アジアは憎しみを乗り越えられるのか=80年前の激戦地・硫黄島で想う―平和的な事態打開策を!
Record China / 2024年10月29日 7時30分
日本人は「ゴキブリ」だった
日米両軍は、硫黄島に続いて沖縄でもこの年の4月から6月にかけて激しい戦いを演じ、日本側は軍人、民間人合わせ約20万人が犠牲になった。また、米軍は東京などへ一般市民を対象にした絨毯爆撃を続けたうえに、最後は原子爆弾を投下した。こうした激しい攻撃を繰り返した背景には、多くの識者が指摘するように、人種偏見と日本人への強い憎悪があったのは間違いない。
映画監督のオリバー・ストーンは、著書「語られなかったアメリカ史」で、この辺の事情を赤裸々に記述している。「アメリカ人は極めて深い憎しみを、兵士や民間人の別なく、日本人に抱いていた。ピューリッツァー賞受賞の歴史家アラン・ネビンスは『おそらくアメリカ史上、日本人ほど忌み嫌われた敵はいなかっただろう』と書いた」「多くのアメリカ人にとって、日本人は、ゴキブリ、ガラガラヘビ、ドブネズミ、つまり駆除すべき類の生き物に映っていたのだ」。
もともとの人種差別意識に加え、真珠湾奇襲や「バターン死の行進」などの捕虜虐待、カミカゼに代表される自殺攻撃などで、日本軍(人)のイメージは最悪のものとなっていた。それが米軍による度を越したとも思える軍事行動につながっていたのだろう。もちろん日本も、「鬼畜米英」などのスローガンで国民の敵対心をあおった。太平洋戦争は、双方の激しい憎悪がぶつかり合った戦いだった。
最悪の事態だけは回避を
終戦から間もなく80年。米調査会社ギャラップが今年3月に発表した世論調査によると、米国の成人の83%が日本に「好感を持つ」と回答し、カナダと並んで首位となった。80年という長い年月を経ているので驚きではないかもしれないが、ゴキブリ呼ばわりから好感度首位とは、えらい変わりようだ。国民感情だけでなく、日米同盟も一段と強固になっている。この事実は、一時は激しく対立していた国同士でも、時間をかければ憎しみを信頼に変えることは可能であることを示唆している。
今、アジア各地で続いている戦闘や、激しい非難の応酬が、簡単に終結に向かうとは思えない。イスラエルと周辺の諸国・地域との反目と憎悪は第二次世界大戦直後から続いていて極めて根深いものがあるし、インド・パキスタン関係も同様だ。韓国と北朝鮮、中国と台湾も、早期の関係改善は望み薄だ。
とりわけ心配なのが、これらの紛争や対立の当事国のいくつかが、核兵器を保有している点だ。もし武力衝突がエスカレートして、どこかで核が使われたら…より大きな戦いの引き金になりかねない。
すべての国が、日本と米国のように憎悪を信頼に変えられるわけではない。しかし、お互いが自制しながら相手の立場にも配慮すれば、最悪の事態を避けることはできるはずだ。青臭い考えかもしれないが、かつての激戦地・摺鉢山を眺めながら、そんな思いが去来した。
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