ナイキvsアディダスの勢力争い、カタールW杯はどのスパイクを履く選手が多い?【全830選手を大調査!】
REAL SPORTS / 2022年11月23日 13時30分
ついに開幕したFIFAワールドカップ・カタール大会。世界王者の称号を懸け29日間で64試合を行われるわけだが、その裏でもう一つの“熱戦”が繰り広げられている。選手たちが履くスパイクメーカーの勢力争いだ。頂点に立つのは、アディダスか、ナイキか、はたまた第3勢力か。大会に出場する32チーム全830選手のスパイクを調査した。
(文=池田敏明、写真=Getty Images)
総勢830人を大調査! 最も履かれているスパイクメーカーはやはり…?11月1日の日本代表を皮切りに、FIFAワールドカップ(W杯)・カタール大会に出場する各チームが順次、本大会に出場する最終メンバーを発表し、日本時間11月15日までに全32チームのメンバーが出そろった。招集が確実視されていた選手のまさかの落選や、代表歴の浅い選手のサプライズ招集、そしてメンバー発表の前後にけがをしてしまった選手の無念の招集外や離脱など、大会開幕前からすでにさまざまなドラマがあった。
今大会では各チームが招集できる人数が従来から3人増えて最大26人となり、大半のチームが上限まで招集した。イランはメンバー発表時から、フランスは離脱したカリム・ベンゼマの代替招集をしていないため、25人体制となった。大会に参加するプレーヤーは総勢830選手。10代の新星から30代後半の大ベテラン、世界的プレーヤーから知名度がそれほど高くない選手まで、多彩な顔触れが大会を彩ることとなる。
選手が出そろうと、気になるのはその足下。誰がどのメーカーのスパイクを履いているのか、最もシェアの高いメーカーはどこなのか、というのは意外と注目してしまうところだ。だからこそ「招集メンバーにはサプライヤー枠がある」「ユニフォームサプライヤーのメーカーと契約している選手が10番を背負う」といった都市伝説的な話も話題になるのだろう。
いずれにしても、どのメーカーのスパイクが履かれているのかは気になるので調査してみた。メンバーは11月20日時点のもので集計。各選手のスパイクは可能な限り直近のプレー中の画像を目視して確認している。
半数以上の選手が着用するのは…? エンバペ、ロナウド、ハリー・ケインもスパイクといえばナイキとアディダスが2大メーカー、これらに次ぐのがプーマというイメージだが、今大会で最も多くの選手が履いているのはナイキのスパイクだ。その数は428人で、占有率は51.57%。つまり、大会に出場する選手の半数以上がナイキのスパイクを履いていることになる。有名なところではキリアン・エンバペ(フランス)やクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)、ハリー・ケイン(イングランド)、ケヴィン・デ・ブライネ(ベルギー)など。当然ながらほとんどの国で“ナイキ派”が主流を占めており、エクアドルは26人中20人がナイキを履いている。
他にもサウジアラビア、オーストラリアは19人、ベルギーは18人、ウルグアイ、コスタリカは17人がナイキを着用。驚くべきことに、アディダスを生んだ国であり、ユニフォームサプライヤーもアディダスが務めるドイツも、スパイクに限れば15人がナイキでアディダスを上回っている。
ただ、2018年ロシア大会の時は736人中471人、実に63.99%がナイキだった。出場国も人数も異なるので一概に比較はできないが、4年前に比べると占有率はかなり下がったことになる。
スペイン、アルゼンチン、オランダはアディダス多数派アディダスの着用者は273人。占有率は32.89%となっている。リオネル・メッシ(アルゼンチン)がアディダスの“顔”といえる選手で、他にもマヌエル・ノイアー(ドイツ)、ダニエウ・アウヴェス(ブラジル)などが着用している。
チーム別に見ると、ユニフォームサプライヤーもアディダスであるスペインが16人で最多。ナイキの10人を大きく上回っている。ペドリやマルコ・アセンシオ、アルバロ・モラタらがアディダスを着用している。ただ、「靴ひもの結び方を知らない」ということで足下に焦点が当たりがちなガビはナイキの着用者だ。
その他、アルゼンチンやオランダ、セネガル、ポーランドもナイキよりアディダスの方が多数派で、ウェールズとカメルーンはナイキとアディダスが同数。アルゼンチンにアディダス派が多いのは、やはりメッシの影響だろうか。
ちなみに、ナイキの母国であるアメリカの場合は、ナイキの15人に対してアディダスは7人。ドイツのような逆転現象は起こらなかったが、アディダスとしては大健闘といえるかもしれない。
ネイマールはプーマのスパイクで臨む初のW杯にプーマの着用者は98人で、占有率は11.81%。2020年にナイキとの契約を解消し、プーマに乗り換えたネイマール(ブラジル)にとっては、同メーカーのスパイクで挑む初のW杯ということになる。他にもメンフィス・デパイ(オランダ)やラファエル・ヴァラン(フランス)、ルイス・スアレス(ウルグアイ)などがプーマを着用する。
国別に見ると、スイスは10人がプーマを着用しており、アディダスの3人をはるかに凌駕(りょうが)し、ナイキの13人に迫る勢いを見せている。セネガルは8人でナイキの7人を上回り(アディダスは10人)、セルビアは7人でアディダスの5人を上回る(ナイキは14人)。3カ国ともユニフォームサプライヤーがプーマなので、選手との関係も強いのだろう。
ちなみに、2018年ロシア大会の時は、アディダス着用者が196人で26.63%、プーマ着用者は39人で5.3%。両メーカーとも占有率を大きく高める結果となった。
異彩を放つ日本代表のスパイク事情。アシックスとアンブロは全体でも1人だけほとんどの国がこの3メーカーの着用選手で占められ(合計占有率は96.27%)、たまにニューバランスやアンダーアーマー、ロットのスパイクを履いている程度という中、異彩を放っているのが日本代表だ。ナイキ、アディダス、プーマに加え、ミズノ、アシックス、アンブロと、実に6メーカーの着用選手がいるのだ。
内訳は、ナイキが長友佑都や冨安健洋、鎌田大地ら8人で、アディダスは浅野拓磨、南野拓実、久保建英の3人。プーマが川島永嗣や遠藤航、伊東純也、三笘薫ら8人いるのも傾向としては特殊だ。国産メーカーはミズノが権田修一、吉田麻也、守田英正、相馬勇紀、田中碧の5人、アシックスは山根視来が着用。その他に柴崎岳がアンブロを履いている。ちなみに、830人の中でアシックスは山根だけ、アンブロは柴崎だけ。両メーカーは大会出場国のユニフォームサプライヤーにもなっていないので、彼らのおかげで今回のW杯に参加できた形になる。
ちなみに、日本では5人が履いているミズノのスパイクは、全体で見ると14人となっている。意外なことに、韓国では日本より多い7人がミズノを着用しているのだ。クォン・ギョンウォン(現ガンバ大阪)やキム・ヨングォン(元FC東京、大宮アルディージャ、G大阪)、ナ・サンホ(元FC東京)など、Jリーグでプレーした経験のある選手が多いことも関係しているのかもしれない。
なお、残る2人はチュニジアのイッサム・ジェバリとオーストラリアのアジズ・ベヒッチ。仮にスペイン代表にセルヒオ・ラモスが選出されていれば、このビッグネームがミズノのスパイクでW杯に出場していただけに残念でならない。
日本対コスタリカ戦で実現するか? ここだけの唯一無二のマッチアップ日本以外にもう一つ、独自の傾向を見せる国がある。W杯の常連であるメキシコだ。ナイキ14人、アディダス9人、プーマ1人と、ここまでは普通だが、ロドルフォ・コタが「Pirma(ピルマ)」、エクトル・モレノが「CHARLY(チャルリー)」という聞き慣れないメーカーのスパイクを着用している。
これらはいずれもメキシコのスポーツメーカーで、ピルマは1990年、チャルリーは1977年の設立と、それなりの歴史を持っている。メキシコ国内での知名度も高く、ピルマはネカクサやプエブラ、チャルリーはパチューカやサントス・ラグナ、レオンなどメキシコ1部リーグのクラブのユニフォームサプライヤーとなっている。ちなみに、2018年ロシア大会ではアルフレド・タラベラがピルマを着用していたため(今大会ではアディダス)、同メーカーにとっては“2大会連続”のW杯出場となる。
ピルマを着用する選手はもう一人いる。コスタリカ代表のジョエル・キャンベルだ。9月の代表の試合まではナイキを着用していたが、直近の国内リーグの試合(メキシコのレオン所属)ではピルマに変わっていたので、ごくごく最近、契約を変更したのだろう。
キャンベルはコスタリカの主力であり、左サイドからドリブルで切り込むプレーを得意としている。グループステージ第2節の日本戦に出場した場合、主に対峙(たいじ)するのは右サイドバックの選手となる。山根が出場した際には「アシックス対ピルマ」という今大会のグループステージで唯一無二のマッチアップが実現することになるので、ぜひ両者の足下にも注目してほしい。
<了>
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