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なぜ今年のプロ野球は「大型連勝」「大型連敗」が頻発するのか? シーズン終盤に絶対必要なこと

REAL SPORTS / 2022年9月2日 17時0分

2022年のプロ野球もいよいよ終盤戦に突入した。熾烈(しれつ)な優勝争い、クライマックスシリーズ進出争いが繰り広げられる中、ここまでのリーグ戦を振り返ってみると、「大型連勝」「大型連敗」が頻発していることに気が付く。残るシーズンでチームにはいったい何が求められるのか考察したい。

(文=花田雪、写真=Getty Images)

大混戦のペナントレース。混沌とする優勝争い、CS争いの行方は…

プロ野球レギュラーシーズンも残り1カ月あまり。優勝争い、クライマックスシリーズ進出争いも佳境にさしかかっているが、今季はセ・パ両リーグともに先の読めない戦いが続いている。

セ・リーグ首位の東京ヤクルトスワローズは一時、独走体制を築いたが、横浜DeNAベイスターズが猛追。最大17.5ゲームあった差が8月25日時点で4にまで縮まった。しかし、そこからの直接対決でヤクルトが3タテ。首位の意地を見せゲーム差を再び広げている(9月1日時点で6)。

パ・リーグは優勝争いがさらに混沌(こんとん)。開幕直後は福岡ソフトバンクホークスが走り、4月中盤以降は東北楽天ゴールデンイーグルスが走った。しかし、昨季最下位の埼玉西武ライオンズが徐々に貯金を増やすと7月に首位に立つ。昨季優勝のオリックス・バファローズも地道に勝ち星を重ねており、首位・西武から4位楽天までのゲーム差はわずか3.5しかない(9月1日時点)。

セ・リーグはヤクルトが断然優位とはいえ交流戦前後のような勢いはなく、パ・リーグはゲーム差を見ても分かるようにどこが抜け出すかまだまだ分からない。

そんな「大混戦」を象徴するデータがある。

負け始めると、止まらない。勝ち始めても、止まらない。

以下に、12球団それぞれの今季最大連勝と最大連敗を記してみた。

■2022年12球団最大連勝/最大連敗
ヤクルト   8連勝/7連敗
DeNA     8連勝/4連敗
阪神     6連勝/9連敗
巨人     6連勝/6連敗
広島     6連勝/7連敗
中日     4連勝/7連敗
西武     5連勝/7連敗
ソフトバンク 8連勝/5連敗
オリックス  6連勝/7連敗
楽天     11連勝/5連敗
ロッテ    5連勝/5連敗
日本ハム   7連勝/7連敗

12球団で5連敗以上を記録していないのはDeNAのみ。逆に、5連勝以上を記録していないのは中日ドラゴンズのみだ。このように、今季のプロ野球は「連勝」「連敗」が多い傾向にある。

大型連勝、大型連敗は当然ながら順位を大きく変動させる。通常、優勝するようなチームには「大きな連敗をしない」ケースが多くみられるが、今季に限ってはそのセオリーは通じないかもしれない。

どの球団も負け始めると、止まらない――。
逆に、勝ち始めても、止まらない――。

その要因を考えてみると、まず思い当たるのがセ・パ両リーグともに「飛び抜けたチーム」がいないことが挙げられる。

絶対的な総合力を持った球団が見当たらない中で、頼りになるのは?

昨季、史上初めて両リーグともに前年最下位チームが優勝したことからも分かるように、現在の球界には絶対的な力を持った球団が見当たらない。チームの“総合力”で他球団をねじ伏せることができなければ、当然ながら何か歯車が一つかみ合わないだけで一気に崩れてしまう。

そんなとき、頼りになるのが「個」の力だ。

顕著な例が今季のヤクルトだろう。歴史的なペースで本塁打を量産し、史上最年少での三冠王獲得も現実味を帯びてきた村上宗隆。彼が4番にドカッと座っているだけでも、他球団にとっては脅威だし、チームにとっては大きなアドバンテージになる。

ちなみに、セイバーメトリクスにおける「そのポジションの代替可能選手と比較してどれだけ勝利数を上積みしたか」を示すWARという指標で、村上の数字は9.4(9月1日時点)。たった一人の力で、チームに10勝近くをもたらしている計算になる。

逆をいえば、「村上の離脱」はヤクルトにとっては致命傷になる。もちろん、どの球団も主力の離脱はチーム成績に大きく直結する。今季のように「総合力で抜きんでた球団」がいなければなおさらだ。

せっかくの勢いをそがれる不測の事態は、残るシーズンでも起こり得る

その意味では、今季の「混戦」を演出している最大の要素は「コロナ禍」かもしれない。

第7波による感染急拡大はプロ野球界にも直撃。各球団で集団感染が起き、「選手の不足」による公式戦中止という事態も起きた。

ヤクルトでは7月8~10日にかけて計27人が陽性判定を受け、公式戦が中止に。同13日に再開したが、そこから5連敗を喫するなど、「コロナ」の影響をもろに受けてしまった。

阪神も、開幕9連敗から持ち直し、借金を完済した8月のタイミングで大山悠輔、近本光司、中野拓夢といった主力が相次いで陽性判定を受けて離脱。8連敗を喫するなど、勢いをそがれてしまった。

主力を筆頭とした「個」の力がより重要な戦局にもかかわらず、「コロナ」という見えない敵とも戦わなければいけない。

「完全に防ぐこと」が不可能なだけに、ここから1カ月余りのレギュラーシーズンでも、そういった不測の事態は十分起こり得る。おそらく、どの球団もそれは理解し、覚悟もしているはずだ。

そこで必要なのが「準備」だ。

「何が起こるか分からない」のは仕方ない。だからこそ…

例えば阪神は現在、佐藤輝明、大山悠輔といった主力打者に複数ポジションを守らせている。これもおそらく「万が一」のための備えだろう。

誰かが抜けたら、誰かがその穴を埋めなければいけない。

もちろん、このままシーズンが終わるまで、離脱者もなく、万全の戦力で戦い抜ければそれに越したことはない。ただ、現実問題、「何が起こるか分からない」のが今、日本が置かれている現状だ。

極端な話、優勝争いを左右するような大一番で、1軍での実績がほとんどない若手を起用せざるを得ないケースも出てくるかもしれない。

「先が読めない」のは仕方がないが、だからといって何も備えをしないわけにはいかない。

ここからの1カ月、各チームの首脳陣には最悪の状況も想定しながらチームをマネジメントすることが求められるし、選手には1軍、2軍問わず心身ともに「いつでもいく」備えをしておく必要がある。

先の見えないペナント争いも、あと1カ月ほどで決着を迎える。

文字通り「総力戦」となるであろう残り試合、最後に笑う球団はどこになるだろうか。

<了>









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