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パリSGにイブラヒモビッチ新SD誕生!? エンバペに移籍を勧め、会長を怒らせた騒動の真相

REAL SPORTS / 2023年2月14日 12時0分

ついに“ミラノの支配者”が帰ってきた。昨季終了後に行った膝の手術のリハビリを経て、試合復帰間近のズラタン・イブラヒモビッチ。彼の帰還は、イタリア・セリエA連覇を目指すACミランにとって大きな追い風となるはずだ。そこで本稿では、昨年刊行された書籍『アドレナリン ズラタン・イブラヒモビッチ自伝 40歳の俺が語る、もう一つの物語』の抜粋を通して“イブラ”の偉大さを改めて振り返る。今回は、パリ・サンジェルマンの会長とエースとの過去のやりとりについてイブラヒモビッチ本人が語り尽くす。果たしてイブラヒモビッチ・スポーツディレクターの誕生はあるのか?

(文=ズラタン・イブラヒモビッチ、訳=沖山ナオミ、写真=Getty Images)

「会長、もしミランと契約更新しない場合は…」

俺はパリ・サンジェルマンに自分を売り込んだ。これは本当の話だ。だが、サッカー選手としてではなく、スポーツディレクターとしてだ。会長のナーセル・アル・ヘライフィーに電話して提案したんだよ。

「会長、もしミランと契約更新しない場合は、パリSGに行ってチームをまとめてあげますよ」

ナーセルは笑っていたが、ノーとは言わなかった。ミーノ(編注:イブラヒモビッチの元代理人の故ミーノ・ライオラ)も承諾したぜ。「おまえに最適なポジションじゃないか。そりゃ、行くべきだ。だが、今はそこまでにしとけ」

ミーノは俺がミランを去る気がないことを、ちゃんとわかっていた。俺とミランは相性がいいからな。たとえレアル・マドリードやバルセロナからオファーがあったとしても、俺はこう答えるだろう。

「ミーノ、俺は行かないぜ。今、ミランで最高なんだよ。移る必要ないだろう?」

俺は今さら自分を見せつける必要はないんだ。今はただ、受けたものを返しているだけ。自分が持っているものを若い選手たちに与え、彼らが成長して明日のミランを前進させてくれればいい。

ミーノは俺とミランを引き離すことができないことをよくわかっている。だが、万一ミランとの契約延長が実現しない場合は、俺の将来の仕事としてパリSGのディレクター職がふさわしいということに同意してくれた。

パリSGの選手たちもそう思っている。ある選手に言われたんだよ。「ズラタン、チームを回復させて秩序を取り戻すことができるのはあなただけですよ」

他の選手はこう言った。「ズラタン、あなたがいればロッカールームでこんなことは起こらなかったのに」

確かに魅力的なプロジェクトだ。それでも、引退を考えたときに感じる恐怖心やパニックを拭い去るにはまだ足りなかった。言うは易く行うは難し。パリに行って練習を見学したところで、「俺はなぜ引退するのだろう?」と絶対何度も自問するはずだ。

そして俺はミランとの契約を延長した。とはいえ、いつか具体的なチャンスがあったら、そのときは引退もそれほど難しく感じないかもしれない。もちろん、ピッチ上で感じるようなアドレナリンは湧き起こらないだろうがな。

ミーノはすでに世界に向けてアナウンスした。「ズラタンの将来はディレクターだ」と。

いずれにしても、パリSGに選手としてではなくスポーツディレクターとして自分をオファーしたことは事実だ。

かつて、パリSGは48時間で変貌した。異次元クラブになった

その後、ナーセル会長がひどく憤慨して電話をかけてきた。「ズラタン、キリアン・エンバペにレアル・マドリードに行くよう勧めたそうじゃないか。それは事実か?」

嘘だと否定してもよかったが、俺は誠実に答えた。「ナーセルさん、そのとおりです」。「なぜだ?」彼は聞いた。

「パリSGは規律が甘いですからね。エンバペは成長して次のステップに進む必要がある。だが、パリには適当な人物がいないから、この環境で彼が成長するのは難しいでしょう」

もっと厳しさがあれば、全員が走るだろう。練習に遅刻してくる選手もいなくなるはずだ。個人が好き放題やることも許されなくなる。

もし俺だったら、選手たちにやるべきことをお願いするのではなく、命令する。別に(現職の)レオナルドを責めているわけではない。彼のことはむしろ好きだ。俺をパリSGに連れてきてくれたのは彼だしな。彼に問題があるわけではない。だが、俺と彼は違う。俺はお願いするのではなく、命令する。

かつて、パリSGは48時間で変貌した。ごく普通のクラブが今のような異次元クラブになった。ここからさらに進化させるためには、強いディレクターが必要だろう。そうでなければ、スター選手が集結するチームを運営することは不可能だ。わかりやすく説明するとこういうことだ。

給料は払ってくれるか? イエス。
リーグ1で優勝できるか? イエス。
パリの住み心地はいいか? イエス。

40人の選手は誰も出ていきたがらない。それは、たとえ出番がなくても居心地がいいからだ。俺だったら、全員を焼き網に載せてやる。給料を支払っているのに最高レベルで働かないやつは残さない。これが秩序というものだろう?

エンバペにアドバイスしたことは「出ていくことを考えろ」

俺がエンバペにアドバイスしたことは「出ていくことを考えろ」。俺がナーセル会長にアドバイスしたことは「出ていかせないことを考えろ」。この二つが俺の本音のアドバイスだ。いつもどおり、思ったことを話しただけのこと。

エンバペとはマルコ・ベッラッティの結婚式で知り合ったんだ。

「ズラタン、僕はどうすべきだと思いますか?」

「レアルに行くのがいいんじゃないか。レアルにはパリSGとは違う哲学と行動規範があるからな」

環境、そして周囲にいるチャンピオンたちから学ぶことは価値がある。パリSGにはたくさんのスター選手がいるが、犠牲的精神に欠けているんだよ。必要ないからな。能力の半分しか使わなくても勝てるからだ。だが、ピラミッドの頂点が脆弱だったら、そのうち基礎も弱まっていくだろう?

もし、ある選手が命令を受けたら、「わかりました」と答えるだろう。それなのにその選手がナーセル会長に不満を漏らし、ナーセルも同意するとしたら、スポーツディレクターは飛び越されたことになる。

もし俺がスポーツディレクターだとして、選手がそんな態度を取ったら、それは終わりを意味するぜ。保証するよ。






<了>





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