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U24代表「17歳」中野伸哉を輩出した環境とは? 森山U17代表監督が語る“クラブの宝”育成法

REAL SPORTS / 2021年4月1日 16時50分

4月3日に開幕する高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ。来季からは参加チームが4クラブ増えることもすでに決まっている。コロナ禍で思うように海外遠征が行えない状況の中で、育成年代は成長を遂げていくために、何を大事にすべきなのか。育成年代に長年携わり、FIFA U-17ワールドカップで2度指揮を取った経験を持つ森山佳郎U-17日本代表監督に話を聞いた。

(インタビュー・構成=松尾祐希、写真=GettyImages)

サガン鳥栖のトップチームで高校生が活躍する理由

プレミアリーグなどのリーグ戦文化の成熟もあり、U-24日本代表に17歳にして7歳飛び級で入ったサガン鳥栖U-18の中野伸哉のような存在も出てきている。今後さらなる発展のために必要なカテゴリーの飛び級を促進する上でどのようなスタンスを持つべきなのか。中学年代と高校年代に関わる指導者の視点で、2002年から2012年まで広島ユース監督を務め、現U-17日本代表監督である森山佳郎氏の考えを明かしてもらった。

――プレミアリーグの参加数が来季からEASTとWESTでそれぞれ2チームずつ増えます。この10年で育成年代はどのように変化したのでしょうか?

森山:Jリーグの育成組織はトップの方針によって指導者の入れ替わりがあるので一概にはいえませんが、才能ある下級生を積極的に使い育てていくチームとフィジカルに長けた3年生を中心に勝負に徹するチーム作りをしていくという2つの傾向があり、その考え方の違いでチーム作りに差が出てくるようになったと思います。Jクラブの方ともお話をしましたが、とあるクラブではこれまでの反省を踏まえて今後は飛び級で上のカテゴリーに入れる選手を育てる指導者をより評価する方針になったそうです。実際にそのチームは去年あたりから将来性のある1年生をターゲットにし、公式戦で使い続けています。

 1年間試合をやり込んできた選手と、代表に絡んでいるけど所属チームでレギュラーではない選手。そこで差が出てくるようになりました。マークしていなかった選手が望外に育つパターンもありますが、各チームでクラブの宝になってくれる子を探し、クラブの方針を定めた上で指導者が選手の育成にチャレンジしてほしい。そして、3年から5年後にプロクラブの中心選手になることを目指し、起用を続けてほしいですね。

 そのためには長期的な視点を持ったクラブが増えないといけません。しかし、まだまだ足りていないのが現状です。プレミアリーグが創設されて、11年の時が経っているのにまだ多くありません。例えば、サガン鳥栖は積極的に若い選手を登用し、結果につなげています。U-24日本代表に飛び級で入った中野伸哉は2019年のU-17ワールドカップでも一つ下の年齢で全試合出場し、クラブでも中3からU-18でプレーして高2の時にトップチームでデビューを果たしました。今季の鳥栖は世界的な選手やA代表があまりいない中で、若い選手や高校生を起用して上位争いを展開しており、その中で中野がレギュラーに定着しています。ただ、彼が誰よりも特出したスキルを持っていた選手とはいえません。中野と同じように才能を持った選手は他にもいます。若い選手が早い段階で高いレベルの経験を積み重ねていけば、17歳の時点でプロになることも不可能ではないんです。

6・3・3・4制度問題と、移籍がほとんどない問題

――育成年代からの積極的な若手登用がトップチームの強化にもつながるわけですね。

森山:ですので、僕の考えとしては、若い選手がもっと早く一人前の選手になってほしい。2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会で日本の平均年齢は28.3歳でしたが、フランスやイングランドは25.6歳で3歳ほど違いました。日本もまだ中学生や高校生だからいいだろうという甘さをなくせば、もっと早く成長させてあげられるはずです。なので、成長スピードを上げていく取り組みをしていかないといけません。

 例えば、同年代の中で圧倒的なプレーを続けていたとしても、同じカテゴリーに留まることで成長スピードが鈍化してしまう可能性があります。U-15の選手を飛び級でU-18に上げて試合に出る機会がない時は、練習だけは上のレベルでやらせて試合だけはU-15に戻してもいいでしょう。Jクラブのアカデミーにとって、存在意義はアカデミーの選手をクラブの宝として育てることにあります。そのためにはクラブの現場に対する理解がないと成り立ちません。クラブの利益にもなるので、成功例や取り組みも含めて、そういう事例が増えていってほしい。高校1年生の世代を見る機会が多いので余計にそう思うのかもしれませんが、可能性がある選手がプレミアリーグやプリンスリーグで使われないケースは多くあります。そこは問題点であり、積極的に選手を使ってほしいですね。

――去年から試合に出ている選手が多いチームはチームとして完成していますし、個人の力もかなりつけている印象があります。開幕前に青森山田高や矢板中央高の試合を見た際にチームとしても個人としても完成度が高く、早い段階で上のレベルを経験したメリットが出ているように感じました。

森山:そうですよね。中学生であっても高校生の試合に出場する選手が出てほしい。もちろん、体が小さくてテクニカルな選手は、下の世代でじっくりやらせたほうがいい場合もある。なので、選手の成長速度に合わせ、個別の対応はすべきでしょう。とはいえ、余裕を持ってプレーしている時点で同じカテゴリーにいてはいけません。そういう意味ではコンフォート(快適な)ゾーンではなくて、ちょっと難しいラーニング(学んでいく)ゾーンに入れてチャレンジをさせたい。難しい課題にトライするような環境においてあげることが大切ではないでしょうか。

――実年齢でチームを決めるのではなく、技術や身体を見てサッカー年齢に合わせてプレーするカテゴリーを決めたほうがいいということですね。

森山:そうですね。日本は3年区切り。その問題を解決するために、国体(国民体育大会)のU-16化などを行ってきましたが、僕もコロナ禍の前にスペインの視察で感じたところがあります。スペインはひと学年区切りで活動し、FCバルセロナやレアル・マドリードなどを視察しましたが、個人での飛び級はもちろん、15歳のチームは一つカテゴリーを上げて、16歳のリーグで戦うといったことが当たり前になっています。一方で日本は6年・3年・3年・4年の制度に基づいてチームを編成します。そうすると、1年生はあまり試合に出られません。もちろん現在は日本でも年代別リーグの取り組みも整備されてきてはいますが、トップレベルの大会ではフィジカル的にも体力的にも完成していない下級生よりも3年生が活躍します。

 また、3年間で選手の移籍や退団がほとんどないのも難しい問題です。本来であれば、高体連のチームで200人、300人いる部員と競争して試合に出られなかったのであれば、1つ下のカテゴリーのチームに移籍したり、逆に例えば県2部リーグなどで突出した選手はカテゴリーを2つぐらい上げてプレーできる環境を作ってほしい。個人に合った環境でプレーすべきですけど、それが日本はなかなかできません。日本ができる範囲の中で、もっともっとできることを追求していかないといけない。なので、まだまだ改善できる余地があると思います。

Jのアカデミーはポジション別のメニューが少ない

――与えられた環境の中で何をやるかというところでいくと、飛び級がキーワードになりそうです。

森山:そうですね。そこは大事で、ゲームの環境も重要。シーズンを通じて見ていくと、高体連のチームは選手権(全国高校サッカー選手権大会)とインターハイ(全国高等学校総合体育大会)の予選に参加するので、季節の良い5、6月や10、11月の4カ月ぐらいはプレミアリーグとプリンスリーグなどがありません。都道府県大会の予選では大差がついてしまうゲームも多く、そこは必ずしも選手にとってプラスとはいえませんし、プレーの強度が極端に落ちる夏場のゲームをどうするのかも課題の一つです。

 また、先ほど話したクラブ自体が指導者の評価基準を変えて、選手を育てるというところに立ち返らないといけません。Jリーグの中で、そこはもう一度確認してもらいたい。クラブで考え方の違いはあると思うけど、ユースというのはトップチームにつながる選手を育てる場所。ただ、全選手がトップチームに昇格できるわけではないので、次のステージでどこに行っても通用するような選手に育ててほしい。プライオリティーはトップで宝になるような選手を長期的な計画で育てることですが、普段のトレーニングから見直すべきポイントもあると思います。

 一概にはいえませんが、Jのアカデミーではゴール前の攻防トレーニングやポジション別トレーニングが少ないと聞きます。ポジションによって取り組みも変わってくるので、個別のトレーニングは非常に重要だと考えています。去年JFA(日本サッカー協会)ではこれまで続けているGKキャンプに加えて新たにストライカーキャンプを行いましたが、今年はセンターバックキャンプも行う予定です。日本の課題はゴール前の攻防。ゴール前の攻防が増えるトレーニングを多くしないと、試合では結果に結びつきません。青森山田高のおかげで高校年代のゲームインテンシティーはかなり上がったと思いますが、ボールを奪いに行くところも含めてもっとやってもらった中でクオリティーを出してほしい。インテンシティーやプレッシャーやコンタクトが激しい中で、いかにプレーのクオリティーや判断力を追求していくか。こだわって積み重ねていかないといけない。それは強く思います。

――高体連のチームなどは個性が強い選手を育てるノウハウを持っています。そうした長期的な目線を持って育てることを、リーグ戦文化の中でもやっていくべきですよね。

森山:そうですね。北海道コンサドーレ札幌の中島大嘉(国見高出身)や横浜F・マリノスの前田大然(山梨学院高出身)や伊東純也(逗葉高出身)はジュニア時代各地域のトレセンに入っていませんでした。陸上の短距離の選手でもサッカー経験者が多いのですが、ケンブリッジ飛鳥、桐生祥秀、サニブラウン(・アブデル・ハキーム)もサッカーをやっていながらピックアップできなかった。技術判断は足りないけど、身体能力は高い選手が出てきた時、そういう選手を早めにピックアップし、サッカー理解度が進むような刺激を与える続けることもしていくべきだと感じています。あるいは中村憲剛や中村俊輔みたいに幼少期、フィジカル的に難しいがテクニックがある選手に対しては飛び級の反対で下のカテゴリーに落としてじっくり育てることも必要かもしれません。

 選手の成長にメンタリティーも大きな部分を占めるので、見極めていく作業は難しいかもしれませんが、何か一つ武器が飛び抜けているのであればサッカー理解を深めさせてあげたい。テクニックや判断力がある選手は必ずどこかで台頭してくる可能性が高いので、明確な武器を持つ選手にきっかけを与えてあげることは大事です。そのためには指導者の質を日本全体で上げていくことが求められていて、いろんな角度からやっていく必要があります。小学校ぐらいから形にはめてボールの動かし方ばかりやるのではなく、個人の力を伸ばす取り組みにトライしてほしい。

 ある指導者の方のお話では、他のスポーツではあり得ないが、サッカーは才能が飛び抜けていなくても努力でプロになれるスポーツだと言っておられました。下の年代になればなるほど、チーム作りではなく、テクニックや判断力の追求、誰にも負けない武器を作る取り組みに時間をかけて、その選手が次のステージで更に大きく飛躍するような指導を心がけてほしい。そのような選手を刺激し大きく成長させていく、選手の成長スピードを上げる場としてプリンス、プレミアリーグが寄与する。そういう戦いが数多く繰り広げられることを期待しています。

<了>






PROFILE
森山佳郎(もりやま・よしろう)
1967年生まれ、熊本県熊本市出身。熊本第二高校から筑波大学に進学。卒業後はマツダサッカークラブ(現・サンフレッチェ広島)に入団し、1994年には日本代表に選出された。以降は横浜フリューゲルス、ジュビロ磐田、ベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)でプレー。1999年シーズン限りで現役を退くと、2000年から古巣・広島のユースコーチに就任。2002年8月から広島ユースの監督を務め、2013年からはU-15日本代表でコーチを務めた。2015年からはU-15日本代表で監督を務め、2017年のFIFA U-17ワールドカップでは久保建英らを擁し、チームをベスト16進出に導いた。2019年にもU-17ワールドカップを経験し、現在もU-17日本代表で監督を務める。

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