急成長を遂げた中国のスナック食品業界、課題も残り今後は大きな転換局面も
Record China / 2024年9月21日 10時0分
上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)は、「2024年スナック食品市場簡易分析リポート」を発表した。
人は「ちょと小腹がすいた」、「口がさみしい」などと言ってスナック食品に手を伸ばす。正式な食事を「生活必需品」とするならば、スナック食品は「食の娯楽品」とも言えるだろう。多くのスナック食品が流通するには、社会全体にある程度以上の経済の余裕が存在し、人々の家計にもある程度以上の余裕がある必要がある。そのような条件が整った中国ではスナック食品業界の成長が著しく、市場規模は1兆元(約19兆8000億円)を突破した。今後も急成長が続くのか。中国ならではの特徴があるのか。課題は何なのか。本稿は、上海に拠点を置いて市場分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司(MCR)による「2024年スナック食品市場簡易分析リポート」の主要部分に、一部で日本人読者向けの情報を追加するなどで再構成したものだ。
市場は急成長するも「圧倒的ブランド」は存在せず
スナック食品は種類が豊富で、消費者には「いつもとは違うものを試してみよう」という心理が比較的強く働く。またスナック食品が食べられるシーンも幅広い。それらの事情もあり、各メーカーのシェアは分散している。中国のスナック食品業界では、売上高のトップ5位までの企業の市場全体に占めるシェアであるCR5が15.8%に留まっている。
あるデータによると、中国に現存するスナック関連企業は12万社以上で、2023年1-11月の会社登記件数は前年同期比28%増の2万5000社に達した。同年の登記件数は過去10年で2番目のピークと見られている。一方で、消費者の間では「費用対効果の重視」が強まりつつあることから、節約志向の時流に乗って消費者に歓迎されたブランドが急成長する可能性も出てきている。
スナック食品を製造販売する企業は二つに分類することができる。一つは特定の商品ジャンルに専念して、そのジャンルを掘り下げて商品の種類を拡充する企業だ。、例えば絶味や周黒鴨は肉加工品を専門に扱い、桃李はパンやケーキを主に扱っており、いずれもそれぞれの分野で強いブランドイメージを確立した。
もう一つは商品ラインアップの幅を広げた総合スナック食品企業だ。例としては良品鋪子、三隻松鼠、来伊份、塩津鋪子などがある。ナッツ類、各種間食、ドライフルーツなど多岐にわたって商品を展開し、より多くの利益を得る余地を獲得してきた。
スナック食品愛好者の月収は5000元(約10万円)が19.3%、5000-1万元が43.5%(約20万円)、1万-1万5000元(約30万円)が27.2%で、5000-1万5000元に全体の約7割が集中している。年齢では21歳以下が3.4%、、22-30歳が34.9%、、31-40歳が50.4%、41-50歳が8.7%、51歳以上が2.6%で、青年層から前期中年層がスナック食品購入の主力層だ。比較的若い世代は考え方が活発で、新鮮な感覚を喜び面白いものを好むことが、スナック食品をよく食べることにつながっていると考えられる。性別では女性が7割程度で男性は3割程度だ。
健康志向の強まりがスナック食品に大きな影響
中国では人々の生活水準が向上するにつれ、食と健康の関係がますます重視されるようになった。そのために、人々が甘味料や減塩代替物、乳酸菌などについて積極的に理解しようとするようになり、スナック食品業界でも「健康」が大きなテーマになった。市場調査などを行う中国企業のCBNDataによると、スナック食品の安全性や健康に対する影響に対する関心の割合は61%に達した。また、高品質のスナック食品ならば、ある程度高価でもよいと考える人は80%以上に達した。
また、子どもや若者にとって間食は栄養摂取の重要な手段になっている。間食により摂取するビタミンCは全体の17.9%、カルシウムは9.9%、ビタミンEは9.7%を占めている。スナック製造企業側も製品にビタミンとミネラルを添加することで子供の栄養需要を満たそうとしている。中国では0-14歳の人口が2億5000万人以上だ。若い世代の親による、健康的で栄養のある子ども向けスナック食品への需要は大きい。
中見出しタイトル
中国のスナック食品の販売チャネルは、4度の大きな変革を経た。まず、1990年代には各ブランドが流通業者や売場を通じて販売していた。2000年代にはチェーン店販売が旺盛になり、10年代にはネット通販が台頭、20年代には量販チャネルでの販売が勢いづいた。
中国でのスナック食品の流通は今も実店舗販売が中心だ。23年には大規模店舗での販売が全体の40%以上を占めた。コンビニエンスストアや家族経営店の合計は約24%であり、ネット通販は約19.6%だった。ただし現在ではネット通販も伸びており、商品のカテゴリーによっては比較的急速な成長を示している。
20年代に盛んになった量販チャンネルとは、大型小売店が卸売店などの段階を省いて工場から直接に大量購入する方式だ。スナック菓子の需要が旺盛になる一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で経営不振の一部スーパーが閉店したことが重なり、スナック食品の量販チャンネルにチャンスがもたらされた。
中国では23年にスナック食品量販店数は前年比で190%以上増加して2万店を超えた。23年のスナック食品の量販規模は前年比150%増で700億元(約1兆3800億円)を超えた。17年時点では37億元(約731億円)だったので、17-23年には年平均112%で成長したことになる。
中国でのスナック食品の市場規模は、27年に1兆2378億元(約24兆4000億円)に達する見込みだ。ただし、成長は鈍化していく。その結果、メーカーは値下げをせざるをえないことになる。すると背後のサプライチェーン、物流輸送、原材料調達などの段階がいずれも影響を受けることになる。
また、中国特有の課題として、広い国土の各地で食習慣や味の好みにかなり大きな違いがある。そのため、地方で登場したスナック食品が全国規模で市場を開拓できた事例は今も少ない。各地の伝統的な食品や軽食類を土台にして、それに現代的な食品加工技術を駆使して、消費者に広く愛されるスナック食品を作ることは、企業が今後力を入れる方向の一つになるだろう。
勢いがある量販業者にはもろさも、追いかける動画利用のネット通販
スナック食品のメーカーは「小規模かつ分散」した状況だ。スナック食品業界は「強い品目、弱いブランド」と言われる。つまり、確固たる人気を持つ商品種はあるが、格段に強いブランドはないということだ。スナック食品メーカーは低価格で消費者を取り込むだけでなく、確固たる人気商品を登場させてより多くの忠実な顧客を形成する必要がある。
現在勢いがあるスナック食品の量販業者には、中間業者を介さずにメーカーから直接商品を調達するので、小売価格を低く設定できる。一般的な小売価格はスーパーなどよりも20%-40%も安い。ただし、大規模調達を前提とするビジネスモデルなので商品種のコントロールが難しく、爆発的な人気商品もない場合が多い。つまり真の競争力を獲得できていない。今後も利益率を上昇させられず、同時に規模拡大に問題が生じれば、資金チェーンが切断されやすいという問題がある。
一方で、現在は比率が比較的小さいネット通販では、新たな動きが出現した。ネット通販と言えば、淘宝や京東といった通販プラットフォームを介したルートが一般的だが、スナック食品の場合には動画配信プラットフォームの快手や抖音(ドウイン、中国版TikTok)を使う例が目立つ。消費者は面白い動画をまず楽しんでから、「これはよい」と思った商品を注文する。この方式は消費者が在宅でありながら、実店舗と同様に「その場の体験により衝動的に購入を決める」という効果をもたらしている。この動画配信プラットフォームを通じた販売は、スナック食品メーカーにとってますます重要な販売ルートになりつつある。(翻訳・編集/如月隼人)
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