台頭する中国の大学、その背景と今後の見通しとは―米国メディア
Record China / 2024年12月17日 5時0分
世界の大学ランキングで、中国の大学の上位進出が目立っている。その背景とは何か、今後はどう推移するのだろうか。写真は中国の名門大学の一つの北京大学。
政治や外交を扱う米国ネットメディアの「ザ・ディプロマット」は12日付で「台頭する中国の大学」と題する記事を発表し、世界における中国の大学のランキングが上昇している状況を紹介し、その原因を分析し、今後を予想する記事を発表した。中国メディアも同記事に注目し、環球網などは同記事の概要を紹介する記事を、同日付で掲載した。以下の文章は、同記事の主要内容に、日本人読者のために情報を追加するなどして再構成したものだ。
中国のトップ2大学である清華大学と北京大学は、世界の大学ランキングでトップ10入りに近い、それぞれ12位と13位になった。中国の大学の評価の向上は一部のエリート大学だけではない。2018年の世界トップ100には清華大学と北京大学しかランクインしていなかったが、現在ではトップ50に4校、トップ100に7校、トップ200に13校がランクインしている。このような進歩は偶然ではなく、教育機関の学術や研究の質を高めるための中国の意図的な政府投資と政策努力が反映されている。
ただし、中国の教育への投資はGDPの4%程度であり、GDPの5%以上をこの分野に費やしている英国、米国、オーストラリア、ニュージーランドよりも低い。すなわち、資金面だけで中国の大学の台頭は説明できない。
中国政府が教育に力を入れるようになったのは最近の話ではない。例えば1970年代末から80年代末にかけて「中国の最高実力者」となったトウ小平は他国から学ぶことの重要性を強調した。現在の習近平政権も、「科学技術の現代化」が重要と強調し、高等教育機関や研究分野へのテコ入れを強化している。
中国では2000年以降、自国の教育機関の水準を欧米の水準に追い付かせようとする考えが強まり、ランキングに基づいて教育機関の成功の度合いを評価するようになった。重要な指標とされるようになったのは、科学論文の引用指数のSCIだ。
SCIを向上させるためには、論文の量と質の両方が必要だ。北京市内の大学のある教授は「中国の教授は論文を出すか、さもなければ罰せられる」という意味の言葉を口にした。すなわち論文を大量に執筆しなければ地位に影響するということだ。中国ではまた、長期雇用が保障されない若手研究者を過剰に雇用し、互いに激しく競争させている。
中国人の手による科学研究論文の引用数は22年に米国を抜いて世界第1位なった。18年以降では、世界で発表された論文の中でも引用数が上位1%以内に入る論文のうち中国の論文は27.2%で、米国は24.9%だ。この数字は、中国の研究量だけでなく、その質と影響力も反映している。09年から21年の間に、中国の科学研究の成果の発表は5倍に増加し、引用される論文数も大幅に増加した。
中国政府は対外関係について、協力と競争は矛盾するものではなく、補完するものと考えている。高等教育については、世界における大学のランキングを重視する一方で、外国の大学との協力にも力を入れている。協力に力を入れることで自らの実力を高めることができ、それがランキングにも反映されるとの考えだ。
しかし、中国の大学の国外の協力相手は、先進国一辺倒ではなくなったとの見方もある。中国にとっての「国際的」とは、先進諸国ではなくて「グローバルサウス」になったとの指摘だ。このことには、中国が強調する「一帯一路」の建設も関係している。また、中国には世界ランキングの上位に入るほどの実力はない大学も多い。そのような大学でも、発展途上国の大学とならば協力体制を作りやすいという事情もある。
また、中国は海外への門戸を開く一方で、学術的ナショナリズムを追求していくと考えられる。人民大学などのいくつかの大学は、すでに世界のランキングシステムから離れ、英語ではなく中国語での論文発表を重視するようになっている。中国はまた、独自基準などを確立しようと努力している。例としては、2000年に制定された中国社会科学論文引用指数は中国の研究機関にとって、学術面での成果を測定するための重要な基準になっていることや、上海交通大学が03年に、独自のランキングシステムである「世界大学学術ランキング」を確立したことがある。
中国の大学の特徴としては、産業界との連携に注力している点がある。北京大学大学院で指導教官を務め、清華大学では客員講師を務めるピーター・ルー氏は、中国の大学は「起業家精神が非常に旺盛」であり、企業の協力関係を深めることで、成功を促進できると考えていると述べた。ルー氏はまた、中国では利用可能なデータが多く、その使用についての規制が比較的少ないことが、競争上の強みをもたらしていると指摘した。
中国の大学の将来については、中国が抱える経済面の課題や社会の雰囲気の変化、中国にとっての優先事項の推移を見極める必要がある。例えば、中国の若者の間で高まっている「燃え尽き感」などが、大学に進んで学位を取ることへの熱意を削ぐ可能性がある。
また、中国の競争相手国が、中国の台頭を自国の地位への脅威と認識すれば、中国に関連する自国の高等教育政策を見直すかもしれない。実際に、一部の西側先進国は、中国人留学生の受け入れ制限を強化している。ただし、人材の受け入れを制限することは、自国の高等教育機関の成長を鈍化させる力として働く。そのことは、中国の大学の競争力を強める方向に作用することになる。(翻訳・編集/如月隼人)
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