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【ルノー トゥインゴ 新型試乗】こんな楽しいコンパクトカーは二度と現れないだろう…中村孝仁

レスポンス / 2022年10月7日 21時0分

2019年に兄弟車のスマート『フォーフォー』がひっそりと生産中止になって、エンジンをリアシート下に積み、後輪を駆動する魅力的なコンパクトカーはルノー『トゥインゴ』だけになった。


そのトゥインゴも実は現行モデルをもって終了し、今年で誕生30周年を迎えたトゥインゴという名前自体が消滅する可能性が高いという。そしてあくまでも外誌が伝える情報によれば、後継車はルノー『5(サンク)』という懐かしい名前が与えられるようである。つまり、トゥインゴはサンクの後を受けて誕生したルノーのベーシックモデルであり、その後継車が再びサンクになるというある種のデジャブ感覚に陥るかもしれないのである。


現行トゥインゴは2014年に登場したモデルだから、誕生以来すでに8年が経過し普通ならモデルチェンジが妥当。しかし、2025年施行と言われるユーロ7の前に内燃機関だけで規制をクリアするのはほぼ不可能と言われるし、とりわけ内燃機関搭載のコンパクトカーはその息の根を止められる可能性が高い。


そんなわけだから、昔を懐かしむわけではないが今乗るしかないと思い、改めて試乗してみた。


今回はトゥインゴ インテンスのEDC装備に試乗


前回の試乗を調べてみたらちょうど3年前の2019年。そしてその前が2016年。今回2022年だから3年ごとにトゥインゴに試乗している。今回試乗したのは「インテンス」のEDC付き。エフィシェント・デュアル・クラッチ、メーカー的には電子制御6速ATとされるが本当は二つのクラッチを制御してマニュアルトランスミッションを自動変速させているものだ。


もちろん2ペダルだからAT免許で乗れる。シフトレバーにマニュアルモードを備えているから、マニュアル操作も可能。0.9リットルターボ3気筒ユニットは街中では確かに相当にパワフルだが(印象的に)、ここ一番のパンチが欲しい時は踏み込んでタイムラグを感じながら加速するよりも一気にマニュアルモードにしてギアを駆使した方が俊敏だし何よりも小気味良い。


3サイズは全長3645×全幅1650×全高1545mm。そのくせホイールベースは2490mmあるから結構な胴長で、身長が高いことがわかる。おかげで外寸の割には室内の狭苦しさはまるでない。3年前に試乗した時よりもボディは少し太って、1030kg。10kgの増量であるが、走りとしては影響を受けていないと感じた。


ライバルのコンパクト車では感じない独特な乗り味


前回同様、今回もリア駆動をしっかり感じさせる走りで、後ろからの押され感が強い。この種の乗り味はライバルのコンパクト車では一切感じない独特なもの。同時に高速コーナリングではライバルよりもハンドルの切れ角を大きくとらないと曲がっていかない。後ろからの押され感を増長しているのは駆動だけではなく、どうやらタイヤにもあるようだ。


コンパクトカーにしては珍しくタイヤの太さが前後で違う。フロント185に対してリアは205と2サイズも大きくなっている。それに扁平率もフロント50に対しリアは45。ホイールだって当然ながらリアが太い。ただしサイズは前後共に16インチである。だから、しっかりとリアがグリップしてぐいぐい押してくるから、どうしても高速コーナリングでは少し余計目にステアリングを切る必要があるのだろうか?と考えてしまった。


通常の乗り心地が至って快適なのだが、少し段差のあるような路面の繋目を超えるとかなり大きな入力がフロントから入り、同時に音も出るので驚かされる。これもフロントに何も積んでいない軽さのなせる業なのだろうか。それにフロントに何も載っていないから横方向に制約がなく、ハンドルの切れ角が大きい。つまり小回りが利くという利点もある。


こんな楽しいコンパクトカーは二度と現れない


燃費は褒められたものではなく、とりわけ市街地を中心に走り回った結果、総燃費は漸く11km/リットルに届く程度。高速をのんびり流せばよいのかもしれないが、そんな走りはこのクルマには似合わない。それと元々エンジンの力もないからアイドリングストップすると一気にエアコンの力が落ち、室内が急激に暑くなるので、アイドリングストップを切って走っていたせいもある。


いずれにせよ、CO2削減の大合唱で特にヨーロッパでは電気シフトが著しく、味わい深い内燃機関が息の根を止められそうだ。特にコンパクトカーの世界はそうらしく、今後こんな楽しいコンパクトカーは二度と現れないだろう。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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