[川崎フロンターレ外国籍選手ランキング]納得の1位はジュニーニョ。では2、3位は?
REAL SPORTS / 2021年2月12日 10時21分
昨年は数々の記録を塗り替えた圧倒的なリーグ優勝と天皇杯初優勝を手にした川崎フロンターレ。守備の要であるチョン・ソンリョンとジェジエウ、そして決定力の高さを発揮したレアンドロ・ダミアンの外国籍選手勢の活躍も印象的だった。それでは過去20年間を振り返って、川崎で最も成功した外国籍選手は誰だろう? REAL SPORTS独自の視点で、【出場試合数】【得点数】【個人タイトル数】の3項目の客観的データと、【インパクト】【人気】の主観的な2項目を取り上げ、2000年代に入って川崎に在籍した外国籍選手を5つの項目によってランキング。2001年から川崎を取材する江藤高志氏が、印象深いエピソードを振り返りながら格付けする。
(文=江藤高志、写真=Getty Images)
出場試合&得点数、納得の1位はジュニーニョ。2位、3位は…【公式戦出場試合数】
1位:ジュニーニョ:339試合
2位:チョン・ソンリョン:173試合
3位:エウシーニョ:146試合
川崎フロンターレに在籍した外国人選手のうち、国内の公式戦(リーグ戦、リーグカップ、天皇杯の合計)出場記録はご覧の通りの順位となった。
1位のジュニーニョ(カルロス・アルベルト・カルヴァリョ・ドス・アンジョス・ジュニオル)は納得の数字。さすがに川崎がJ2の舞台で戦っていた2003シーズンから2011シーズンまで9シーズンに渡りプレーしてくれた選手なだけにダントツの数字となった。
そのジュニーニョを追うのがチョン・ソンリョンだ。2010年と2014年にFIFAワールドカップ出場も果たしている元韓国代表GKは、2016シーズンの加入後、今季が6シーズン目となる。2018年と2020年にJリーグベストイレブンに選ばれるなど不動の守護神として抜群の安定感を示しており、今季中に200試合を超えるのは確実であろう。
3位は2015シーズンから4シーズン在籍のエウシーニョ。右サイドバックとして特に攻撃面で印象に残る活躍をしてくれた。またエウシーニョもチョン・ソンリョンと並び、2017年と2018年の2度Jリーグベストイレブンに名を連ねている。3連覇を逃した2019シーズンの不振は、清水エスパルスに移籍したエウシーニョの穴を埋められなかったからだという声も多く聞こえてきた。
【公式戦得点数】
1位:ジュニーニョ 208得点
2位:鄭大世 59得点
3位:レナト 47得点
1位ジュニーニョが国内大会トータルで200得点を超えていることに改めて驚く。川崎でのJ1リーグ戦通算得点が110点というイメージが大きいが、J2時代のわずか2シーズンで65得点をたたき出している。2位の鄭大世(チョン・テセ)、3位のレナト(レナト・リベイロ・カリスト)が2桁にとどまることを考えてもジュニーニョのゴール数がずば抜けていることがわかる。
【個人タイトル数】
ジュニーニョ:2007年得点王
インパクト大“フレンドリーで涙もろい”鄭大世
【インパクト】
1位:鄭大世
正直な話、テセは外国籍選手という感覚がまったくない。日本語を自由に使いこなし、フレンドリーで涙もろい気のいい青年といった印象。そのテセの代名詞的ゴールとして真っ先に思い浮かぶのが2007年8月のガンバ大阪戦で決めた“人間ブルドーザー”ゴールであろう。ボールコントロールしながら、寄せてきた相手選手を次々となぎ倒して独走。GKとの1対1を制してのゴールには度肝を抜かれた。
2009年には10月の大宮アルディージャ戦でPKを巡りジュニーニョと一悶着。テセ自らが得たPKを外したジュニーニョに対し、再度自ら得たPKを自ら蹴りたいと要求してテセが蹴り、外すということがあった。当時の関塚隆監督が「見苦しいシーンを見せてしまった」と陳謝する場面となった。ちなみに試合のほうはPKを外した2選手、ジュニーニョが1ゴール、テセが2ゴールを決めており、2本のPKを外しながら、2本のPKを決めた大宮に3-2で勝利するという結果となった。
北朝鮮代表として出場した2010年のFIFAワールドカップ・南アフリカ大会では、ブラジルとの大会初戦の試合前、国歌が流れるピッチ上で男泣き。そういう人間味あふれるところが多くのファンから愛される理由でもある。
豪快なイメージのあるテセではあるが、大卒1年目はまだまだ初々しかった。関塚監督に二桁得点を期待されてオロオロしていた姿が思い出される。そこからの彼の成長と、北朝鮮代表を含めたその後の輝かしい実績とのギャップに歴史を感じる。
【インパクト】
2位:フッキ
2位のフッキは2005年の加入直後から結果を出せず、レンタル先のJ2で得点を量産し(2シーズンで62得点)、2008年に期待されて復帰。チームの目玉選手としての活躍を誰もが思い描いた中、川崎にフィットできないまま去ってしまった。川崎以外のチームで残した結果の大きさのインパクトが思い出深い選手だ。
【インパクト】
3位:レナト
3位のレナトは小柄な体格からは信じられないパワーとスピード。そしてエグいレベルの左足のシュートを持っており強いインパクトを残した。そのレナトは主力として活躍していた2015年7月に満額の違約金の支払いを受けて中国の広州富力に移籍している。なお、このときの違約金の一部を使い等々力緑地内にあるグラウンドが1面人工芝として整備され、育成年代向けに使われている。
人気&総合順位ともに1位&2位は揺るがず。3位は…?
【人気】
1位:ジュニーニョ
実績と在籍年数を考えるとジュニーニョの首位は揺るがないのではないか。そのジュニーニョのゴールの中でも特に印象深いのは、鹿島アントラーズを相手に戦った2009年7月のナビスコカップ準々決勝・第2戦。俗に「三本指のシュート」と言われるトゥキックで、角度のないところから決めた起死回生の一発だった。川崎の黎明期を支えた元チームメイト、アウグストに教わった蹴り方だった。
【人気】
2位:エウシーニョ
2位以下は意見がバラけるところ。エウシーニョを選んだのは、2017年に川崎が初めてリーグタイトルを獲得した際の中心選手であり、その移籍が3連覇を逃した要因の一つとして語られるため。初タイトルをぐっと引き寄せた、2017年10月の第29節・ベガルタ仙台戦の得点は彼の代表的な得点の一つであろう。0−2とリードされた試合を逆転に導く反撃の一発だった。
【人気】
3位:ジェシ
3位にはジェシを推したい。必ずしも川崎でフル稼働した選手ではなかったが、これ以上ないというナイスガイ。初来日の2012年にはケガのため長期離脱を余儀なくされ、2年目には病に倒れた奥さんの看病のためチームを離れるということもあった。それでも実直で優しい人間性が多くのサポーターから愛された選手である。そのジェシで思い出されるのが2012年9月のFC東京戦。負傷から初めて先発に復帰した試合は劣勢の試合展開に。それでも楠神順平が先制点を奪うと、ジェシがチーム2点目を頭で決めてこれが決勝弾に。ゴール直後駆け寄ったゴール裏でひざまずき、涙する姿がサポーターの涙を誘った。
【総合順位】
1位:ジュニーニョ
2位:エウシーニョ
3位:鄭大世
結果と人気の両面でジュニーニョ、エウシーニョの1位2位は揺るがず。3位にテセの名前を推したい。昨季、引退を決意したところから急転。FC町田ゼルビアに移籍した今季の活躍も楽しみだ。
【番外編】サポーターを魅了するジェジエウの存在
2019年の来日初年度、開幕からしばらくベンチにも入れなかったジェジエウが初先発したのは第10節の仙台戦だった。この試合でジェジエウが見せたのはスピードや強さ、高さといった身体能力をフルに生かしたプレーの数々。相手の攻撃を次々と跳ね返す守備の魅力にサポーターはすぐに気がつく。時間の経過とともにスタジアムがジェジエウの守備に釘づけとなり、そのプレーを待ち望む空気感を醸し出すに至る過程は興味深いものがあった。試合に出られない苦境にも腐らずに練習を続けた成果だったが、その裏にあった「ガンジーさん」として知られる現セレッソ大阪の白沢敬典通訳のサポートは見逃せない。
そのジェジエウは2020シーズン、谷口彰悟とのセンターバック・コンビで堅牢な守備を構築。圧倒的な成績を、チョン・ソンリョンと作る守備チームで下支えした。リーグタイトルの奪還と、天皇杯初優勝に力を発揮し、Jリーグベストイレブン入りも果たした。
ちなみにピッチ外では規則正しいレアンドロ・ダミアンの生活についていけず。オフは早朝からジェットコースターを目当てに遊園地を訪れるダミアンのスケジュールに付き合うのは無理と拒否。とにかく少しでも長く寝ていたいタイプだという。
<了>
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