1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

WEリーグ得点王・清家貴子が海外挑戦へ「成長して、また浦和に帰ってきたいです」

REAL SPORTS / 2024年6月19日 2時26分

今季、WEリーグ歴代最多となる20得点を挙げ、得点王・ベストイレブン・MVPの個人3冠に輝いた清家貴子。ゴール後の力強いガッツポーズ、浦和のエンブレムを誇らしげにアピールするパフォーマンスはお馴染みとなった。ジュニアユースから浦和一筋で、サポーターからも愛されてきた“赤い稲妻”は、来季は海外のクラブでプレーすることを表明している。今シーズンのチームの進化と取り組みを振り返りつつ、海外挑戦への思いと、7月に控えるパリ五輪への展望についても語ってもらった。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=WEリーグ)

連覇を導いたチームの成長「自主的に解決する力はトップレベル」

――今季は楠瀬直木監督体制3シーズン目での2連覇達成となりました。2019年の森栄次前監督体制から積み上げてきた成熟度に加えて、楠瀬監督の下で若手選手も主力に定着するなど、選手層の底上げが見られました。昨年からのチームの進化をどんなふうに感じていますか?

清家:昨年に比べると、チームの修正力や考える力はさらに成長できた部分だと思います。ほとんどの選手が前監督の森(栄次)さんの時から積み重ねてきている中で、選手が自主的に考えて解決する力は、WEリーグの中でもトップレベルじゃないかなと。ただ、その中心が(安藤)梢さんと(猶本)光さんだったので、2人がケガで抜けてしまったことは本当に残念でしたが、その中で、自分たちのサッカーをどんな相手にも作り上げることができるようになってきたことは成長できたところだと思います。

――2人が離脱して以降は、塩越柚歩選手と島田芽依選手、伊藤美紀選手との前線の強力なホットラインで得点を量産していました。

清家:3人とは後期から一緒に試合に出ることが多くなりましたが、練習の中から連係を積み上げていきました。梢さん、光さんとは違うリズムや距離感で、試合を重ねるごとに呼吸が合うようになったと思いますし、今はリズムやタイミングが合うので一緒にプレーしていてすごく楽しいです。

――清家選手は10試合連続ゴールという日本プロサッカー界の新記録も作りましたが、メンタル面ではどんなところが成長したと感じていますか?

清家:自分自身は得点してチームメートやファン・サポーターのみなさんが喜んでくれる瞬間が一番好きなので、そういう幸せな時間を得るために頑張れた部分が大きいですね。技術的な部分でも自信がついたぶん、よりゴールに貪欲になれたというか。「ゴールがないと物足りない」という気持ちが生まれて、シュート練習も増やしましたし、それはいい変化だと思います。ただ、連続ゴールを目標にしていたわけではないので、プレッシャーもかなりありました(苦笑)。10試合目の仙台戦以降は、チームのために何が効果的かを考えてプレーしていました。

連戦を戦い抜くために食事の質と量を重視

――後期は過密日程もありましたが、戦い抜く上で食事面などで心がけていたことはありますか?

清家:今シーズンは本当に試合数が多くて、代表活動か(リーグが)連戦か、という感じで、中2日、中3日での試合が多かったので、とにかく糖質とタンパク質を摂ることを意識していました。家でもご飯を作って食べますが、毎日となると飽きてしまうし、たくさん食べるとなると辛い部分もあったので、応援してくださっている練習場の近くのうどん屋さんに通って、カレーうどんをよく食べていました。

――米よりうどん派ですか?

清家:うどんが食べやすいですし、好きですね。でも、お米もよく食べます。そのうどん屋さんでは、いつもうどんとお米をセットで食べていました(笑)。食事ではもちろん質も大事ですが、リカバリーのためにまず量を確保して、とにかくたくさん食べることを意識していました。

――たくさん食べてしっかり休むことが、コンスタントに活躍できた秘訣でもあるんですね。他に、体づくりで意識したことはありますか?

清家:リカバリーの質が問われるシーズンだったので、チーム全体のルーティンとして、試合後の交代浴はかなりやるようになりました。あとは体のマッサージやケアもかなりしっかりやっていたので、自分のリカバリーのリズムができたと思います。

タイトルを置き土産に海外挑戦へ。ポジティブな性格も強みに

――清家選手は来季は海外挑戦が決まっていますが、浦和でのラストシーズンとなった今季、優勝してMVPと得点王を受賞したことについてはどう感じていますか?

清家:本当は昨シーズンが終わった段階で移籍しようかなと考えていたんですけど、もっとこのチームで成長できること、学べることがあると思いましたし、今まで育ててくれた浦和レッズにもっと恩返しがしたいという思いもありました。1年残って、いろんなものをこのチームに残すことができて良かったです。

――その中で、改めてこのタイミングで海外挑戦を決断した決め手は何だったのですか?

清家:去年のこの時期と今年の冬にオファーが来て、悩みましたし、行くかどうかという瀬戸際だったのですが、光さんと梢さんに相談したら、「まだこのチームで学べることはある」と言われたんです。たしかにそうだなと思い直して、「このチームで学べるすべてのことを吸収しよう」と考えて1年間プレーしました。その上で、今シーズンは自分の可能性を試すためにチャレンジしてみたいと思いましたし、短いサッカー人生でいろんな経験をして、自分のレベルを上げたいという思いがあって、チャレンジすることを決めました。でも、浦和レッズに対する愛は本当に大きいので、海外で成長して、数年後にまた浦和に帰ってきたいです。

――海外に行くと決めるにあたって、相談した人はいましたか?

清家:レッズでは(海外経験のある)梢さんと光さんに話を聞きましたし、代表では熊谷紗希選手にも相談に乗ってもらいました。チーム選びの部分や、海外での戦い方、「最初にガツン!と活躍しないとパスがもらえないよ」とか。あとは生活面についても、いろいろなアドバイスをいただきました。光さんから聞いた話では、「最初は自分のことを何も知られていない状態で行くので、なかなかパスが回ってこない。でも、最初の方で、一発で点を決めたり活躍したりすればパスが集まってくるよ」と聞きました。だからこそ、最初の数試合は大切だと思います。個で突破して点を取るプレーは自分のストロングポイントなので、そこは最初から見せていきたいと思いますし、技術的な部分ではスピードもパワーも上がると思うので、レベルアップしなければいけないと思います。

――海外の選手は自己主張がよりはっきりしていると言われますが、そんな中でも、安藤選手から「キコリンなら大丈夫」と太鼓判を押されたそうですね。誰もが認める清家選手のポジティブな性格は強みになりそうですか?

清家:たしかに、「ポジティブだね」ということはめっちゃ言われます(笑)。代表で海外クラブ所属の選手に、英語もまだ喋れないし大丈夫かなぁ?という感じで聞いても、「絶対大丈夫だよ!」とみんなに言われるんですよ。そこまで心配していないのですが、本当に大丈夫なのかな……(笑)。いろんな要求が飛んでくると思いますが、英語が喋れるようになったら自分からも積極的に要求できるようにしていきたいですね。

自身2度目の世界大会へ。ワールドカップの悔しい思いを糧に

――来シーズン以降、浦和のチームメートに期待することや、下部組織の選手たちに送りたいメッセージはありますか。

清家:自分の作った20得点という記録を超す可能性を秘めた選手はたくさんいると思うので、記録を破るのはレッズレディースの誰かであってほしいと願っています。自分が15年前にジュニアユースに入って、中学1年生だった頃に梢さん率いるレッズレディースが浦和駒場スタジアムで優勝したのを見て本当にかっこいいなと思いました。その試合後に一生懸命紙吹雪を掃除しながら、「自分もここに立ちたい」と。自分たちの姿を見て、下部組織の選手たちがその夢を持ってくれたら嬉しいですし、自分には浦和の血が流れているので、海外でも活躍して背中で見せていきたいと思います。

――パリ五輪は、清家選手にとって昨年のワールドカップ以来2度目の世界大会となります。どんな大会にしたいですか。

清家:たくさんの方が応援してくれていますし、そういう方々の期待に応えたいという思いが一番強いです。昨年のワールドカップでは、悔しい思いをしました。出場時間が少なかったこともそうですし、準々決勝のスウェーデン戦で途中出場しましたが、点を取って逆転できなかった。だからこそ、パリ五輪では世界の舞台でさらにいいプレーをして、日本チームとしてももっと上を目指したいですし、個人としてももっともっと選手として成長できるような大会にしたいと思います。何より、今は自分自身のコンディションがいいので、世界を舞台に戦えることがすごく楽しみです。パリ五輪はワールドカップの悔しさを晴らすチャンスだと思うので。自分は得点の部分で関わりたいですし、個の突破力はさらに高めていきたいと思います。

【連載前編】浦和の記録づくめのシーズンを牽引。WEリーグの“赤い稲妻”清家貴子の飛躍の源「スピードに技術を上乗せできた」

<了>

浦和がアジアタイトルとWEリーグをダブル制覇。怒涛の2カ月間と過密日程を乗り切った底力とは?

チェルシー・浜野まいかが日本人初のWSL王者に。女子サッカー最高峰の名将が授けた“勝者のメンタリティ”とは?

なでしこジャパンの小柄なアタッカーがマンチェスター・シティで司令塔になるまで。長谷川唯が培った“考える力”

なでしこJの18歳コンビ・谷川萌々子と古賀塔子がドイツとオランダの名門クラブへ。前例少ない10代での海外挑戦の背景とは?

[PROFILE]
清家貴子(せいけ・きこ)
1996年8月8日生まれ、東京都出身。三菱重工浦和レッズレディースのジュニアユース、ユースを経て、2014年にトップチームに昇格。1年目で8ゴール、2年目も9ゴールを決めて、なでしこリーグ1部新人賞に輝いた。抜群の動き出しとスピード、シュートセンスを活かし、サイドハーフ、サイドバック、ウィングバック、FWなどでプレー。今シーズン、WEリーグで日本プロサッカーの連続ゴール記録を塗り替える10試合連続ゴールを記録、20得点を挙げて得点王に輝いた。また、ベストイレブン、MVPと合わせて個人3冠を受賞。昨夏の女子ワールドカップでは3試合に出場。5月末に海外移籍が発表された。今夏のパリ五輪メンバーにも選出。大舞台に強いメンタルの持ち主で、日本の得点源として活躍が期待される。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください