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イニエスタが自宅にコートを造るほど沼にハマる。次なる五輪種目候補「パデル」って何?

REAL SPORTS / 2022年2月12日 9時45分

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回はWebメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長が今一番気になるアスリートやスポーツ関係者にインタビューする「岩本がキニナル」のゲストに、日本パデル協会副会長の玉井勝善氏が登場。発祥の地・スペインではテニスよりも競技人口が多く、日本においてもブレイク間近のスポーツ“パデル”の魅力について余すところなく話を聞いた。

(構成=池田敏明、写真=Getty Images)

メッシやイニエスタも大好きな「パデル」とは?

岩本:実は、私は日本パデル協会の理事をやっています。ということで、日本におけるパデル普及の生みの親である玉井勝善さんに来ていただきました。まずは玉井さん、パデルを説明するところからお願いします。

玉井:ありがとうございます。まず、周囲に強化ガラスと金網が張られたテニスコートをイメージしてください。パデルはその中でプレーするラケットスポーツです。1970年代にスペインで生まれました。テニスはガットを張ったラケットでボールを打ちますが、パデルは板状のラケットと硬式テニスボールと同じようなボールを使い、2対2のダブルスで行います。どなたでも簡単にプレーできます。

五十嵐:玉井さんはテニスもプレーされていたんですか? テニスよりもパデルのほうが簡単ですか?

玉井:もともとは高校からテニスをしていました。パデルは2対2でプレーするので、1人でプレーするより守る面積が少ないですし、テニスよりラケットが短く、板状なので、どこに当たってもボールがしっかり飛んでくれるんですよ。ですから初心者でも簡単にラリーができます。

岩本:いろいろな人を誘ってやってもらいましたが、初めての人でも2時間あれば楽しめるレベルになります。

秋山:コートの面積はテニスと同じなんですか?

玉井:テニスコートの約7割程度の大きさで、側面に金網、背面に強化ガラスが配置されています。

五十嵐:日本国内に専用コートはどのぐらいあるんですか?

玉井:全国に18施設、32コートあります。世界全体では1800万人の競技人口がいて、硬式テニスよりもパデルのほうが競技人口の多い国が6カ国あります。例えばスペインは、テニスよりもパデルのほうが競技人口は多いです。

秋山:発祥の国とはいえ、テニスのほうが多いイメージがありました。

岩本:学校の体育の授業で取り入れられているんですよ。例えばリオネル・メッシやアンドレス・イニエスタなど、スペインで育ったサッカー選手は全員できます。みんな大好きです。

五十嵐:みんな大好き? それはちょっと言い過ぎじゃないですか?

岩本:本当です。イニエスタはスペインの自宅にはパデルコートまであるそうです。フランスのジネディーヌ・ジダンやイタリアのフランチェスコ・トッティもやっています。

玉井:ジダンは自分でクラブも設立して運営しています。

名誉会長は『キャプテン翼』の生みの親

五十嵐:でも、日本でパデルをやっている人は見たことがないですよ。

岩本:僕は毎週やっています。ちなみに五十嵐さん、野球経験者は向いているみたいですよ。スピードのあるボールを打ち返すことができるんですよ。

五十嵐:そんな気がします。あと、僕はスカッシュをたまにやるんですよ。背面にガラスがあり、跳ね返ったボールを打つ感覚は似ているのかなと思うので、けっこう速いボールが打てそう。

玉井:日本代表の選手は、基本的には硬式テニスで活躍していた方が大部分なんですけど、男子で唯一、テニス以外の競技をしていたのは野球経験者で、女子はソフトボール経験者です。野球系のスポーツをやっている方は向いていますね。それから、サッカーは後ろから来たボールをトラップすることがあるじゃないですか。ですから強化ガラスに跳ね返ったボールをうまく扱えるのはサッカー経験者ですね。打ち方は独特ですけど。

岩本:ちなみに、『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生もパデルの愛好家で、日本パデル協会の名誉会長を務めています。

五十嵐:本当ですか? 皆さんは普段はどこでやっているんですか?

岩本:まずは東京都練馬区の善福寺公園テニスクラブの中にある「パデル東京」。ここは玉井さんがつくったコートです。それから、千葉県千葉市にある「パデル&フットサル 晴れのち晴れ」という施設にもよく行きます。今日初めて話すんですけど、調布市内にもつくるので、完成したらぜひ。

秋山:それ、言っちゃっていいんですか?

岩本:大丈夫です。今年の夏に3面でオープンして、最終的には4面つくる予定です。

五十嵐:コートをつくるのに、そこまで広い場所は必要なさそうですよね。

玉井:はい。テニスコートの1面はだいたい(プレーヤーが動くための余白も考えると)150坪ぐらい必要なんですけど、パデルは20m×10mで、テニスコート1面分に2面できるんですよ。ビジネス的に考えても、テニスコートと同じ料金で営業すれば倍の売り上げが得られます。コンパクトなので、例えば商業ビルの屋上や鉄道の高架下、倉庫の中など、テニスコートをつくれない場所にも設営できます。

パデルとバーベキューを同時に楽しむ「肉パデ」

秋山:そもそも玉井さんはどういった経緯でパデルと出会われたんですか?

玉井:「スペインのマドリードで……」とカッコよく言いたいんですけど、2013年10月に埼玉県所沢市のフットサル施設に日本で初めてパデルコートが設営され、日本パデル協会の会長をしている日系パラグアイ人の中塚アントニオ浩二さんが、仲間を集めて月に1回「パデル・コン・アサード」というバーベキューとパデルを楽しむイベントをやっていて、そこに「肉を食べに行かないか」と誘われて行ったんですよ。コートの周りには楽しそうにお肉を食べてお酒を飲んでいる人もいれば、レベルに関係なくパデルをプレーしている方もいて。テニスではありえない光景が広がっていて、一瞬でハマってしまいました。

五十嵐:話を聞いてるだけで楽しそうですね。今、想像で参加していました。

秋山:コートはガラス張りですし、その外側では何をしていてもいいわけですもんね。

玉井:まさにおっしゃる通りなんですよ。

五十嵐:日本の競技人口が増えれば、需要が増えて施設も増えますよね。

玉井:そうですね。統計データなんですが、50コートを超えると競技人口が一気に増えていくという傾向が全世界であるんですね。今、国内に32コートありまして、2022年にようやく50コート達成見込み、2023年以降は100コート、300コートという目標を立てています。例えばスウェーデンは人口1000万人の国で、5年前は国内に300コートしかなかったんですが、今は3500コートになっているんですよ。

秋山:ええ~!

五十嵐:国民のほとんどがやっているような感じですね。

秋山:そういうことになりますよね。国民的スポーツですね。

五十嵐:われわれも、今から始めても遅くないですね。パデルの先駆者になれそう。いろいろなアスリートの方の話を聞いて、こんなスポーツあるんだ、やってみたいな、と思うけど、一番やりたいスポーツですね。

秋山:やっている自分の姿がイメージしやすいですしね。

玉井:まだ詳細はお伝えできないんですけど、他にも都心部に近いところで今年中にコートをオープンできる可能性もありますので。決まったら報告します。

岩本:僕はさっき、調布につくると言ってしまいましたけど(笑)。そことは違う、もっと都心部に近いところです。

五十嵐:え~超楽しみ。絶対行く! ちなみにバーベキューは?

玉井:コロナが落ち着いていれば、ですかね。パデルとバーベキューをやることを「肉パデ」と言うんですよ。われわれが運営しているコートのスタッフは全員、日本バーベキュー協会のインストラクターの資格を取得しているので、パデルを教えるだけでなく、本格的なバーベキューもサービスできるんですよ。

五十嵐:バーベキューが本格的かどうかって、けっこう大事なところですよね。僕の頭の中はもうパデルでいっぱいです。肉パデ。これをはやらせましょうよ。

玉井:今の時期は「鍋ル」とか。

秋山:……(笑)。

岩本:ちょっとスベった感じがありますね(笑)。

五十嵐:いやいや、いいですね、「鍋ル」。

玉井:一度やってみたんですよ。コタツを持ち込んで、その上に鍋と日本酒を置いて。鍋とパデルだから「鍋ル」。ただ「肉パデ」ほど定着はしなかったですね(苦笑)。ちなみに、今はご時世的なものもあるので、私たちの「肉パデ」でもお肉はちゃんとカットしてご提供しています。

IT企業経営者から転職、パデルに人生を懸ける

岩本:話は変わりますが、玉井さんはもともとベンチャー企業の経営者だったんですよ。

秋山:私、そこが気になっていたんですよ。玉井さんはもともと何をされていたんだろうって。

玉井:ITの会社を26歳から40歳まで経営していました。パデルに出会ったのが2015年のゴールデンウィークで、その年の9月末に退職しました。出会った瞬間に「パデルをやる」と決めてしまったんですよ。経営理念が「夢を形に」という会社で、社員数が30人から40人ぐらいだったんですが、一人一人に「夢を見つけたから退職したい」と説明して回りました。

岩本:すごいのが、奥様も全くパデルをやったことがなかったのに、今はパデルの施設で働いて、毎日パデルをやっているんですよ。夫婦そろって完全に人生を懸けているなって。

秋山:すごいサポートですね。

五十嵐:玉井さんは今、おいくつなんですか?

玉井:46歳です。

五十嵐:46歳で勝負しても勝てます?

玉井:今はそれほど頻繁に大会に出ているわけではないですけど、勝てます。テニスだとフィジカルで圧倒されてしまうんですが、パデルだとまあまあ勝てます。昨日も名古屋の施設に大学の体育会テニス部の子たちが来て一緒にやったんですけど、勝負できました。強いボールを打たれても、スルーすればガラスに跳ね返ってゆっくり返ってくるので、打ち返せるんですよ。

秋山:じゃあ、子どもから大人までみんなでできますね。

玉井:そうなんですよ。パデルのすごいところは、競技を中心に人が集まってコミュニケーションが生まれるソーシャルスポーツで、老若男女、誰でもできる生涯スポーツであることです。

五十嵐:今、日本ではどれぐらいの競技人口がいるんですか?

玉井:約2万5000人です。テニスの国内の競技人口が約400万人といわれています。協会としては、2030年までに競技人口100万人を目標にしています。主要都市にパデルコートがあって、ある程度の方たちが知っているというところまで、あと8年で持っていきたいと思っています。

五十嵐:広めるためにはどのようにすればいいんですか?

玉井:今までは草の根の活動をしてきました。施設に来ていただくのが一番なんですけど、日本代表選手や有志の人が公園にラケットとネットを持って行って「パデルをやってみませんか?」と普及活動をしたり、いろいろなイベントに出てパデルの存在を知ってもらったりという活動をこの5年間ずっとやってきました。2015年に「パデル東京」をつくった時はクラウドファンディングで設立資金を集めたんですが、スポーツ分野での当時最高額が集まってYahoo!ニュースで取り上げていただいたことが大きな話題となり、そこから多くのメディアの取材を受けました。

秋山:パデルを始めてみたいという方はどうすればいいですか?

玉井:各施設で体験レッスンをしています。日本パデル協会のホームページにコート一覧があるんですね。そこでお近くのコートを見つけていただければ、その施設で体験レッスンを受けることができます。例えばわれわれが運営しているパデル東京ですと、500円で60分間の体験レッスンを受けることができ、最後には試合ができるようになります。

高額賞金大会、オリンピック競技採用への流れも?

五十嵐:これからの伸びしろもすごくありそうですね。

玉井:スポーツは大会での賞金が「1億円」というのが、競技人口が増えていくための指標の一つになると思うんですが、パデルの大会は賞金がテニスの10分の1ぐらいなんですよ。ただし今後、中東でプロが参戦する大会が始まり、賞金がとてつもなく高額になる予定で、そうなると世界中から元テニスのトッププレーヤーの人たちが参入するだろうといわれています。あとはオリンピックスポーツになる流れが確実に見えていまして、2023年にヨーロッパオリンピック委員会が主催するヨーロッパ競技大会がポーランドで行われるんですけど、そこで採用されることが決まりました。初めてオリンピックの輪の中にパデルが入るのを見て感動しました。同じ2023年、アメリカ大陸で行われるパンアメリカン競技大会でもパデルの開催が内定しているという報告を受けています。2026年にはアジア競技大会が名古屋で行われるので、協会としてはそこに向けてロビー活動をしています。

五十嵐:よし、そこを狙おう!

秋山:そうか、他の競技を引退した選手がパデルで復帰することも十分に考えられるんですよね。五十嵐さん、2人で目指しますか。男女混合もあるんですか?

玉井:テニスと一緒で、男子ダブルスと女子ダブルスが公式種目で、ミックス(混合)ダブルスは公式ではないんですけど、すごく人気のあるジャンルですね。

五十嵐:どんな服装でやるんですか? パデルファッションはあるんですか?

玉井:基本はテニスの服装がベースです。テニスはロゴの大きさが決まっているなど細かい規定があるんですが、パデルは全身にスポンサーロゴが入っていて、黄色や赤、蛍光色など華やかです。ラケットも打突面にメーカーのロゴが入って、かなりカラフルですね。

秋山:かわいい格好ができそうですね。

岩本:これだけお二人に興味を持っていただいたので、今日は大成功でしたね。

<了>






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InterFM897ラジオ番組「REAL SPORTS」(毎週土曜 AM9:00~10:00)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜

2019年にスタートしたWebメディア「REAL SPORTS」がInterFMとタッグを組み、ラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界やアスリートのリアルを発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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