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ドラフト報道の「BIG●」は、期待通りにプロで活躍できてる? 歴代BIGのその後

REAL SPORTS / 2021年10月10日 9時38分

10月11日、プロ野球ドラフト会議が開催される。例年“運命の一日”が近づくにつれドラフト候補生の報道量が格段に増えていき、今年も“高校ビッグ3”と呼ばれる選手たちには特に注目が集まっている。ここ15年ほどで定着してきた感のあるこの“ビッグ●”という呼称だが、過去の“ビッグ●”は実際にプロ入り後、期待通りの活躍を見せることはできたのだろうか? “非ビッグ”と比較しながら、そのキャリアを振り返ってみたい。

(文=花田雪、写真=Getty Images)

ドラフト前に大きな期待をかけられる“ビッグ●”、プロ入り後の活躍度は?

10月11日に開催されるプロ野球ドラフト会議に向け、各メディアの報道も熱を帯び始めてきた。

その中でも、特に注目を集めているのが森木大智(高知)、小園健太(市和歌山)、風間球打(ノースアジア大明桜)の“高校ビッグ3”だ。3投手とも最速150キロを超える快速球を誇る本格派右腕。ドラフト本番でも、おそらくこの3人に指名が集中することが予想される。

高校生に限っていえば、現時点でこの3投手の実力が頭一つ抜けているのは間違いない。ただ、ドラフトの面白さは「指名時の評価が、そのままプロでの活躍に直結するわけではない」部分にある。

過去の例を見ても、それは明らかだ。

注目度の高いドラフト候補生たち数人を“ビッグ●”とくくって報道されるようになったのは、ここ15年ほどのこと。それまでは「松坂世代」「ハンカチ世代」というように、世代のトップランナー一人の名前を冠にした“●●世代”の呼称が主流だったが、潮目が変わったのが2007年のドラフトだ。

期待に応える活躍を見せた者と、志半ばでプロの世界を去った者たち

高校生と大学・社会人の分離ドラフトが行われた2007年、ドラフトの目玉とされていたのが中田翔(大阪桐蔭→日本ハム)、佐藤由規(仙台育英→ヤクルト)、唐川侑己(成田→ロッテ)の“高校ビッグ3”と、大場翔太(東洋大→ソフトバンク)、長谷部康平(愛知工業大→楽天)、加藤幹典(慶應義塾大→ヤクルト)の“大学ビッグ3”だった。

この年を境にドラフトでは“ビッグ●”の呼称が多く見られるようになった。以下はドラフト時に“ビッグ●”と称された主な選手たちだ。

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2010年ドラフト/早大ビッグ3(早大トリオ、早大3羽ガラス)
大石達也(早稲田大→西武)
斎藤佑樹(早稲田大→日本ハム)
福井優也(早稲田大→広島)

2011年ドラフト/大学ビッグ3
藤岡貴裕(東洋大→ロッテ)
菅野智之(東海大→浪人)
野村祐輔(明治大→広島)

2016年/大学ビッグ3
田中正義(創価大→ソフトバンク)
柳裕也(明治大→中日)
佐々木千隼(桜美林大→ロッテ)

2016年/高校ビッグ4
今井達也(作新学院→西武)
寺島成輝(履正社→ヤクルト)
藤平尚真(横浜→楽天)
高橋昂也(花咲徳栄→広島)

2017年/高校ビッグ3
清宮幸太郎(早稲田実業→日本ハム)
中村奨成(広陵→広島)
安田尚憲(履正社→ロッテ)

2018年/高校ビッグ3
小園海斗(報徳学園→広島)
根尾昂(大阪桐蔭→中日)
藤原恭大(大阪桐蔭→ロッテ)

2019年/高校ビッグ4
佐々木朗希(大船渡→ロッテ)
奥川恭伸(星稜→ヤクルト)
西純矢(創志学園→阪神)
及川雅貴(横浜→阪神)

2020年/ビッグ3
早川隆久(早稲田大→楽天)
佐藤輝明(近畿大→阪神)
髙橋宏斗(中京大中京→中日)
===================

特にここ数年は毎年のように目玉選手を“ビッグ●”とくくる傾向が顕著になってきているのが分かる。

“ビッグ●”と呼ばれた選手たちは、当然ながら将来のスター候補として大きな期待をかけられてプロに入団する。しかし、中にはその期待に応えられず、志半ばでプロの世界を去った選手も多い。

2007年“ビッグ3”のその後は? 逆転した評価

逆に、ドラフト時はそこまで注目されていなかった“非ビッグ●”の選手の中に、後に大きく飛躍した選手もいる。

例えば、2007年組はどうか。“高校ビッグ3”の中でも特に注目度が高かった中田は、日本ハムの4番に成長。今季途中に暴行事件が発覚して巨人へ無償トレードされたが、打点王3回、ベストナイン5回とプロの舞台でも一流といえる結果を残している。

一方、高校生史上最速(当時)の157キロを誇った剛腕・佐藤由規はプロ入り後、度重なる故障に悩まされて2020年限りで楽天を退団。今季はBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーを続け、NPB復帰を目指す立場にいる。

また、“大学ビッグ3”と呼ばれた大場、長谷部、加藤は3投手ともにプロで大成したとはいえず、すでに現役を退いている。(※加藤は今季、社会人野球で現役復帰)

そんな中、“非ビッグ3”の中から輝きを放ったのが高校生ドラフト3位組の丸佳浩(千葉経大付→広島)、伊藤光(明徳義塾→オリックス)、中村晃(帝京→ソフトバンク)や、大学生・社会人ドラフト3位の宮西尚生(関西学院大→日本ハム)だろう。彼らは後に1軍の主力にまで成長し、今も現役を続けている。ドラフト時と比較すると、“ビッグ3”との評価は逆転したといっていい。

2010年ドラフトの“非ビッグ3”には育成入団からの下剋上も…

2010年は大石、斎藤、福井の“早大ビッグ3”が話題をさらったが、プロで輝きを放ったのは斎藤の外れ外れ1位だった山田哲人(履正社→ヤクルト)、西川遥輝(智弁和歌山→日本ハム2位)、育成入団の千賀滉大(蒲郡→ソフトバンク育成4位)、甲斐拓也(楊志館→ソフトバンク育成6位)。

“早大ビッグ3”と同級生でいえば、柳田悠岐(広島経済大→ソフトバンク2位)、秋山翔吾(八戸大→西武3位)、大野雄大(佛教大→中日1位)、澤村拓一(中央大→巨人1位)たちだ。

2011年“大学ビッグ3”の菅野、野村は期待通りの活躍も…

2011年の“大学ビッグ3”は、浪人を経て1年後に巨人に入団することになる菅野、広島に入団した野村は期待通りの結果を挙げたといえるが、「大学ナンバーワン左腕」と呼ばれた藤岡はプロの舞台で思うような成績を残せず、昨季限りで現役を引退。

ちなみにこの年の大卒組は2007年の“高校ビッグ3”と同級生。4年前にはドラフト指名されなかった選手の中からも、菊池涼介(中京学院大→広島2位)、鈴木大地(東洋大→ロッテ3位)、といった日本を代表する選手を輩出している。

高校生の下位指名からも近藤健介(横浜→日本ハム4位)、桑原将志(福知山成美→DeNA4位)、上沢直之(専大松戸→日本ハム6位)といった後の1軍主力選手が入団している。

2016年ドラフト組で最も成功しているのは、優勝争いをけん引する…

2016年は“大学ビッグ3”の田中、柳、佐々木と、“高校ビッグ4”の今井、寺島、藤平、高橋が話題をさらったが、2021年現在、最も成功を収めているのは山本由伸(都城→オリックス4位)だろう。今季は先発ローテの絶対的な柱として投手タイトルを総ナメする勢いで、「日本球界のエース」と呼ぶにふさわしい投球を見せている。

他にも9位入団ながら筒香嘉智の抜けた穴を見事に埋めてみせた佐野恵太(明治大→DeNA)や、3年連続ベストナインの源田壮亮(トヨタ自動車→西武3位)も特筆した活躍を見せているといえるだろう。

2017年ドラフト組では数々の史上最年少記録を打ち立てた“非ビッグ”選手が…

2017年は清宮が大きな注目を集めたドラフトだったが、彼に安田、中村を加えた“高校ビッグ3”が話題の中心に。

安田は今シーズン優勝争いをするチームでコンスタントに出場を果たしているが、この年のドラフト組では、数々の最年少記録を打ち立て日本を代表するスラッガーに成長した村上宗隆(九州学院→ヤクルト)が出世頭となっている。他にも“非ビッグ3”では平良海馬(八重山商工→西武4位)が大ブレイク。東京五輪代表にも選出されるなど同世代の投手の中では頭一つ、抜きんでている。

2018年“高校ビッグ4”は前評判通りの活躍も、それをしのぐのは…

2018年ドラフト以降に関しては、まだプロ3年目以内と現時点で“評価”を下すのは難しいが、特筆したいのが2019年だ。この年は高校生史上最速の163キロを誇る佐々木を筆頭に、奥川、西、及川の4人が“高校ビッグ4”と注目を集めた。

4投手ともプロ2年目以内に1軍初勝利を記録し、西を除いた3投手はすでに1軍の主力クラスにまで成長するなど、前評判通りの活躍を見せているが、彼らをしのぐ活躍を見せているのが宮城大弥(興南→オリックス1位)だ。高卒2年目ながら開幕ローテの座をつかみ、10月9日時点でパ・リーグ2位の防御率2.31と12勝を記録。資格を持つ新人王の最有力候補となっている。

2021年ドラフト組で数年後に輝くのは誰か? 数多くの逸材が…

このように、ドラフト時に“ビッグ●”と騒がれた選手の中には、期待通りプロで成功を収めた者もいれば、そうでない者もいる。逆に“非ビッグ●”の中に、後に世代を代表する選手に成長する者もいる。

今年のドラフトで最注目なのが“高校ビッグ3”なのは間違いない。ただ、「数年後、誰が世代のトップランナーになっているか」は誰にも分からない。“ビッグ3”以外にも、ポテンシャル十分の達孝太(天理)、松浦慶斗(大阪桐蔭)、畔柳亨丞(中京大中京)、花田侑樹(広島新庄)といった逸材は多く控えている。

もちろん、彼ら高校生だけでなく、大学生・社会人にも廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)、椋木蓮(東北福祉大)、隅田知一郎(西日本工業大)、佐藤隼輔(筑波大)、山田龍聖(JR東日本)といった「即戦力候補」も充実。

また、今年は「投高打低」のドラフトといわれているが、数年後にはその評価が逆転する可能性も大いにある。

10月11日、運命のドラフト会議。

目玉の“ビッグ3”はもちろんだが、それ以外の選手にも注目してほしい。全ての指名選手が、球界を代表するスターになる可能性を秘めている。

<了>








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