日本の海で36時間漂流して救助された女性が「感謝」したのは…―中国メディア
Record China / 2025年1月15日 16時0分
日本の海で36時間あまりに渡って漂流した後に奇跡的に救助された中国人女性が、自身の体験を振り返った。
日本の海で36時間あまりに渡って漂流した後に奇跡的に救助された中国人女性が、自身の体験を振り返った。中国メディアの紅星新聞が14日に報じた。
2024年7月8日午後7時半ごろ、四川省成都市出身で当時大学3年生の女性(21)は、旅行で訪れた下田市白浜で海に入って遊んでいた。その後、行方が分からなくなり、知人から通報を受けた警察や消防などが捜索。10日午前8時ごろにおよそ80キロ離れた千葉県沖で発見され、無事救助された。この出来事は「奇跡」と称され、日中のメディアで大きく報じられた。
女性は帰国してから3カ月後、スイミングスクールで水泳を習い始めた。現在の様子を写した映像には、ビート板を持ち、コーチの指導を受けながら泳ぎの練習をする女性の様子が映っている。
女性は「大学に入ったばかりの時、二つやりたいことがありました。一つは山を見に行くこと、もう一つは海を見に行くことです」と語った。中国国内の山を訪れ、美しい光景を写真に収めた後、日本に関する動画作品などに触発され日本行きを決意。アルバイトで旅行資金を貯めて、24年7月に日本を訪れた。内陸で育った女性は、生まれてから一度も間近に海を見たことがなく、友人と共に伊豆の海を目指した。
女性は「(伊豆の海で)波が押し寄せる音を聞いた時、とても落ち着く感じがしました。本当に気持ちがいいなって。それから動画を撮影してみんなに共有しました」と語った。しかし、この時は翌日にとんでもない事態になろうとは予想していなかった。
女性と友人は翌日午後6時ごろ、水着を着て浮き輪を持ち、白浜を訪れた。海に入って20分ほど後、離岸流により岸に戻ることができなくなり、どんどん流されていった。岸に上がった友人が焦り、大声で叫んだ。女性は「その時はまだ自分の力で岸に戻れると思っていました。本当に、それほど遠くなくて、底に足も着いていました。それから徐々にその場にとどまることもできなくなって、(沖に流され)友人の声も聞こえなくなっていきました」と振り返った。
友人が女性の両親に連絡したところ、事態が信じられなかった両親は「(何者かに)だまされたのではないか」と思ったそうだ。
流されてからほどなくして、友人の通報でやってきた捜索船が女性のいるあたりをライトで照らして近づいてきた。女性は助かったと思い“Help”と叫んだが、船はそのまま通り過ぎていったという。
漂流中、女性は人間のあらゆる死に方について考えたといい、クラゲに刺されたり、サメに食べられてバラバラになったり、浮き輪の空気が抜けて溺れたりといったことも頭をよぎった。もうあきらめようかと水中に自ら頭を沈めて、自分はこういう死を受け入れられるか試したこともあった。しかし女性は「仮に死んだとして、自分の遺体が見つからなければ、家族は自分がまだ生きていてどこかの島に流れ着いているんじゃないかと思うはずで、それは家族にとってとても残酷だと思いました」と語った。
流されているうちに岸が見えなくなった。女性は星空がまるで自分を導いているかのような感覚を覚えたといい、何度も自分の手をつねって「生きているって素晴らしいことなんだ。もう少し頑張ろう」と気持ちを奮い立たせたという。
航行する船が見えるたびに希望を抱いたが、発見されることなく1隻また1隻と通り過ぎていった。蜃気楼も目にした。波が高くなり、体力はどんどん奪われていった。朦朧とする中で、友人がピンクのサンダルを持ってきてくれる夢を見た。
女性は「その時、本当に地面を踏みしめたいと強く思っていたからだと思います。でも、(夢の中で)自分の命を救ってくれた浮き輪を持って帰りたいと思って、(海に浮かぶ)浮き輪を取りに行って、手を掛けたのにどんなに泳いでも戻れなくなりました。そこでハッと目が覚めて、(現実の)自分が浮き輪から落ちそうになっているのに気付いて、すぐに体勢を立て直しました」と話した。
女性は10日の日の出を見た時、「自分はもう長くは持ちこたえられない。この日の日中に発見されなければ助からない」と思ったという。前日と同じように、近くを通る船に向かって声を上げ続けた。「こんな死に方は受け入れられない。まだ死ねない。まだ体験していないことがたくさんある」と気持ちを強く持った。
ほどなくして、近くに女性を取り囲むように3隻の船がやってきた。甲板に人の姿が見え、女性を認識していることが分かった。女性は、船に引き上げられ、さらにヘリコプターに吊り上げられて病院に搬送された。救助した船員は足掛け3日も海を漂っていたと聞いて驚いたそうで、記念にと女性が捕まっていた浮き輪も引き上げて保管してくれたという。
女性は「(守ってくれた)自分の脂肪に感謝している」と語った。救助された後、家族は電話を通じて医師に「息はあるの?」と尋ね、医師は「何の問題ありませんよ」と答えたという。
女性は7月13日に中国に帰国した。空港には家族や友人らが迎えに来た。「本当にドラマのようでした。到着口から出てくる私を見た瞬間、(家族は)感情があふれだして、感激してうれしそうでした。ハグっていいものだなと思いました」と振り返った。
帰国後は大学4年生として勉学に励んでいる。しばらくは歩行も思うようにできなかったというが、徐々に体力を取り戻した。7月末から8月にかけて行われたパリ五輪は、水泳を始め多くの競技をテレビで観戦した。日常を取り戻したことで「ああ、本当に帰ってきたんだな」と実感したという。
女性は大学院に進学する予定で、選んだのは海が近い遼寧省大連市の大学。「毎日海を見に行けます(笑)。海に罪はありません。今回のことで波を怖がる必要はないと思っています。(恐怖心はあるが)やはり一歩一歩前に進んでいかないといけません」と語った。(翻訳・編集/北田)
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