8部で異例の2300万円調達! FiNANCiEと鎌倉インテルが実現する、スポーツの新たな可能性
REAL SPORTS / 2022年5月6日 7時30分
スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。この春からはJFN33局ネットの全国放送にリニューアル。元プロ野球選手の五十嵐亮太、スポーツキャスターの秋山真凜、Webメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長の3人がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回は、ゲストに株式会社フィナンシェ取締役COOの田中隆一氏と、鎌倉インターナショナルFCオーナーの四方健太郎氏が登場。スポーツ界で注目を集めるブロックチェーンを活用した新世代のトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE(フィナンシェ)」について、そして神奈川県2部のクラブながらFiNANCiEを活用して2300万円を集めた鎌倉インテルの驚きの取り組みについて詳しく話を聞いた。
(構成=池田敏明、写真提供=JFN)※写真は左から、五十嵐亮太、秋山真凜、田中隆一、四方健太郎、岩本義弘
「応援する側とされる側の人たちが、いかに新たな出会いを築けるか」秋山:今日のゲストは株式会社フィナンシェ取締役COOの田中隆一さんです。田中さんは以前も一度「REAL SPORTS」にご出演いただいています。改めて、「FiNANCiE」について、どのようなサービスなのか教えていただけますか。
田中:iOSとandroid向けアプリのサービスで、ブロックチェーンというインターネットの新しい技術を利用してチームや選手などのトークンを発行し、ファンの方に購入していただき、応援していただく新しいクラウドファンディングのサービスになります。トークンを保有することでチームのグッズやキャッチコピーなどを決める投票に参加できたり、アプリ内のコミュニティーに参加できたりします。
秋山:岩本さんがGMを務める南葛SC(サッカー/関東リーグ1部)もFiNANCiEを利用されていますが、どのような使い方をされているんですか?
岩本:コロナ禍の影響で観客の人数を絞って試合を開催しなければいけなかった時に、トークンホルダーの中で観客を抽選したり、試合会場用に作成した選手ののぼりなどをシーズン終了後、選手のサインを入れて抽選でプレゼントしたり。クラブへの提案や改善ポイントなどさまざまな意見をお聞きする場でもありますし、2000トークン以上持っている方だけが見られる限定ラウンジもあります。そこでは一般公開より少し前にスタメン情報を出したり、公の場ではこう言ったけど本音はこう思っている、といったオフレコ情報を出したりしています。
秋山:そもそもどのようなきっかけでFiNANCiEのサービスを立ち上げようと思ったんですか?
田中:応援する側とされる側の人たちが、いかに新たな出会いを築けるかを考えた時に、ブロックチェーンを活用したトークンという仕組みが非常に有効なのではないかと思ったのがきっかけです。応援する側はより参加意識を持てるようになりますし、トークン自体は二次流通マーケットで売買できるんですが、需要と供給に応じて価値が上がり、インセンティブを提供できる可能性があります。こうしたメリットを生かせば、最初から応援してくれる人をどんどん募れる仕組みになるんじゃないかと考え、サービスを立ち上げました。
五十嵐:売買の結果、元本割れになることもあるんですか?
田中:その時々の価値に応じて購入していただくことになるので、原理的には下がることもあります。ただ、基本的にはコミュニティーを大きくしていくためのものでもありますので、最初の段階で購入していただけば、下がるケースは少ないと思います。
岩本:ちなみに南葛SCでは、初期の段階で購入された方のクラブトークンは、価値がほぼ2倍になっています。
8部のアマチュアクラブが2300万円集める秋山:では、具体的にフィナンシェとスポーツクラブがどのような取り組みを行っているのか、ここからはクラブ側を代表して鎌倉インターナショナルFC(鎌倉インテル)オーナーの四方健太郎さんにもお話を伺いたいと思います。まず、鎌倉インテルがどのような経緯でこのFiNANCiEを取り入れたのか、その経緯を教えていただけますか。
四方:鎌倉インテルはバックに大きな企業がいるわけではなく、私自身が思いを持ってゼロから立ち上げたクラブなので、端的にいうとお金がないんですね。スポンサーシップやクラウドファンディングなど、あの手この手を使いながらクラブを運営しています。その中で、新しい資金調達の形があることを聞き、「フィナンシェ? お菓子?」みたいな知識から入ったのが最初ですね。
秋山:実際に取り入れてみていかがでしたか?
四方:クラブトークンを発行した最初の段階で2300万円ぐらい集まったんですね。われわれは神奈川県2部、J1から数えると8部に相当するリーグのクラブです。そのアマチュアクラブに2300万円が集まるというのはかなりの出来事だと思います。
秋山:購入された方々は、鎌倉インテルの情報をどこで見つけているのでしょうか。
四方:われわれはSNSでの発信という部分は比較的、強いほうだと思っています。こういった新しいサービスなので、インターネット界隈(かいわい)の方々にリーチしていくことで知っていただけていると思います。また、地元の口コミやサッカー界のネットワークもありますし、ラジオに出演するなど、あの手この手を使いました。44日間連続のトークンLIVE(音声配信)もやりました。
岩本:毎日やると聞いて、とんでもないことを始めたな、言ったからには最後までやらなければいけないから大変なのに、と思っていたんですが、最後までやり切って、結果として大きなムーブメントを起こしましたよね。
海外展開が生み出す『キャプテン翼』の南葛SCの無限の可能性秋山:日本国内ではどのぐらいのチームが取り入れているんですか?
田中:50を超えるチームやリーグの皆さんに始めていただいています。プロクラブでは湘南ベルマーレさんが初めてご一緒させていただいたクラブで、そこからサッカーファンの方々への認知が広がっていきました。
秋山:FiNANCiEの今後の展開として考えていることはありますか?
田中:今はスタジアムに来られない状況でも楽しめるようなことに使っていただいていますが、今後はスタジアムに来た時に楽しめるような仕組みを考えていきたいですね。もう一つは海外への展開です。今は日本国内にサービスを限定していますが、いずれ海外のユーザーさんにも入っていただき、日本のチームを応援していただく流れができればいいなと思っています。
岩本:海外展開は『キャプテン翼』のクラブである南葛SCとしても期待しています。価値が一気に上がりそうですからね。
四方:鎌倉「インターナショナル」であるわれわれも、海外展開はめちゃくちゃ興味があります。今のサービスでも十分に満足しているんですけど、当然ながら世界のほうがマーケットは大きいですし、われわれに協力や貢献ができることはあるんじゃないかと思っています。
五十嵐:海外とつながるというのが僕にはいまいちはっきり見えてこないんですが、サッカーの試合を通じてつながりつつ、ファンの方々が望んでいるものを形にしていく感じなんですか?
四方:そうですね。試合をコアにしていますけど、その周囲にチャンスがあるのかなと思ってます。今までクラブと接点のなかった人たちが、例えば先ほど話に出た『キャプテン翼』をきっかけに投資をするような気持ちでクラブとつながってくれることによって、試合にも興味を持ってくれるんじゃないかと考えています。
五十嵐:僕の中では、強いチームにファンが集まり、段階的にグッズが売れていくというイメージがあるんですよ。そうではなく、チームは存在しているけど、それ以外の部分からファンがついてくる感覚なんですよね。
四方:Jリーグはヨーロッパと比べたらレベル自体はそんなに高くないですが、これだけ盛り上がっていますよね。バックグラウンドや信念、信条というところでつながっている仲間がいるからだと思うんですが、それが国境を超えていくんじゃないかと思っています。
ファンに芝生を張る権利を与えた「プロセスエコノミー」秋山:四方さんはもともとシンガポール在住だったんですよね。
四方:今も住んでいます。グローバル人材をつくるビジネスのオーナーをやりつつ、鎌倉インテルのオーナーもやっています。海外ではサッカーをやっているだけで友達ができ、ネットワークが増えて、それが仕事につながるんですね。これはもはやスポーツを超えた存在だと思いました。だけど、サッカー界の真ん中にいる選手や経営者はこの価値にそこまで気づいていない。私の大好きなサッカーにはもっと価値があるんだというのを具現化したい、ならばゼロからやってみようと考えたのが鎌倉インテルを立ち上げたきっかけでした。
岩本:でも、そこから自分たちのスタジアムまでつくっちゃったんですよ。なかなかできないですよ。
五十嵐:それはすごいな。カッコいいな~。
秋山:スタジアムもクラウドファンディングなどいろいろな方法で資金を集めてつくったんですか?
四方:そうですね。スポンサーさんがいたり、寄付のような形もあったり、それでも足りないからクラウドファンディングをしようと。トウモロコシ畑の中に野球場をつくった映画『フィールド・オブ・ドリームス』のサッカー版、鎌倉版を目指したら、「いざ鎌倉」ということで人が集まってくれました。
田中:サポーターの皆さんと一緒にスタジアムをつくっていく、という概念を持つクラブは見たことがありません。実際にサポーターの方々が来て、一緒につくっている過程を配信してさらにみんなで楽しんじゃおう、というのが非常に面白いと思いました。
岩本:芝生を張るのを業者に頼むのではなく、イベントにしてファン・サポーターの方々と一緒に張ったんですよ。
四方:スタジアム名は「みんなのスタジアム」です。今はネーミングライツをつけて「みんなの鳩サブレースタジアム」なんですけど、FiNANCiEのトークンを買ってくれたファンの方に、芝生を張る権利を与えたわけです。労働力の搾取のように聞こえるかもしれないですけど、皆さん「えっ、やらせてもらっていいんですか!」とうれしそうにやってくださいます。労働と捉えるか、イベントと捉えるかの違いですし、「自分がこのエリアを張った」となれば、むちゃくちゃ思い入れができるんですね。
五十嵐:業者に頼んだほうが手っ取り早いし楽だと思うんですけど、そういう発想になるのがすごいですよね。
秋山:実際に参加された方の反応や、その後の反響はいかがですか?
四方:貢献してくれた方のお名前を壁に掲げているんですが、完成したタイミングでそれを見にきて、写真を撮ってSNSにアップしてくれるんですよね。そうするとその周囲の方々がリアクションをし、そこで認知されますよね。これがめちゃくちゃ大きくて。「プロセスエコノミー」というんですが、プロセスを一緒につくっていくことで、完成したタイミングですでにファンがいるんです。過程が価値になるんですよ。
寺社仏閣とコラボ。鎌倉の大仏をカードにして販売五十嵐:今まではもともとチームがあって、強いから、ブランド力があるから売れていくという発想だったけど、まるっきり逆の発想ですよね。ファンが集まって強くなっていく形がつくれるということですよね。
田中:そうですね。加えて、みんなで盛り上げていこうという中の一つに、NFT(非代替性トークン)と呼ばれるものもあります。
五十嵐:デジタルに所有権とか数量の制限をかけて、価値を与えて自分のものにするということですよね。
田中:そうですね。そうやって所有者を特定できて、かつ数量が限定されていながら、持っている人たち同士がつながっていくこともできます。鎌倉インテルに関していうと、地域を絡めたNFTの展開も非常に新しいと思います。
秋山:どういった形でNFTを使われるんですか?
四方:イメージとしては、プロ野球チップスやJリーグチップスのカードがあるじゃないですか。あれの鎌倉インテル版をつくろうと考えたんですけど、神奈川県2部の選手を誰が知っているの?という話になり、じゃあ何が私たちの強みなのかと考えた時に、鎌倉という街にはすでに多くのファンがいるんですよね。鎌倉の大仏とかめちゃくちゃ有名じゃないですか。じゃあ大仏のある高徳院というお寺さんに行って、ご住職に説明をして、大仏と鎌倉インテルがコラボしたNFTのカードを作って販売しています。
岩本:説明しに行って、よく了承を得られましたよね。
四方:これがけっこう意外で、われわれもどうやって神社仏閣さんと仲良くなっていこうかと考えていたんですけど、どうしてもNFTを一緒にやりたいという思いを伝えたら、多くの方が興味を示してくださったんですよ。コロナ禍で観光客、特にインバウンドが減っている中、何か新しいことをしなければならないというのは先方も考えていたようです。国境、国籍を超えていけるデジタルのサービスとは相性がいいんじゃないかということで、神社仏閣の世界でも新しいことをやろうとしてくれたことに未来を感じましたね。
デジタルの価値を可視化し、ファンの力が乗るようなプロダクトに秋山:今後スポーツとFiNANCiEがさらなる相乗効果を生み出すために、どんな展開を考えていらっしゃいますか。
田中:まずはデジタルの価値をどんどん可視化し、そこにスポーツのコンテンツ、ファンの力が乗るようなプロダクトに改善していきたいと思っています。もう一つは、世界中のファンの人たちが、日本、または世界のチームを応援するようなプラットフォームにしていきたいと思っています。
岩本:ぜひお願いします。それにむちゃくちゃ期待しています。
秋山:鎌倉インテルの今後の展開も非常に気になります。
四方:今まさに第2回の追加ファンディングをやっていまして、まとまって一定の金額で、比較的お得な形でトークンを買っていただける機会になっています。トークンって何?と疑問に思っている方も大勢いると思いますが、鎌倉インテルや南葛SCのトークンをまずは買っていただいて、仲間になっていただきたいですね。
<了>
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JFN33局ネットラジオ番組「FUTURES」
(「REAL SPORTS」は毎週金曜日 AM5:30~6:00 ※地域により放送時間変更あり)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜、岩本義弘
Webメディア「REAL SPORTS」がJFNとタッグを組み、全国放送のラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界からのリアルな声を発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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