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日本発の電動バイク「タタメルバイク」は令和時代のレジャーバイクだ!

レスポンス / 2022年8月26日 19時30分

1981年、ホンダから登場した1台のレジャーバイクが高い注目を浴びました。そのバイクの名前は『モトコンポ』。同じく1981年に発売されたホンダ『シティ』(初代)のトランクルームに搭載できる原付一種バイクで、キャンプ場などに移動してからの足として使えるバイクとして開発されたモデルです。そのモトコンポを彷彿とさせるEVバイクがこの『タタメルバイク』です。


収納状態から走行状態への変形はまるでトランスフォーマー。子供心を思い出させてくれるギミックの塊です。


実はこの「タタメルバイク」の開発を進めているベンチャー企業ICOMA代表の生駒崇光さんは、タカラトミー時代にトランスフォーマー製品の海外事業を担当し、ハードウェアスタートアップのCerevo時代は自走変形プロジェクターTipronを、ロボットベンチャーGROOVE X時代は人間に懐いてくれる家族型自走ロボットLOVOTの開発に携わっていた人物です。ロマンあふれる変形構造も、現実的な工業デザインのスキルも持ち合わせた人物。だからこそ、この「タタメルバイク」の企画が生まれ、SNS上で注目が集まり、発売に向けて開発が進んでいるのでしょう。


◆畳んだ姿はまるでスーツケース


現在開発中の「タタメルバイク」の車体寸法は、収納状態で全長700mm x 全高680mm x 全幅260mm。これは一般的なオフィスデスクの足元スペースに入れられるサイズです。駐車場がなくても運用できるように、畳んだときのサイズは極めてコンパクトです。


開口部が狭いシトロエン『DS3カブリオ』のトランクルームに入れられるほどの小ささであり、どこにでもドライブのお供として連れていけます。もちろんガソリン漏れの心配はありません。


走行状態の車体寸法は全長1230mm x 全高1000mm x 全幅650mm。ミシュランS1タイヤを履くフロントホイールは一般的なスクーターで使われる10インチで、リアホイールは8インチ。インホイールモーターで後輪駆動です。バッテリー及びバッテリーコントローラは左右のパネル・フレームに挟まれている中央部に収納されています。


◆近場を移動するための足として楽しく乗れるEVバイク


クローズドコースで実際に試乗させていただきました。173cmの筆者による体験です。停車時の感覚はスツールに腰掛けている状態に近く、足付きは極めて良好です。ステップに足を乗せると、膝の曲がり方は自然。ハンドルの高さ・近さも自然。窮屈さがないことに驚きます。


アクセルをひねって走り出すと、スムースに加速していきます。試乗当日はややバッテリーの充電が足りないようでしたが、定格600Wのモーターを使用していることから、坂道でも30km/hが出せるように調整しているとのこと。前後共にサスペンションを備えており、段差を乗り越えたときも、ブレーキング時も一本筋が通っているように安定しています。


異径ホイールかつショートホイールベースながらコーナリングと直進安定性のバランスがとれていると感じました。筆者が乗っているフロント12インチ、リア10インチの電動キックボードとは比較するのが申し訳なくなるほどの安定感。普通の原付きスクーターに乗っているときと乗車感がほぼかわりません。スクーターに乗ったことがある人であれば違和感なく乗りこなせるでしょうし、免許を取ってはじめて「タタメルバイク」に乗る人でも、原付き講習時に体験した経験をそのまま活かせます。


◆ユーザーによるカスタムがしやすい設計


移動するためのバイク、というだけではありません。「タタメルバイク」は高いユーティリティ性も考えられています。まず51.2V・12Ahというバッテリー容量を活かし、自宅やオフィス収納時の予備電源として使える設計となっています。いわば、走るポータブル電源です。車の乗り入れが無理なキャンプ場でもバイクの乗り入れが可能であれば、駐車場から「タタメルバイク」でキャンプ道具を運び、「タタメルバイク」をUSB電源として活用できます。


本体側面のパネルは簡単に交換が可能。好きなグラフィックで彩ってもかまいませんし、ソーラーパネルを組み込んで充電の助けとしたり、液晶パネルを組み込んでスマートフォンやゲーム機の画面を映し出せるカスタムも可能だそうです。また脱着式の足をつけることで、キャンプテーブルとして使う用途も考えられるとのこと。ユーザーが自由にカスタムすることで、自分だけの「タタメルバイク」に仕立ててほしいと生駒さんは話します。


◆まずは好きな人たち向けに少数ロットで量産を


「2015年ぐらいに輸入された電動バイクを見たときに、かっこよくないな、と思ったんです。僕だったらこういうふうに変形させるという考えもあり、3~4年ほど部品を調べていたのですが、SNSでCADデータを公開したらとてもいい反応をいただけたんですね」


3Dプリンターや、数値を入力するとワンオフで板金加工してくれるオンラインサービスを用いて「タタメルバイク」を開発している生駒さん。これまでの苦労話も聞いてきました。まず、リアのインホイールモーターは、海外メーカーのものを使っているそうです。


生駒さん:「B2Bのオンライン・マーケットプレイスである、アリババを使って調達しました。本当は日本メーカーのものを使いたいのですが、日本製のものが全然見つからないんですね。海外は電動バイクや非アシストの電動自転車、電動キックボードの市場が大きいためにこういったパーツも探しやすいのですが、日本のモーターメーカーさんと『御社でも作ってほしい』とは伝えています。待ち焦がれています」


2020年ごろから試作機の情報をSNSで発信したり、展示会に出展したりしたことで、バイク業界の方も注目。特に試作機でもナンバーを取得したことから、生駒さんの本気度が伝わったのでしょう。好意的なアドバイスが集まってきました。


生駒さん:「1つの例となりますが、恥ずかしながら、初期の試作機は普通のボルトを使っていました。でもバイク業界で活躍する方から高強度ボルトの存在を教えていただきました。他にもフレームなどに関しても強度が取れる方法などを学ばせてもらいました」


今後は量産型の生産に着手するとのこと。クラウドファンディングなどは使わずに、新しいモビリティが好きな方に向けて少数だけ生産・販売することを考えているそうです。


生駒さん:「レジャーバイクっておもちゃ的な楽しさが魅力としてあって、世界的に見ても日本が強いジャンルだと思うんですね。でも、モトコンポのオーナーズミーティングに行って話すと、ビンテージなバイクだから気軽にカスタムするのが難しい。そこで「タタメルバイク」はカスタムが楽しめる余地を入れて設計しました」


強烈な個性を持つ「タタメルバイク」は、まさに現代におけるレジャーバイク。スペック重視でマーケティング全盛の現代においては、そうそう生まれないモデルでしょう。初期ロットの想定価格はまだ未定ですが、原付バイクである以上、極端に高価な価格帯とならないようにしたいとのこと。遊べる足が欲しい方にとって、「タタメルバイク」は引き続き注目するべきモデルです。

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