う選手から学んでいるので、本当にありがたい環境だと思います。

多国籍に通じる「MAIKA」の魅力とは?

――U-20ワールドカップでゴールデンボールを受賞した時に、他国の選手が浜野選手を祝福していたのが印象的でした。チェルシーでもXの公式アカウントでオフの素顔がよく取り上げられるなど、すっかりチームに溶け込んでいる様子が伝わってきますが、多国籍に通じる自分の魅力はどんなところだと思いますか?

浜野:U-20ワールドカップの時は、なんであんなに他の国の選手が祝福してくれるのか、自分でも理由はわからなかったですが、うれしかったです。中学生の時は本当にシャイでしたし、今も自分から周りを巻き込むようなタイプではないのですが、サッカーを楽しむことは昔から変わらず大切にしてきたので、その姿を見て共感してもらえる部分があるならうれしいです。

――チェルシーでは、プライベートで仲が良い選手はいるんですか?

浜野:フォワードのカタリナ(・マカリオ/アメリカ代表)の家にしょっちゅう泊まりに行っています。あと、イングランド代表のニーアム(・チャールズ/イングランド代表)も仲が良くて、その3人でいつもご飯を食べています。

――通訳なしで、英語でのコミュニケーションができているんですね。

浜野:昨年、スウェーデンでプレーしていた頃から、チェルシーがオーガナイズしてくれている英語のレッスンを毎日受けているので、難しさはありますが、チームメートの言っていることはわかるようになってきて、コミュニケーションは取れるようになってきました。

3大陸で得点王になったストライカーから学んだこと

――チェルシーのSNSで、オーストラリア代表のサム・カー選手に前髪を切ってもらうシーンが日本でちょっとした話題になりました。彼女は3大陸で得点王になった唯一の女子選手ですが、練習ではどんな学びがありますか?

浜野:サムがゴールを決める時って、例えば見ている方が「シュートだ!」と思うタイミングで打つんじゃなくて、「シュートだ!」と思った瞬間にはもう打っているんです。普通は「コースが空いている」と思って打つと思うんですが、「空いている」と思った瞬間には足を振っているから入るんだと思います。本能的に、思いついたプレーを全部パッパッパってやっているように見えます。でも、その前に考えて判断しているからこそできることだと思うんですけどね。

――浜野選手はINAC神戸レオネッサ時代に「感覚的にプレーしている部分もある」という話をしていましたが、駆け引きや判断において、イングランドでどんな部分が変化しましたか?

浜野:考えることなしにサッカーはできないと思うし、本当に考えることが一番大切だと今は思っています。ただ、自分の場合、考えすぎると良いプレーができなくなることが多いです。一日一日のトレーニングを試合みたいに大切にしているのですが、練習でも試合でも考えすぎてしまって。だから今は、練習で考える時はとことん考えて、そのプレーを無意識のゾーンに入るまで詰め込んで、試合では無意識のゾーンからプレーが勝手に出てくるようにしています。

――それもかなり大きな変化ですね。

浜野:中学校の時は、守備もただボールを追っていただけだし、本当に感覚だけでプレーしていたと思いますし、本当に何考えてサッカーしていたかわからないです(笑)。そう考えると、かなり変わったと思います。

ワールドカップで味わった悔しさと刺激「日本を女子サッカー大国にしたい」

――代表では、昨夏のワールドカップで初戦の前に左肩をケガして、最後のスウェーデン戦の1試合の出場にとどまりました。大会を終えて、どんなことが印象に残りました?

浜野:それまで、自分のキャリアの中で大きなケガはほとんどなかったので、本当に悔しかったですね。(ベスト16の)ノルウェー戦では、終盤に交代で呼ばれてタッチラインまで行ったんですけど、結局交代する前に試合が終わってしまったんです。チームとして勝つことが一番だと思っていたし、そのために自分なりにできることを考えていたけど、あの時は「やっと試合に出られる!」と思ったところで終わってしまったから……。日本はベスト8に進みましたが、個人的には悔しさも残りました。

――準々決勝の相手は、当時浜野選手が国内リーグでプレーしていたスウェーデンでしたが、試合は敗れてベスト8で終わりました。実際にピッチに立ってみて、代表への思いは変化しましたか?

浜野:代表で強豪国を倒して「世界一になりたい」という思いが強くなったし、大会の盛り上がりを見て、日本を女子サッカー大国にしたいなと思いました。

――イングランドでは、どんなところで女子サッカーの盛り上がりを感じますか?

浜野:例えば、チェルシーとトッテナムのロンドンダービーなら地下鉄や、街のそこら中にポスターが貼ってあって、男子と同じぐらいとまではいきませんが、女子サッカーの価値が高まって、チームメイトの顔がロンドンの街中を走るバスに大きく載っているんです。日本もそんなふうになれば、もっと女子サッカーの良さをみんなに知ってもらえるんじゃないかと思うんです。

――チェルシーの男子の試合も見に行ったりするんですか?

浜野:はい。この間はFAカップを見に行ったんですが、すごく面白かったです。応援はすごく熱かったですが、それよりもブーイングのすごさが印象に残りました(笑)。

パリ五輪18枠入りへ「代表初得点を決めたい」

――WSLは長谷川唯選手や清水梨紗選手、長野風花選手、林穂之香選手、植木理子選手、宮澤ひなた選手、籾木結花選手、宝田沙織選手などがプレーして日本人選手の評価も高まっていますが、このリーグでプレーすることで、代表にどんなことを還元できると思いますか?

浜野:WEリーグは日本ならではの良さがあるリーグだと思います。INACでプレーしてその魅力を知っているからこそ、イングランドでは強度やスピード感など、自分が学んだことを、代表にもいい形で還元できたらと思っています。

――パリ五輪に向けてメンバー選考も終盤戦に突入しています。5月31日と6月3日にスペインでニュージーランドと対戦しますが、今のなでしこジャパンの強みはどんなことだと思いますか?

浜野:世界一チームワークがあると思っています。ただ、4月のシービリーブスカップでもアメリカとブラジルに勝てなかったし、変わらないといけない部分もあると思います。オリンピックで結果を残すために、今回のニュージーランド戦は、本当に大切な2戦になると思います。

――個人的に残したい結果はありますか?

浜野:まだ代表で得点がないので、初得点を決められたらうれしいですね。

――最後に、パリ五輪に向けての豊富を聞かせてもらえますか?

浜野:自分がやれることは全部やった上で、オリンピックでなでしこジャパンが結果を残すためにメンバーに入りたいと思っていますし、絶対に入るつもりでプレーします。

【前編はこちら】チェルシー・浜野まいかが日本人初のWSL王者に。女子サッカー最高峰の名将が授けた“勝者のメンタリティ”とは?

<了>

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[PROFILE]
浜野まいか(はまの・まいか)
2004年5月9日生まれ、大阪府出身。女子サッカーのイングランド1部(女子スーパーリーグ)・チェルシーFCウィメン所属。セレッソ大阪堺レディース(現・セレッソ大阪ヤンマーレディース)のアカデミーを経て、2021年にINAC神戸レオネッサに史上最年少のプロ契約で移籍。2022年夏のFIFA U-20女子ワールドカップコスタリカ大会で、6試合4得点1アシストを記録し、日本の準優勝に貢献、大会MVPを受賞した。2023年1月、チェルシーと4年半契約を締結。スウェーデン1部のハンマルビーIFにレンタル移籍したが、同年夏のFIFA女子ワールドカップ前に左肩を負傷。9月にチェルシーに復帰してリハビリを続け、12月にチェルシーでデビューを飾った。シーズンを通して6試合に出場、2ゴールを挙げてWSL5連覇に貢献。動き出しの速さと駆け引きのスキル、シュートセンスを武器に、世界最高峰の舞台で成長を続けている。

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