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「原爆が戦争止めた」は“神話”=根拠乏しい米国防長官見解―アジアの核拡散に歯止めを

Record China / 2024年5月14日 6時30分

米元帥「野蛮人並みの倫理基準」

実は、米軍関係者の一部には、原爆投下は不要だったし、倫理的な面からは回避すべきだったとする見方が共有されていた。ルーズベルト、トルーマン両大統領の軍事顧問を務めたレイヒー海軍元帥は、戦後次のように語っている。長くなるが引用する。

「広島と長崎に対してこの残忍な兵器を使用したことは対日戦争で何の重要な助けにもならなかった。日本は既に打ちのめされており、降伏寸前だった。あれを最初に使うことによって、われわれは野蛮人並みの倫理基準を選んだことになると感じた。あのように戦争を遂行するようには教えられなかったし、女、子供を殺すようでは戦争に勝利したとは言えない」(ガー・アルペロビッツ著「原爆投下決断の内幕」による)。戦後、日本を占領した連合国最高司令官総司令部(GHQ)のトップを務めたマッカーサー将軍も、原爆使用に否定的な見解を表明。欧州戦線で連合国軍の司令官を務め、後に大統領に就任したアイゼンハワー将軍に至っては、原爆投下前の同年7月の時点で、トルーマン大統領に原爆使用の見送りを進言したと言われる。

とはいえ、米国世論の大勢は原爆投下に肯定的で、「野蛮人並みの倫理基準」による所業とする見方を受け入れることはありえない。このため、米政府は「原爆投下により日本は降伏した」「終戦が早まったことにより、日本本土上陸作戦で予想された米兵士100万人の死傷を回避した」などの神話を積み重ね、正当化を進めた。それは戦後79年が経過した現在も変わらない。オースティン長官が個人的にどのような考えを持っているかは不明だが、国防総省トップとして、従来の公式見解を踏襲するほかなかったのだろう。

核保有国に囲まれる日本

核兵器は広島、長崎に投下された後、実験は何度も繰り返されたが、幸いなことに実戦では使用されていない。しかしウクライナへの侵攻を続けているロシアのプーチン大統領は、9日の対独戦勝記念日のパレードでの演説で、「(核戦力は)常に臨戦態勢にある」と述べ、ウクライナや欧米諸国を威嚇したという。

そして、アジアの地図を見れば、日本が核保有国に囲まれている現実に改めて気づく。ロシアはもとより中国、そして北朝鮮。日本の周辺国のうち、核保有国でないのは韓国と台湾だけ、というのが実情だ。

目を南アジアに転じれば、過去何度も戦火を交えたインドとパキスタンは、共に20世紀末に核実験を行っており、核戦争が最も切迫しているのはこの両国と言われた時期もあった。まさかとは思うが、過去にはミャンマーの核開発疑惑が報じられたこともあった。西アジア(中東)では、公式には表明していないもののイスラエルの保有が確実視されているほか、イランのほかシリアにも核開発の疑いがあるという。

日本も米国の核の傘に守られているので、他国の核開発の動きをとやかく言える立場にはないという見方もあろう。しかし、核兵器は究極の非人道的兵器であり、どこかで一度使用されると一気にハードルが低くなって他の紛争地域でも使われやすくなる恐れがある。テロリストの手に渡ることも心配だ。「唯一の被爆国」と自国の立場を特別視するのは好きではないが、被爆の惨禍を実体験に基づき伝えられるのは日本だけだ。政府には、特にアジアの核拡散に歯止めをかけるべく、関係国への働きかけを強めてほしいと願う。

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