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中国で隆盛を極めた長距離寝台バスが「お役御免」になった事情とは―香港メディア

Record China / 2024年7月15日 23時0分

中国で隆盛を極めた長距離寝台バスが「お役御免」になった事情とは―香港メディア

中国では一時期、長距離移動のために寝台バスが多く用いられたが、現在では姿を見かけることがない。その背後にどのような事情があったのだろうか。

国土が広大な中国には、極めて長いバス路線も多い。12時間以上も走り続けるバス路線も珍しくないことで、1990年ごろから長距離寝台バスが運行する路線が多く登場した。車内には、鉄道の寝台車とは違って、車体の前後方向に体を横たえられる2段式の寝台が取り付けられている。一時期はこの長距離寝台バスがとりわけ多く利用されたが、現在では姿を見かけることがない。香港メディアの香港01はこのほど、長距離寝台バスをめぐる事情を紹介した。

寝台バスは江蘇省揚州市内の自動車会社と西安道路学院が共同開発して、運行開始は1989年ごろだったとされている。当時は長距離移動する人がまだ少なかったために寝台バスは試用段階で、料金が通常のバスよりも高価だったので敬遠した人もいた。

しかし、改革開放が進行すると、経済発展の加速や社会の流動性の増加で、長距離移動の需要が増えていった。中国では居住地の移動が厳しく制限されていたが、経済の発展に伴って都市部で大量の労働力が必要になったために、都市部に居住できる臨時戸籍の取得という形式が採用され、農村部住民が長期にわたり都市部で生活することが可能になった。このような、故郷である農村部を離れて都市部で仕事をする人は「農民工」と呼ばれる。

農民工は故郷に2度と戻らないわけではなく、例えば春節(旧正月)期には、何を差し置いても帰省して家族と共に年越しをすることを望む人が多い。そのために、春節の前後には毎年決まって、長距離移動のラッシュが出現する。

経済発展が速かった広東省の広州市や深セン市には、経済発展が遅れた内陸部から、多くの農民工が押し掛けることになった。300-400キロをバスで移動せねばならない人も急増した。高速道路はまだ、整備されていなかった。凹凸の多い道路を長時間走行するバスに乗り続けるのは実につらい。その点、寝台バスならば横たわったままで乗車できる。大きな荷物の持ち込みにも別料金は必要なかった。これらのために、寝台バスは中国全国に急速に普及していった。


労働力の輸出が多い四川省を例にとると、1990年代には省内の長距離旅客道路輸送業界が盛んに発展し、省内と広東省、広東省、福建省、江蘇省、新疆ウイグル自治区、甘粛省、河北省を結ぶ路線も開設された。年平均旅客輸送数は延べ200万人に達した。

しかし、寝台バスには安全面で大きな問題があった。構造上の理由で重心が高くなりすぎ、ただでさえ狭い通路に多くの荷物が置かれた。また、寝台バスは基本的に1ドア設計であることに加え、危険が発生した時に乗客の多くが眠っているため、脱出が困難だった。そのため、寝台バスの交通事故後の死亡率は特に高かった。

中国政府は2012年、寝台バスの生産と販売の暫定停止と、営業車としての登録停止を発表した。寝台バスが使える期間は通常で5年であるため、営業運転する寝台バスは17年ごろには姿を消したと思われる。

国の方針以外にも、寝台バスに対する需要そのものが徐々に減少していた。国が高速鉄道ネットワークなどの交通インフラの建設を加速したからだった。中国の高速鉄道ネットワークは現在までに、人口50万人以上の都市の9割以上に乗り入れるようになった。移動に必要な時間面でも乗車時の快適さでも、長距離寝台バスは競争力を完全に失ったと考えられる。

中国ではさらに、道路利用の長距離輸送者数そのものが大幅に減少している。これまで最も多かったのは12年の延べ355億7000万人で、23年には延べ110億1000万人と、ピーク時の3分の1以下になった。この現象も、鉄道路線の整備に伴うものと考えられる。

以上により、中国における長距離寝台バスの隆盛は、長距離移動の需要急増に交通インフラの整備が追い付かず、安全面の問題もまだ注目されていなかった時期の過渡的な現象だったと理解することができる。(翻訳・編集/如月隼人)

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