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【ボルボ C40リチャージ 新型試乗】いつもはおしとやかな美女。時々猛烈な毒を吐く野獣…中村孝仁

レスポンス / 2022年10月5日 20時0分

シートに座るともう電源オン


7月に試乗するはずだった『C40リチャージ ツイン』。ボルボ初のBEVである。しかし、都合で約2か月遅れの試乗になった。いつもの車両担当者から軽い説明を受ける。説明と言ってもグーグルマップの使い方や車両の挙動を変える唯一のデバイス、ワンペダルドライブのオン/オフの在処と言った程度である。


それにしてもスターターボタンがないので、どうやってスタートさせるの?と聞くと、ドアを開けてシートに座るともう電源オン、つまりready to startなのだそうだ。スターターボタンあるいは単純にスタートさせるアイテムのないクルマは初めて乗った。後々軽く不便さを味わう結果にもなるのだが…。というわけで車両をお預かりしてスタート。東京の住宅街を抜けて県境の川を渡り自宅のある横浜市へとクルマを走らせた。


この時点でこのクルマに対する予備知識はゼロ。果たしてどのくらいのバッテリーを搭載しているのか、あるいはどの程度の出力のモーターを積んでいるのかなどなど、一切わからずにクルマを走らせた。こうした方が予断を持つことがない。インプレッションそのものが素直になる。もっともたった1時間の試乗会のようなケースではそうもいかないが、今回の場合ほとんど2週間近くお借りしたので、ゆっくりと味わうべく敢えて、予習をしなかった。


とにかく終始無音


普通に走らせる限りこのクルマは本当にスムーズで気持ちよく走る。ほとんどの電気自動車は、発進加速の際と減速停止の際にモーターの独特な音を発するし、走行中も何らかのモーター音が出るのだが、このボルボC40はそれが全くと言ってよいほどない。だから終始無音。風の音と路面からのロードノイズやタイヤのパターンノイズだけが音源なのだが、かなり遮音性が高いのか、それすらもあまり室内には入ってこない。郊外の静かなところを走らせるとその静粛性の高さは際立つ。


スタイルも、好みがあるとは思うが、少し猫背のクーペ風である。少し角ばったXC40と比較して(同じ基本プラットフォームのモデル)ぐっとスタイリッシュで美人である。まあ、多少はルーフが下がったことで、ラゲッジスペースなどに制約が出るかもしれないが、個人的には大きな問題ではなくなかなか好ましいと思えた。


ドライビングはそっけないほど簡素で、シフトレバーにあるのは使い慣れたR、N、Dだけ。Pポジションは押しボタンである。つまり回生ブレーキを意味するBもなければマニュアルシフト用の別ゲートもない。あるのは冒頭述べた通りワンペダルをチョイスするか、それを切るかだけ。ドライブモードすらない。


EVの中でも飛び抜けた加速


初めはワンペダルドライブでスタートしたが、こいつは相当に回生の効きが強くアクセルオフにすると一般道でもかなりの減速Gがかかる。このため、恐らくブレーキランプが頻繁につくことになって(確認はできなかったが)、後続車にも迷惑だろうからと、途中でそれをオフにし、以後はワンペダルドライブをやめた。こうなると今度は空走するから前車との車間距離を多めにとる必要があるのだが、その方が安全性も高いのでそのようにしてドライブを続けた。


後で聞いたら0-100km/h加速は4.7秒の俊足を誇るのだそうだが、それ以上にビックリさせられたのはパーシャルからの中間加速の鋭さである。高速などで前車を抜こうと加速するため少しアクセルに力を籠めると、とてつもない勢いで加速を始める。なんでも出力408ps、660Nmだそうだから然もありなん。ドライバーですらビックリする加速感であった。たまたまその時は隣にパッセンジャーがいなかったからよかったが、後に女房を隣に乗せて同じことをやったら一言「やめてぇ~!」となった。


まあ、電気自動車の加速は押しなべてこうした傾向にあるが、このC40は中でも飛び抜けている。この瞬間はまさに野獣だ。


いつもはおしとやかな美女。時々猛烈な毒を吐く野獣


ボルボらしいと思ったのは、環境に留意するため、すべてのレザーやウッドの使用をやめたそうだ。シートはもちろん、ステアリングに至るまで合成皮革なのだそうだが、触った感触もフィット感も革との違いを感じない。特にステアリングは本当にこれ、合皮?という感じである。さらに言えばフロアのマットも環境に配慮している素材で作られているそうだ。


ダッシュボードはそんなわけですべてプラスチックなのだが、のっぺり真っ平くではなく、複雑な3次元の凸凹が付いている。なんでもスウェーデンにあるアビスコ国立公園の地形を等高線で演出しているそうで、夜間はその等高線に沿って異なるグラテーションのライトがインパネを照らし出す。なかなかユニークだ。


このクルマ、いつもはおしとやかな美女。時々猛烈な毒を吐く野獣的2面性を持ったモデルである。4WDだし、その運動性能と直進性能の高さは抜群。それにかなりの足の長さを誇り、残り走行距離の表示も大きいので電気自動車アレルギーのある人でもそれなりに十分使いこなせるような気がした。大前提として200Vの充電を家で出来るという条件は付くが。


冒頭でスターターが無いことが後々少し不便さを感じる話をしたが、洗車場に行って電源を切ることができないので、事前にオートワイパーなどをちゃんとキャンセルしておかないと酷い目に合うということが、数少ない不便さである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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