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佐賀・玄海町の文献調査受け入れで「核のごみ」処分の幅広い議論を期待、中韓の動向にも注目

Record China / 2024年5月29日 7時30分

しかし昨年10月、地質学などの専門家約300人が「日本列島は複数のプレートが収束する火山・地震の活発な変動帯。今後10万年もの間、核のごみを安定的に保存できる場所を選定できないことは地球科学を学ぶ者にとっては、容易に理解できる」として、地層処分の見直しを求める声明を発表し、波紋を広げている。

確かに、地盤の安定している北欧とは異なり、日本列島は太平洋プレートなど四つのプレートが衝突している世界でも珍しい場所。10万年前の地図を見ると、日本列島の姿は現在とは大きく異なっており、これからの10万年でも大きな変動があると予想される。また、この問題に詳しい研究者の古儀君男氏によると、今後10万年に日本列島で起こりうる自然現象として、1.東日本大震災クラスの巨大地震が数百回 2.噴出物の量が100立方キロメートル(琵琶湖の容積の4倍)を超える超巨大噴火が10回 3.地盤の隆起が最大200メートル―などが想定されるという。これらの数字を前にすると、私など「地層処分など無理!いつかは地殻変動で保管施設が破壊され、放射性物質が漏れ出すだろう」と思ってしまう。

では、地層処分以外の方法はあるのか。かつて、地盤の安定している開発途上国に核のごみを埋めてもらったり、ロケットで宇宙に運んで放出したりといった方法も検討された。しかし前者は、帝国主義の時代ならともかく、現代ではとても国際社会で受け入れてもらえないだろう。後者は良い方法のようにも見えるが、万一ロケットの打ち上げに失敗した場合のリスクが大きすぎる。

原子爆弾の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーは、核のごみ問題は「原子力利用の基盤が整備されれば十分に解決可能」と楽観的な見通しを持っていたという(岩波ジュニア新書「核のごみをどうするか」)。放射性廃棄物を無害化する技術が早晩実用化されると見ていたわけだ。しかし80年たっても、そのような魔法の杖は存在しない。

地層処分に代わる適当な処理方法はなかなか見当たらないが、一方で一度決めたやり方に固執するのもいかがなものか。先の専門家の声明は、最終処分法は「科学的根拠に乏しい」ため廃止し、地上での暫定的な保管を含め、中立的な第三者機関でより安全な処分法を再検討するよう求めている。玄海町の決断で核のごみへの関心が高まっている折でもあり、政府には柔軟な対応を期待したい。

大陸で事故があれば日本にも影響

核のごみの処理で苦労しているのは日本だけではない。原発保有国で、最終処分場の場所が決まり、建設工事が始まっているのはフィンランドだけ。世界最大の原発大国であるアメリカでは、最終処分場の場所は決まったが、政治的な思惑から計画がいったん中止されたり、政権交代後に再開が決まったりといった迷走を続けているという。

万一核のごみが外部に漏れだした場合、その影響は当事国だけでなく周辺国に及ぶ可能性がある。日本の場合、アジア大陸で事故が起きると、偏西風に乗って放射性物質が列島に飛来する恐れがある。それだけに多くの原発が稼働している中国と韓国の動向には関心を持たざるを得ない。

原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、中国では現在、最終処分場の候補地として6カ所が選定され、ボーリング調査を含む地質調査を実施しており、2041年から今世紀半ばにかけての稼働を目指している。一方で韓国は、まだ文献調査にも至っていないという。

中韓両国とも日本よりは地盤が安定しているはずなので、地層処分に適した場所を見つけるのは可能かもしれない。とはいえ、本当に10万年もの間、安全に保管することはできるのか。両国に対しても、安全を最優先した対応を望みたい。

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