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選手権を席捲する「中学時代無名」の選手たち。高校サッカーで開花した“2つの共通点”とは?

REAL SPORTS / 2022年1月8日 16時30分

第100回大会にふさわしい激闘が繰り広げられている全国高校サッカー選手権大会。節目となる今大会は、中学生時代は無名だった選手たちの活躍が目立っている。“未完の大器”たちは高校サッカーを通じてどのように成長し、現在に至るのか。今では世代別日本代表に名を連ね、プロを視野に入れるまでに成長した選手たちの飛躍の理由をひもとく。

(文=松尾祐希、写真=Getty Images)

中体連出身選手たちが選手権決勝進出を果たした背景

今年度の高校サッカー選手権も残すところ決勝を残すのみとなった。節目の100回を迎えた今大会を振り返ると、早くから期待されてエリート街道を歩む有望株たちが活躍する一方で、中学時代は無名だったタレントの活躍も目立っている。

大津はその代表格だ。準々決勝のスタメン11人中4人が公立中学校のサッカー部出身。しかも、彼らは決勝進出を果たしたチームで欠かせない主軸を担っている。GK佐藤瑠星(3年)、MF薬師田澪(3年)、FW一村聖連(3年)、FW小林俊瑛(2年)。この中で佐藤はU-18代表候補歴があり、小林もU-17代表候補にたびたび招集されている。薬師田もインターハイの活躍が目に留まって代表スタッフが注目していたタレントだ

彼らに共通しているのは中学時代に代表歴がなかったということ。もちろん、県トレセンや選抜チームに入った経歴があり、全く力がなかったわけではない。ただし、あくまで地元にいるうまい選手であり、全国にその名をとどろかせたり、世代別日本代表に選ばれてバリバリ活躍していたわけではなかった。いずれも大津入学後に才能が花開いた選手たちなのだ。

熊本県の合志市立合志中出身の佐藤は中学校2年生の時にGKに転向。サイズを見込まれてのコンバートだったのだが、大津でそのポテンシャルにさらに磨きをかけた。とはいえ入学当時は、GKとしての課題が山積みで、まだまだ荒削り。190cm近い身長も思うように動かせていなかった。

佐藤に遅れること1年。小林は神奈川県の藤沢市立鵠沼中から大津に入学した。中体連の県選抜に選ばれた実績を持つ一方で、代表歴は一切ない。そうした状況で熊本にやってきたのだが、佐藤と同じく190cm近い身長を持て余し、ステップワークも含めて体をうまく動かせていなかった。

しかし、彼らは誰も想像しないような成長を遂げていく。多くのJリーガーを育ててきた名伯楽・平岡和徳総監督が1年時から彼らを我慢強く起用し、試合の中で経験を積ませながら鍛えていった。もちろん、試合に出るだけで成長できるわけではない。そこで学んだことを持ち帰り、練習で課題克服に取り組む日々を送った。

では大津は具体的にどのようなトレーニングを行っているのだろうか?

練習のスケジュールは月曜日がミーティングのみで基本的にはオフとなる。火曜日はフィジカルトレーニング、水曜日から金曜日まで通常のメニューを消化して土日が試合となる。ここまでのサイクルは他の高校と大差なく、どの強豪校でもやっているような流れだ。ただ、大津が他と違うのは1日の進め方にある。

24時間をデザインする――。平岡総監督が常日頃から口にする言葉の通り、成長するために誰もが時間を無駄にせず動いていく。

「コツコツが勝つコツ」大事なのは24時間のデザイン力

大津の朝は早い。1日は雄大な阿蘇山がまだ見えない夜明け前から始まる。朝5時半前後から選手たちが集まり始め、6時ごろには全体のトレーニングがスタート。最初はおのおの課題克服のためのトレーニングを徹底的に取り組む。60分ほどで個別練習が終わると、次はドリル形式のシュート練習に移行し、最後はミニゲームで仕上げる。そこから授業に出て、放課後は100分間のトレーニングを行って1日を終える。もちろん、その合間にも各自で体づくりやケアを行っており、誰もが時間を有効に使って日々を過ごす。その時間の使い方について、平岡総監督はこう話す。

「大事なのは24時間のデザイン力。やらされる100回の練習よりも、1回のやる気ある練習。子どもたちは“やらされる”からスタートするかもしれないけど、僕らの仕事は選手たちが夢中になれるよう言葉を配ること。何も考えずに他チームの選手が大津の朝練習に参加したら、時間が長く感じるかもしれません。ただ、私たちの選手は集中しているので、練習の時間が短く感じます。要するに時間軸は気持ちの持ちようで、短くも長くも感じる。その根本は主体性。やらされているか、自分から進んでやっているか。やらされている時間をサッカー以外も含め、1日の中でなるべく減らしたほうがいいんです」

平岡総監督の考えはしっかりと選手たちにも浸透しており、誰一人としてやらされている選手はいない。前述の佐藤も小林も課題だったフィジカル面とステップワークなどは朝練習で徹底的に鍛えてきた。その積み重ねで自分を磨き、試合と練習を繰り返しながら進化を遂げてきた。

そうしたサイクルを回しつつ、平岡総監督は成長期だった彼らの状況を注視。状態によって負荷のかけ方と、休息のタイミングを見極めながら選手と接してきた。これはけがの功名だったのだが、小林は今春に負傷をきっかけに体が大きく成長。リハビリに専念をしていた時期にしっかり休むことで身長が伸び、かつその期間を有効に活用して体幹を鍛えたことも動ける体を手に入れる要因となった。

「コツコツが勝つコツ」という言葉を平岡総監督は冗談交じりによく使うのだが、まさにその通り。日々の積み重ねがあるからこそ今の活躍があるといえるだろう。

「え、世田谷にそんな選手がいた?」無名だった世代別日本代表

今大会には他にも高校入学後に大きく花開いた選手がいる。流通経済大柏の191cmの大型GKデューフ・エマニエル凛太朗(2年)だ。彼は東京都の世田谷区立船橋希望中サッカー部から名門校の門をたたいたのだが、中学時代は無名の選手。選抜チームはおろか、中学最後の大会も区大会1回戦で敗退しており、強豪校からの誘いはなかった。しかし、中学時代の先輩が流経大柏に進学していた関係で、試しにセレクションを受験。

「東京の関係者も知らなかった選手。『え、世田谷にそんな選手がいた?』という感じで。いきなりセレクションに来て、面白そうな選手だなと思ったんです」

そう話した榎本雅大監督の目に留まり、合格を勝ち取った。昨季は1年生チームでサードGKだったが、1年かけてGKコーチから専門的な指導を受けながら体をつくった結果、今季は開幕からレギュラーとしてプレー。高校年代最高峰の高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグEASTで経験を積み、今では世代別代表に安定して選ばれるまでに成長を遂げた。

今大会は初戦で敗れたが、ガーナ人の父から譲り受けた身体能力の高さで、PK戦では見事なシュートストップを披露。潜在能力の高さを見せ、さらなる飛躍を予感させた。彼もまた入学当初は体が出来上がっていなかった選手。そうしたタレントを一から育てていくことは簡単ではないが、門戸が広く多くの選手を受け入れることができる高校サッカー部だからこそ育まれた才能だったことは間違いない。

名門・静岡学園の10番が生まれた理由

大柄な選手の台頭がある一方で、フィジカル的に恵まれていなかった選手が高校進学後に花開いたケースもある。静岡学園の技巧派MF古川陽介(3年)は京都サンガF.C.U-15時代にレギュラーではなく、同じ関西から静岡学園に入学したチームメートも名前こそ知っていても実際にプレーを見た記憶がなかった選手だったという。

しかし、古川は高校入学後、持ち前のテクニックを徹底的に磨き、試合の中でその武器を生かす方法を模索。同時に、試合を通じて走り切れる苦手であったハードワークにもトライ。高校3年時には名門・静岡学園の10番を背負うまでの評価を獲得し、ジュビロ磐田入りの内定を勝ち取った。

日々のトレーニングで武器を磨くことはもちろん、試合の中でその特長を最大限に発揮するすべを身につけ、その上で、苦手なことにも向き合う。そうしたたゆまぬ努力の積み重ねによってプロ入りを勝ち取る選手へと変貌を遂げた。

中学時代に名を上げられなかったからといって、サッカー選手としての道が閉ざされるわけではない。コツコツと正しい努力を続け、さらなる経験を積むことでブレイクする可能性は十分にある。高体連のチームはプロ入りが絶対的な目標となるJユースとは異なり、未完の大器を発掘して3年間を通じて我慢強く育てていく土壌がある。今後も高校サッカーの舞台で世間をあっと驚かせるタレントが現れるのが楽しみだ。

<了>






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