トランプ当選で中国の輸出業者こぞって「そうだ、ベトナムに行こう」―中国メディア
Record China / 2024年11月10日 12時0分
6日に投開票が行われた米国の大統領選でトランプ氏が当選したことで、中国の輸出業者の間では、ベトナムの視察がブームになっているという。写真はベトナムのホーチミン市で撮影。
6日に投開票が行われた米国の大統領選でトランプ氏が当選したことで、中国では中小を中心に輸出業者が大きな試練にさらされることになった。トランプ氏が発言してきた関税の大幅引き上げが実施されれば、会社が存亡の危機にさらされるからだ。一方で、ベトナム行きのツアーや航空券の売れ行きが伸びているという。中国の情報サイトの百度が関連記事を掲載した。
トランプ氏は選挙期間中に、米国に輸入されるすべての商品に10%以上の関税を課し、中でも中国製品には60%の追加関税を適用すると発言した。また、4年以内に中国からの電子製品、鉄鋼、医薬品などの輸入を段階的に停止することも提案した。
多くの中国の貿易業者が、実施されれば生き残りが難しくなると判断し、対策を模索している。典型的な方法がベトナムへの「転進」だ。米国が2018年に中国製品の関税を引き上げた際には、多くの中国企業がベトナムに生産拠点を移して、ベトナム製品として米国に輸出してきた背景もある。
ベトナムにある中国系企業に22年から駐在している劉勇海氏は、中国国内の友人から「視察に行きたい」という電話を次々に受けるようになった。またSNSのグループには「視察」に言及する書き込みが増えた。冗談と思われるが、「トランプ氏が当選を決めた日には、中国からハノイとホーチミン行きの航空券が売り切れた」とする噂も出現したという。
中国からベトナムへの「視察ツアー」では、現地の工場団地の見学などのほかにも、多くの場合には日程に観光が含まれている場合が多く、「大名旅行」の色合いもある。旅行会社は利益を多く出せるために、このような「視察ツアー」に力を入れている。
しかしベトナムでは中国のように産業チェーンが成立しておらず、鉄やプラスチックなどの素材は中国から輸入せねばならない。また、交通インフラの整備が遅れており、輸送コストも中国より割高だ。そのためベトナムでの生産コストは中国と同等か、場合によっては割高になる。コスト引き下げの要因である人件費も上昇しつつある。
トランプ政権により中国製品に対する輸入関税の引き上げが実施された場合と比べれば、ベトナムへの移転は「比較すればお得」ということになるが、トランプ政権がベトナム製品に対する関税を引き上げない保証はない。そのため、インドネシアあるいはマレーシア、フィリピン、中東地域での生産拠点設立を検討する業者もある。
前出の劉勇海氏の会社は、米国による18年の関税引き上げを機にベトナム工場を設置した。従業員30人で出発したが、現在は300人を雇用するまでに成長した。ただしベトナムでの投資はまだ回収できておらず、米国がベトナム製品への関税引き上げを実施すれば、会社は「存亡の危機」に陥るという。
中国企業にとっては、米国市場を補填する他の市場を開発する方法もある。例えば欧州市場だ。ただし、欧州は全体としては人口7億人の大市場ではあるが50カ国ほどに分かれており、各国の政策や消費者の好みも異なる。またここ数年間は消費者の購入も軟調だ。
東南アジアとアフリカは人口は多いが、人々の購買能力に制約があり、売れる物は多くの場合、低価格商品だ。中東には、戦乱などの恐れもある。
米国は購買能力が極めて強く人々の好みもばらつきが比較的少ない、中国にとっての格好の市場だった。輸出先が小規模市場に分散されれば、多様な製品を生産するために、生産ラインなどもより多く必要になり、それぞれの市場を開拓せねばならず、そのためにはそれぞれの市場での人員が必要になる。このことは、低価格商品を強みとしてきた小規模企業にとっては特に、耐えがたい負担であり、未知への冒険になる。
中国の投資コングロマリットである中国中信集団による単純な推計によると、米国が中国製品に60%の関税を課せば、中国の対米輸出は16%減り、輸出全体は2.3%減る可能性がある。すでに輸出業の廃業を決意した経営者もいるという。(翻訳・編集/如月隼人)
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