なぜ近本光司は“2年目のジンクス”を脱せたのか? 今すぐ真似したい「3つの習慣」
REAL SPORTS / 2020年9月29日 11時30分
長嶋茂雄の持つリーグ新人安打記録を61年ぶりに更新し、赤星憲広以来、新人として史上2人目となる盗塁王を獲得。阪神タイガースの近本光司は、1年目から類いまれな輝きを放った。今季開幕から不振を極め、打率1割台の低空飛行を続けた。それでも気が付けば“2年目のジンクス”などみじんも感じさせない活躍を見せている。その裏には、一般社会に生きる私たちも今日から“まね”したくなる、3つの習慣がある――。
(文=巻木周平、写真=Getty Images)
「他人の目を気にしてしまう」ことに無縁な、2年目の近本光司「すべての悩みは、対人関係の悩みである」。かの有名な心理学者アドラーの言葉だ。共感する人は多いだろう。職場でのいら立ち、家庭でのストレス、ライバルへの嫉妬心。全て他人がいるからこその悩みだ。
とりわけ多くの人が抱えるのは「他人の目を気にしてしまう」ことではないだろうか。チャレンジする時、失敗した場合の周囲の反応を想像して踏み出せない。しかしたまに、そんなことをみじんも考えずに自分の道を突き進み、結果を残す人がいる。
一般社会だけじゃない。スポーツニッポンの記者である私が取材する阪神タイガースにも同じような悩みが見られる。チームメートの目、指導者の目、マスコミの目、ファンの目。いろんな目が気になってしまい、自分を見失う選手は少なくないと感じている。
そんな環境に適応する選手と、力を発揮できないまま野球人生を終える選手がいて、後者が多いのが現実だ。だが、それらの悩みとは無縁な選手がたまにいる。2年目の近本光司がその一人だ。
リーグ新人安打記録を塗り替え、盗塁王に輝いたのはご存じの通り。その実力だけでなく、思考法や性格まで取材させてもらった私が思う近本の強みには、一般社会でも参考にできるノウハウが詰まっている。
①アンガーマネジメント:「言葉にするって大事なんです」感情のコントロールがうまい。ルーキーイヤーの昨年、「阪神のドラフト1位」という無類の注目を浴びても常に冷静で、4安打した試合後でも、痛恨の失策を犯した試合後でも、いつも同じテンションで報道陣にプレーを解説した。
好不調に言動を左右される選手が多いから驚いた。失策した後にガツガツ質問されていい思いはしない。それでも怒りやいら立ちを沈めて丁寧に言葉を発し、感情のベクトルを次戦に向けていた。大きなスランプが無かった要因だと推察する。
「言葉」へのこだわりを感じたエピソードがある。昨オフ。打撃フォームを取材した時に言葉に詰まった近本が言った。「まだ言語化できてないんです。一緒に考えてくれませんか?」。適当に流してくれても……と思ったら「言葉にするって大事なんです。それでしっくりくることもあるので」と続けた。
仕事で重大なミスを犯した時、近本のように落ち着いて対処できるだろうか。かなり難題だが、「言語化」は大きなヒント。なぜミスが起きたのか。準備は足りていたか。油断はなかったか。原因を因数分解して言葉にすることで、再発防止と成長につなげられるかもしれない。
②敏感力と鈍感力:マイペースだからこそ自己の向上に夢中になれる前述から読み取れるのは敏感な性格だ。打撃フォームを語れば「トップは耳よりもちょっと低い位置にくるように」と細部まで言及する。一方、チームメートが「マイペース」と口をそろえる一面もある。
近本の後を打つことが多い糸原健斗がこんな話をしていた。「後攻で、初回の守備から攻撃に移る時、2番の自分が急いでるのに1番のチカはめちゃめちゃゆっくりしてて(笑)。ルーキーなのに自分のペース。なかなかまねできない」。
技術や思考にはとことん敏感で、とことん突き詰める。一方で、他人の常識や「なんとなくこうだよね」という空気には鈍感。余計なストレスをためない。だからこそ自己の向上に夢中になれる。まねするのは難しいかもしれないが参考にしたいスタイルだ。
③知的好奇心の制御:興味を持ったら試す、ただし軸は崩さないコロナ禍で自主練習を余儀なくされた今春、動物の動きをまねた「アニマルフロー」というトレーニングを取り入れた。「ワニやライオンみたいな動き。普段と違う体の使い方がおもしろい」。
また同時期には潜在意識を開拓するため苦手だったコーヒーに挑戦した。「快適に過ごせる範囲を外側に広げることで、ひらめきだったりにつながるのかな」。独自の取り組みに時間を投資する裏には、ある考えがある。
「興味を持ったら試してみる。ただそれは、軸があって初めてできること。やるべきトレーニングや技術練習は決まってて、それらが重要度の8割以上を占める。残りの2割弱の中であれこれ試して、取り入れられそうなことと、そうでないことを選択する。その繰り返しが大事だと思ってます」
自分に適した「正しい努力」を続けているのだ。仕事で成果を出すための挑戦は多い方がいい。とはいえ自分らしさを捨ててまで挑戦だけに振り切るのは違う。近本の言葉から「正しい努力」の重要性を教えられる。知的好奇心に素直になりつつ支配はされない。これまた参考にできそうなスタイルだ。
“2年目のジンクス”に陥りかけても立て直せた一味違う様子を節々から感じさせる近本が、2年目の今季、不振に陥った。「近本でもこうなるのか」と口にした報道陣は多い。しかし大方の予想どおり持ち直した。いわゆる“2年目のジンクス”に見舞われる選手がいる中、見事に復活。9月27日時点で打率.295、リーグトップ20盗塁。不動の切り込み隊長として打線をけん引している。
要因は前述した3つの強みだ。打てない自分への怒りを抑え、原因を分解し、言語化し、対策する。周囲のザワめきではなく自分と向き合い、適切な知的好奇心のもと挑戦を続ける。「自分」という圧倒的な軸を持ち、「他者」を気にしない。だから、皆が跳ね返されてきた壁を乗り越えられたと推察している。
近本には、タイガースの看板選手として期待が寄せられる。性格的にはチームを鼓舞して引っ張るより背中で語るタイプだろう。その言動から刺激を受けた後輩選手が増えるほど、チームは強くなる。そう予想できるぐらい、近本は、稀有(けう)な存在である。
<了>
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
大谷翔平、「好きなスポーツ選手」全年代で1位&過去最多の記録 2位は石川祐希、3位は井上尚弥
ORICON NEWS / 2024年11月21日 14時32分
-
落合博満氏 阪神・近本の2リーグ制以降最少19盗塁での盗塁王にオレ流持論「価値はある」
スポニチアネックス / 2024年11月15日 20時10分
-
甲子園歴史館 特別企画阪神タイガース 中野拓夢選手によるトークショーを12月1日(日)に開催!
@Press / 2024年11月8日 15時0分
-
甲子園歴史館 特別企画 阪神タイガース 中野拓夢選手によるトークショーを12月1日(日)に開催!
PR TIMES / 2024年11月8日 14時50分
-
大谷翔平が生み出した“無形の価値” OBの称賛止まず…世界一をもたらした献身性
Full-Count / 2024年11月2日 8時20分
ランキング
-
1野球引退の慶大清原Jr.に新たな争奪戦か 進路先最有力候補は「一般就職」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 11時41分
-
2慶大清原Jr.がキッパリ野球引退決断 ドラフト直前には2球団から問い合わせも指名漏れ…
スポニチアネックス / 2024年11月24日 10時42分
-
3【陸上】古豪復活へ 戦力充実の中央大が大会新で初V「箱根に向けていい兆し」エース吉居駿恭が中大新 27分台連発のMARCH対抗戦
日テレNEWS NNN / 2024年11月24日 8時3分
-
4メジャー挑戦の巨人・菅野智之に「ジャイアンツ」が興味と米報道 4年前も協議 2年契約も可能か
スポーツ報知 / 2024年11月24日 9時3分
-
5【WWE】イヨ・スカイ 決別したベイリーと〝共闘〟か…ジェイド負傷でウォーゲームス前に急展開
東スポWEB / 2024年11月24日 6時9分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください