なぜいま『論語』か〜早稲田大学教授・渡邉義浩さんに聞く
Record China / 2024年10月24日 15時20分
鄭玄、何晏から朱子までの儒家、江戸の伊藤仁斎、荻生徂徠らがいかにして孔子の思想を追い求めたか。そうしたことを紹介したくてこの本を書きました。
――渡邉教授が『論語』の研究を続ける理由はなんですか。
まず私は『論語』が好きです。そして一つは、高校の漢文の教科書づくりに参加しているため、『論語』をきちんと読んで理解しなければなりません。
もう一つは、『論語』の古注(南宋・朱熹が「論語集注」において広めた新注に対して、それ以前の注釈書をいう)の中で、一番きちんと残っているのは、三国時代の何晏が著した『論語集解』です。おかげで、曹操にしても諸葛亮にしても『論語』を読んでいるのだなというのが判明したことも大きいです(笑)
――『論語』は古代からアジア各国でも読まれていますが、国ごとの読み方の特徴はありますか。
日本は孔子との距離感があると思います。そして一番距離感が無いのは韓国だと思います。韓国では『論語』を信仰として読み、それを直接生活に結びつける意識が強くて、中国はその中間かなと思っています。もちろん、中国はたくさんの方がいるので、様々な読み方がされているのではと思います。
一方、私の考えでは、日本では『論語と算盤』を唱えた実業家の渋澤栄一が読んでいた『論語』は、割合と後世に出来上がった部分だと思います。ですから、信仰としてではなく、資本主義に向き合った時に、どう選んでいくのかを考えながら読んでいたと思います。
――21世紀の今、『論語』を読むことの意義についてどう考えていますか?
日本では自由とか民主主義とか、そういうヨーロッパ的な価値観が、私の小さい頃に信じられていました。しかし、今はそうした価値観が潰れてきて、さまよっている状況です。怪しげな新興宗教に入ってしまう人なども出ています。そういう意味では、日本人がずっと自分の考えの中心においていた『論語』をもう一度見直すというのは、大きな意義があると思います。
私は、『論語』などの漢学が「日本の背骨」を作ってきたと思っています。日本文学というと、仮名文字の方をイメージする人が多いですが、あれはあくまで「仮名」であって、「真名(まな)」は漢文で書かれています。西洋的な価値を見失いつつある現在、『論語』はもう一度見直さなければいけないと思います。
また、日本人には日本人の『論語』の読み方がありますので、それを中国の方に読んでいただくと、文明間の参照になると私は思います。(提供/CRI)
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