中国の公務員志願者、昨年は過去最高の340万人、Z世代が終身雇用などに魅せられ目指す

中国経済が減速する中、2024年の公務員試験の志願者数は340万人と過去最高を記録した。特にZ世代が終身雇用や住宅補助などの手当に魅せられ公務員を目指している。写真は中国の大学教室。

中国経済の減速が民間部門を直撃し、若者の失業率が高止まりする中、中国では2024年、公務員試験の志願者数が340万人と過去最高を記録した。ロイター通信が報じた。特に1990年代後半から2010年ごろに生まれた「Z世代」が終身雇用や住宅補助などの手当に魅せられ公務員を目指している。

ロイター通信によると、公務員の募集年齢は大半が35歳まで。住宅や社会保険の補助があり、民間企業の就職口の少なさに失望した新卒者には大きな魅力だ。志願者数は一昨年から40万人以上急増し、2014年と比べると3倍となった。

シンガポール国立大学のアルフレッド・ウー准教授は「現指導部は政権安定の屋台骨である公務員を減らすつもりはない」と話す。

北京の大学で修士課程に在籍するある学生（24）は以前インターン先で同僚が解雇されるのを見て、政府か国有企業にしか応募しないことにした。「とにかく試験に合格したい。その先のことは心配したくない」と語った。試験に合格しても面接や身体検査などの関門が待ち受ける。最終結果がでるのは毎年4月ごろだ。

一方、地方では様相が異なる。4省の公務員に話を聴くと、財政難の影響で給料カットや不払い、人員削減も行われている。

広東省深センの元公務員の女性は1万5000元（約31万5000円）の給料が4分の1に下がり、ボーナスが廃止され、上司がさらに縮小をほのめかしたため、昨年7月に辞めた。月わずか4000元（約8万4000円）でローンを返済しながら家族を養っている例もあるという。

中国では以前から、国有部門の肥大が問題として指摘され、何度か改革が試みられてきた。にもかかわらず、公務員の雇用は10年の690万人から現在800万人に膨れ上がった。さらに公務員よりも雇用保護が少ない学校や病院の職員らが3100万人以上いる。

地方では20年以降、主に雇用の縮小と人員削減によって静かに数万人が削減された。中国のエリート大学のガバナンス分野の教授は、不払いなどの給料の問題は「全国的、組織的、普遍的なもので、短期的に大幅に解決することは不可能」と述べ、役人がチップや賄賂で給与を補うなどして汚職が増え、市民に対する行政罰も増加する可能性があると指摘。「今、最も差し迫った問題は社会の安定だ。だから（是正すべき）公務員の雇用が拡大し、制度改革がおろそかになる」と言及した。（編集/日向）