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藤野あおばが続ける“準備”と“分析”。「一番うまい人に聞くのが一番早い」マンチェスター・シティから夢への逆算

REAL SPORTS / 2025年1月9日 2時44分

なでしこジャパンで26試合6得点。弱冠20歳ながらレギュラー格の存在感を示してきた藤野あおばは、マンチェスター・シティで刺激的な日々を過ごしている。2024年11月中旬以降はフル出場を続け、課題を克服しながら試合ごとにプレーをアップデート。「常に考えながらプレーする」ことを大切にしてきた藤野が、課題を克服するために大切にしていることとは? ともにプレーする中で衝撃を受けたアタッカーや、代表でも近いポジションでプレーする長谷川唯から受けた影響、キャリアの展望についても話を聞いた。

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=なかしまだいすけ/アフロ)

衝撃を受けたイングランド代表アタッカー「この選手はやばいなと」

――藤野選手は、初めて代表に選ばれた時や、年代別代表でも、先輩や他のメンバーの経歴などを調べて、入念な準備をして臨んでいたそうですね。マンチェスター・シティに加入して合流する時も、他のメンバーのことは調べていったのですか?

藤野:はい。その選手にどういう特徴があって、どれぐらい自分と年齢が離れているのかということは、なでしこジャパンに入った時と同じように頭に入れていきました。自分を知ってもらうためにも、まずは自分が相手を知ることが、チームに馴染んでいい人間関係を作り上げるために必要なことだと思っています。

――その中で、実際にプレーをして「この選手はすごい」と感じた選手を1人挙げるとすればどの選手ですか?

藤野:「この選手はやばいな」と思ったのはローレン・ヘンプ選手です。練習量がすごいですし、プレーを見ていても勉強になるところが多くあります。もともと海外の選手に対して抱いていたイメージがあって「日本人選手に比べて得点能力に優れているけど、守備はあまりしなくて90分間走りきれない」とか、「ものすごい強力な武器を持っているけど、自分のやりたいことに偏ってしまう」という印象がありました。でも、ヘンプ選手はマルチに何でもできて、1対1で相手をはがす能力は素晴らしい武器だと思いますし、守備でも自陣まで戻って体を張ったり、攻守のプレーをハイレベルにこなすことができます。自分にとってサイドハーフ、ウィング像に一番近くて、「こういうプレーヤーになりたい」と思いましたし、自分に対してもすごく良く接してくれるのでありがたいです。

――スーパーリーグは日本人選手が増えていますが、その中で刺激を受けることもありますか?

藤野:この前のリーグ戦(シティが1-2で敗戦)で決勝ゴールを決めたエバートンの(林)穂之香さんなど、結果を出している選手はすごいなぁと思いますし、自分も同じくらい負けないように頑張らなければと思うので、いい刺激を受けています。

課題を具体的にして効果的な練習を

――ご両親に聞くと、藤野選手は小さい頃から「常に考えながらプレーしていた」そうですが、サッカーに関する言葉の語彙力や思考力はどんなふうに培ってきたのですか?

藤野:あまり自覚はないのですが、言葉の使い方や選び方は、両親のおかげだと思っています。小さい頃から自宅でサッカーの話をすることは多かったのですが、小さい頃は特に母といる時間が一番長くて、スクールの送り迎えをしてくれたりとか、スクールが終わった後に怒られたりすることもあったので(笑)。一番影響を受けたのは母だと思います。

――サッカーにまつわる会話が日常的にかわされていたんですね。普段からいいプレーの再現性を高めるようなイメージトレーニングをしていると思いますが、秘訣はありますか?

藤野:幼少期から、映像を見ることで自分自身がプレーに実行できることが多かったです。いいプレーをイメージとして植えつけておけば、同じようなシチュエーションになった時に選択肢が増えますから。今は個人のプレーを分析してもらっている方がいるので、試合後は毎回、その方とオンラインで話をして、うまくいかなかったプレーや改善点など、課題を具体的に理解した上で次の練習で実践するようにしています。予定が合わなくてオンラインが試合の前日になることもあるのですが、前日にやったことがより印象に残って、試合で発揮できることも増えてきました。課題はアバウトに分析するよりも、「どこがうまくいっていなかったからできなかった」とか、「こうしたらできるようになる」と詳細にしたほうが効果的に練習で克服できるので、それは意識しています。

代表とクラブの司令塔からの学び「一番うまい人に聞くのが一番早い」

――マンチェスター・シティでは長谷川唯選手、清水梨紗選手、山下杏也加選手と日本人選手も多いですが、普段からサッカーの話はするのですか?

藤野:試合後に話したりすることはよくあります。唯さんとは一緒に試合に出ることも多いので、「この時どうしたらよかったですか」と、映像を持って話をしにいくこともあります。

――長谷川選手は代表でもポジションが近いですが、どのようなことを学んでいますか?

藤野:練習や試合で唯さんと一緒にプレーをしながら、「それができるんだ」とか、「そこが見えているんだ!」という驚きが毎回ありますし、話していても、「考え方がすごいな」と聞き入ってしまうこともあって。とにかくすごい人ですし、同じチームになれて幸運だったと思います。試合でできなかったことやわからないことは、基本的に一番うまい人に聞くのが一番早いと思うので、よく聞きにいきますし、代表の時も同じフィールドプレーヤーの唯さんや(清水)梨紗さんには頼っています。

――以前、ご自身の性格について「人見知り」と言っていましたが、代表では海外組や年上の選手が多いなかで、年齢はあまり気にせず話せる雰囲気があるのでしょうか?

藤野:今までのチームは(熊谷)紗希さんが中心になって、柔らかい雰囲気や、話しかけやすいチーム作りをしてくれていたので、すごく話しやすいです。今も人見知りではありますけど(苦笑)、遠慮して話せないとか、コミュニケーションがうまく取れないとサッカーのプレー面で支障が大きいので、気になることは遠慮せずに聞きます。「うまくなる」とわかっていてやらない選択肢はないので、その部分では人見知りは出ないですね。

「結果で還元したい」バロンドールからの逆算

――マンチェスター・シティは3年契約と発表されましたが、今後のご自身のステップアップのイメージを、現時点でどんなふうに描いていますか?

藤野:海外移籍はワールドカップやオリンピックで大きな結果を残すために選んだ道でもあるので、代表でコンスタントに選んでもらえるように、チームでやれることを増やしつつ、結果の部分はよりこだわって代表に還元していきたいです。シティでは、今はケガ人が多い影響で試合に出られている部分もあるので、主力選手たちが復帰してきた時にも試合に関わり続けることができるようにしたいですし、その中でしっかり結果を出したいです。今シーズンはチャンピオンズリーグに出場できているので、この大会とリーグで、シティの優勝に貢献したいですね。

 ただ、初めての移籍で本当にレベルの高いところに来てしまった実感があるので、どれぐらいこのクラブにいられるのかは模索しながらも、将来的に思い描いている「バロンドールを獲得する」という目標に近づくために、何が一番良いことかを考えながらステップアップを図ることができればと思っています。

――なでしこジャパンのニルス・ニールセン新監督はマンチェスター・シティの前テクニカルダイレクターでしたが、藤野選手は接点はあったのですか?

藤野:移籍を進めるために一度だけ、オンラインで話をさせていただいたことがあります。ただ、加入する頃には新しい方に引き継がれていたので、その1回だけでした。

――改めて、新体制の下で新しいステップを目指す新生なでしこジャパンで、楽しみなことを教えてください。

藤野:代表で外国人監督の下でプレーするのは初めてなので、新しいやり方でチームがどんなふうに変わるのかが楽しみです。どういう練習をするのか、どういう戦術で戦うのかということもすごく興味があります。そのチームの一員としてて戦えるように、まずはメンバーに選ばれることを目標に、日々の課題にしっかり取り組んでいきたいと思います。

【連載前編】なでしこJの藤野あおばが直面した4カ月の試練。「何もかもが逆境だった」状況からの脱却

<了>

女子サッカー育成年代の“基準”上げた20歳・藤野あおばの原点。心・技・体育んだ家族のサポート[連載:最強アスリートの親たち/前編]

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[PROFILE]
藤野あおば(ふじの・あおば)
2004年1月27日生まれ、東京都出身。女子サッカーのイングランド1部(女子スーパーリーグ)・マンチェスター・シティWFC所属。日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織であるセリアスで育ち、トップ昇格は叶わなかったが、進学した十文字高校では年代別代表でも規格外の存在感を放ち、2022年にベレーザに加入。スピードに乗ったドリブルと左右両足から放たれる外国人選手並みのシュートインパクトで1年目から主力として活躍し、翌シーズンからWEリーグで2年連続ベストイレブンに選出。22年8月のFIFA U-20女子ワールドカップでは飛び級で背番号10をつけ、準優勝の原動力になった。同年9月になでしこジャパンに初選出され、主力に定着。23年夏のFIFA女子ワールドカップではコスタリカ戦で日本人史上最年少ゴール記録(19歳180日)を記録。24年2月のパリ五輪アジア最終予選の北朝鮮戦ではオリンピック出場権がかかった試合で決勝ゴールを決め、今夏のパリ五輪ではスペイン戦で女子のオリンピック最年少ゴールを奪取。大会後にマンチェスター・シティに3年契約で移籍することが発表された。

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